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和風異世界いかがですか  作者: 真打
第十八章 蘇りの乱
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18.30.集まれ


「あ、あいつは……!? ナテガ!?」

「旅籠様、何か知っておられるのですか!?」

「私をこの世界に連れてきた張本人……。つまり全ての渡り者をこの世界に連れてきた犯人だ!」

「なんと……」


 観音扉を開いて出てきた存在に気づき、私は目を見張った。

 まさか……あいつが干渉してくるなど思っても居なかったからだ。


 諸悪の根源。

 相まみえることは二度とないだろうと思っていたため、旅籠は体の中に居る魂たちを正しい輪廻に戻すため元の世界に帰ろうとしていた。

 だが、でてきたということは……。

 直接手を下せるという事だ。


 ドンドンッ、ドドドドドドンッ。

 胸の内を魂たちが叩く。

 この世界に連れてこられた魂たちが、激しく怒り吠えていた。

 知らない場所に落とされ、妖に殺された者は数え切れないほどだったはずだ。

 この地に眠る魂蟲の数を見ればすぐにわかる。


 この魂たちの感情は旅籠にしっかりと流れていた。

 パキリと指の骨を鳴らして気合を入れる。


「全軍! とまれぇえい!!!!」


 轟くような声で指示を出した旅籠に、戦闘を行っていた全員が止まる。

 これは敵であるヤガニ衆も同じであり、ガガニと磯丸もその場で静止した。


『なんだ旅籠! 何かあったか!?』

「あれを見ろ将門。どうやらこの戦、敵方はこれが狙いだったようだぞ」

『あん……? なんっだありゃ』

「渡り者をこの世界に落とし続けてた犯人だ!!」

『「なに!?」』

「と、いうことは旅籠様もあの者に呼ばれたという事でございまするか!?」

「そういうことだ! んで、まとめんぞ!!」


 素早く腕を振るってガガニとヤガニへ視線を向ける。


「ガガニ! お前らの目的はあのナテガをこの世界に引きずり出す事だな! そのために異形同士の戦いが必要だった!」

「おうとる(合ってる)!」

「つまり今、敵対の必要は無くなった!」

「だ!」


 あの観音扉が出てきた時の二人の反応を見れば、ナテガを引っ張り出すことが目的だったとすぐにわかった。

 主魂からナテガの真の目的も聞いていたし、この答えに辿り着くのは簡単だ。


 あいつは異形の神……異神。

 異形同士が戦って数を減らす事を嫌がるのは、別の世界……つまり旅籠が元居た世界に駆け出す重要な戦力だという事だ。

 それを止めるために、奴は来た。


「……そうか、そういうことか。これが常治の真の目的か!」

「旅籠様? どういうことですかの?」

「常治は渡り者と出会ってるし、主魂とも知り合いでナテガの存在は知ってたはず。ナテガの目的を知ったから、主魂を悪用された事件以降異形を増やさないようにしてたんだよ。だから三千年とかいうあほみたいな年数、奴は動けなかった。私の元居た世界に、侵略できなかった」

「……! 故に渡り者の出現率が異形の地に集中していた……!」

「異形は従属に秀でる。主がいてこそ強くなる。それを止めていたのは妖だ。時が経ちすぎて管理が変わったんじゃない。元からこの形になるよう仕組んだのか……」


 恐らくだが、この形になるように計画したのは常治で、実行したのは妖怪の誰かだろう。

 私がこの世界にやって来た時の状況は、まさしくナテガの陰謀を阻止するための機構だった。


「…………あれ?」


 これ機構を壊したの、私じゃね?


 ッスーっと血の気が引いていく。

 盛大にやらかしていることが今発覚したわけだが……。

 勝手に連れてきたのあいつだし、この世界に降り立って何もしなければ普通に死んでた可能性あったし、早瀬と雪野を巻き込んだのもあいつだし、私は別に悪くないのでは!?

 悪くないだろ不可抗力だろこれ!


 だがやらかしてはいるので、もうこの期に乗じる他ない。

 ナテガをここに呼び出せたのだ。

 諸悪の根源を倒せたのであれば、このやらかしもチャラになるだろう。

 頭を振るって余計な思考を吹き飛ばし、顔を上げた。


「全軍聞けい! これより標的を改める!」

「待て待て旅籠! なんだ、どういうことだ!?」


 落水から待ったがかかる。

 しかしそれも当然だろう。

 この現状を素早く呑み込めている者はそう多くない。


「簡単に説明しますけど! あれを倒せば、戦が終わる!」

「なぜそうなる! 敵はいいのか! あいつらは!」

「落水さんも主魂と将門の話聞いてましたよね! あいつの目的は私の元居た世界の侵略だ! それに異形を、私たちを使うつもりだった! だからガガニたちは私たちを襲い、異形同士の仲間割れを起こしたように見せたんだ!」

「それで!?」

「……それで?」


 落水さんがそんなこと言うか?

 普通だったらもっと意味のある問いを……。


 ……ああ、そういうことか。

 落水さんはもうわかっているんだ。

 でもこうして私に問いかけている理由は、他の者にしっかりと説明をさせるため。

 だったらこうしよう。


「あいつを倒せば戦が終わる! 継矢異形軍はあいつを倒すことが目的! 奴が出てきた今、戦う必要は無くなった! そして私が元居た世界に異形を使って侵略させないよう、異形たちの力を押さえ続けていた妖怪の仕事もなくなる! 人間と異形を接触させないために戦っていた妖怪も人間と戦う必要は無くなる! 私たち異形は既に人間と和平を結んで戦う必要はない! 奴が、ナテガという異神が全ての諸悪の根源だ!!!!」


 長生きできる妖怪が、この嫌われ役を買って出るしかなかった。

 世代交代が早い人間は、この役目を買って出る事は出来なかっただろう。

 使われることが確定している異形は、どうしたって何もさせられなかった。


 過去から今までの全ての流れに、あのナテガがいた。

 全ては奴を阻止するための仕組みに過ぎなかったのだ。

 旅籠の説明を聞いた異形たちはもちろんその言葉を信じ、ガガニたちヤガニ衆に向ける武器を下ろした。

 そしてすぐさま……移動を開始する。


「旅籠様! 話は分かりました! ではその諸悪の根源を倒すべく、まずは向こうへと参りますしょう!」

「月芽がいないから時間はかかるが、距離はそう遠くない! 雪傀儡頼むぞ!」

『『ロウッ!!』』


 今できる最速の移動方法としては、雪傀儡に氷を張ってもらって滑っていくくらいしかないだろう。

 彼らはすぐさま陣を組んで地面を凍らせ、後続が続いてこられるように先陣を切った。


 旅籠の言葉を真っすぐ信じ、彼のため道を作り続ける異傀儡衆や異形たち。

 しかし人間たちは少し困惑していた。

 御代と菊音が不安になりながら周囲を見渡す。


「な、なんだか……大事になっていませんか……? 神を殺す? 正気ですか?」

「で、ですよね! ですよね!?」

「案ずるな」


 首をパキコキッと鳴らして立ち上がったのは山本だ。


「山本様! も、もう大丈夫なのですか?」

「真の敵が現れたのだ。炎重も我に構っていられる余裕などなし。行けるか、萩間」

「久原殿は無理ですな」

「……めんぼく、ない……!」

「生きてるだけよしです。父上。巫女の護衛は我らのみ。すぐさま雪野殿と合流し、守りましょう」

「うむ」

「皆さまーーーー!!!!」


 彼らが話し合いをしていると、地面から土傀儡が顔を出す。

 土丹の伝達を得てこちらへ共有しにきたらしい。


「土傀儡か。如何した」

「異神と対峙する者たちからの伝言でございます! 異神は大量の兵士を吐き出した様なのですが……。に、人間でなければ斬れぬそうです!」

「そんなことがあるか?」

「あるのです! 故に前線に立つ案山子夜、月芽。味方となった常治、炎重の攻撃は一切効いておりません! 僕らは異形、相手は異形の神。異形が勝てる通りは、ないのです……」

「されど……この人数だぞ……!」


 異形たちが倒せない敵。

 今は倒すことができないので吹き飛ばしたりすることで時間を稼いでいる状況だ。

 巫女の結界は有効ということを確認した土傀儡が、このことを連絡してきたらしい。

 つまりこの情報も不確定要素である。

 実際に人間が武器を使って倒せるかどうかを確認してはいない。


 もし仮に倒せたとしても、孫六が渋ったように人数差があり過ぎる。

 暫く戦いは無かったので体力は温存しているが、無数の未知数な敵を相手にするには流石に人数が足りなさすぎた。

 苦い顔をする彼らに、土傀儡は頭を下げる。


「お願いでございます! 助けてください!」

「……ぬぅ……しかし……」

「孫六」


 古緑が声をかけてきた。

 彼はしっかりと腰に刺さっている日本刀を掴んでおり、いつもより鋭い目つきでこちらを見ている。

 迷っている暇があるのか。

 そう問われているような気がした。


「……はっ」

「土傀儡、連れていけ。久原はそこで大人しくしておれよ。他の者は参るぞ!」

「よし」

「「はい!」」


 人数は少ないが、数は問題ではない。

 この数の差は異形たちが何とかしてくれる。

 古緑はそう信じ、移動しつつある異形たちを追いかけたのだった。


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