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和風異世界いかがですか  作者: 真打
第十八章 蘇りの乱
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18.19.未知の異術

「え!?」

「うそ……」


 次の瞬間、結界が砕けた。

 閉じ込められていた大量の炎が逃げ道を得たと言わんばかりに四方八方へと広がる。

 先ほど魔生良が起こした爆発とは非にならないほどの熱量だ。

 お陰で全てのヤガニ衆が息絶えてしまった。


 だがそんなこと知った事ではない、と炎重は燃え続ける。

 恐ろしいほどの熱量に全員が顔を庇ってそれに耐えていた。


「八重ちゃん! 菊音ちゃん!!」

「おいまじか! 巫女が二人も……! いや御代さんもそっち行ったぞ!?」

「うそ!」


 その声は炎の勢いによって届かない。

 ここからではどこに誰が居るかすらも分からなくなっている。

 結界も張られているようには見えないし、もし張られていてもあの熱量では防ぎきる事は出来ないだろう。


 ドザッ。

 すると上から誰かが降って来た。

 それは御代と八重、そして菊音だったようで、彼女たちは真っ黒になっている男を心配している。


『……!? おい山本!! 何してんだてめえ!!』

「えっあれ山本さん!?」

「た、助けてください! 私たちを庇って山本様が!」

「魔蛇さん!!」

「はっ!」


 治癒のできる魔蛇が走り、それに続いて他の者たちも集まった。

 見てみれば山本は背中に酷い火傷を負っており、普通の人間であれば到底助かる傷ではない。

 魔蛇がすぐさま治癒を試みるが、彼女は難しい顔をした。


「……すみませぬ旅籠様。どうも妖怪は治癒できぬようで……」

「なんだって!?」

『ならば妖力だ! おい山本! 少し分けてやるから……』

「い、いらぬ……!」

『ああ!? 何言ってんだお前このままじゃいくら妖怪とはいえ……。……おい待て。なんで異形如きの炎で貴様が傷ついてんだ』


 あの山本だ。

 巫女三名を庇ったとしても防ぐだけなら問題なくできたはずだ。

 なのに彼はここまで酷い傷を負っている。

 これが平将門は気になった。


「炎重……は、人と成った……! 己を、己の炎で焦がし、人と成った……! その異術、未知……!」

『ああ!?』

「妖力が、減り続けて、おる……!」

『おおん!? なんだなんなんだあいつの異術!』


 一度結界で閉じ込めた時、分かっていた。

 あれは人間にしてはいけない存在であると、その場にいた誰もが理解していた。

 それほどにあの異形は、一線を画す存在だったのだ。


 噴き出し続けていた炎がようやく収まった。

 地面は真っ黒になっており、周囲には異傀儡衆とヤガニ衆の死体が転がっている。

 未だ一部は燃えているようだったが、それも触れればすぐさま塵となってしまう。

 そのうちの一体を、炎重は踏みつぶす。


 大きな大刀を持った、若い男の子。

 齢十歳といったところだろうか。

 幼い子が明らかに重量のある日本刀を持っていたが、まるで中身がプラスチックで出来ているかのように軽々と持ち上げている。

 彼は大粒の涙を流しながら泣きじゃくっており、腕で目を隠しているので素顔の全貌は分からない。


 しかしその服装には見覚えがあった。

 四枚ほどの着物を着ているようで、内に着ている一枚以外は肩から外して肘でかけている。

 その着崩しているような姿は、小さな主魂にそっくりだった。

 赤と白を基調とした装いで、黒子のような布を頭に付けて目元を隠している。

 その色は……燃えるような朱色だった。


「ぐっ……ううっ……ええええええん……!」

「……あの、さ。雪野さん。私の直感、言っていい?」

「あんまり聞きたくないんだけど……一応聞くわ。旅籠さん、言ってみて」

「主魂って異形最強なんだよ。んでさ……黒子っぽい布付けてる異形ってさ。多分……めっちゃ強いんだよね」


 その直感は、恐らく正しいのだろう。

 この場に集った二部隊全員が、その異形一体に怖気ている状態が続いているのだ。

 こちらから動こうものなら一瞬で蹂躙されてしまいそうな気配を感じる。

 それゆえに月芽も手を出そうとしていなかった。


 どうすべきか、旅籠は考えた。

 このまま逃げて別の部隊に合流してもいい。

 赤雪も復活したことなのでヤガニ衆を引きいるガガニを仕留めて軍の増強を阻止したいのだ。


 だがこの場に炎重を残すというリスクは取りたくなかった。

 いつどこで出現するか分からないなど、恐ろしくて戦どころの話ではない。

 それに逃げたとしても、一人となった炎重を常治が回収して別の部隊へ送る可能性も捨てきれないのだ。


「案山子夜……あいつに勝てそうか?」

「……自信はないですぞ。しかし仕留めねば……山本殿が危ないかと」

「だよね。将門。妖力がなくなるとどうなる?」

『妖怪の源は妖力だ。それがなくなるとなれば……死ぬほかあるまい』

「決定だ。ここで山本さんを死なすわけにはいかん!」


 最大戦力の一人なのだ。

 それに常治率いる異形たちの事をよく知っている人物。

 戦力、情報元として価値のある彼に今退場してもらうのは非常に困る。


 ここであれを倒さなければならない。

 いや、あれくらい倒せなければ常治には刃も届かないかもしれないのだ。

 やるしかない。

 旅籠は手に力を籠め、白い煙を少し立ち上げる。


「とりあえず……あいつの今の異術、誰も知らないんだね?」

『ああ。炎重の異術は揺ら目切り。敵意に反応して勝手に斬る。常治が手をこまねいていた異術の一つだ』

「まぁだろうね。でも人の姿になったなら……それは無くなるかな? もう浮いてるわけじゃないし」

『分からぬ。それが異術だ』


 それはそうだ。

 何かしら検証しなければならないが、捨て駒のような事はしたくない。

 誰に行かせるかでだいぶ話は変わってきそうなのだが……。


 旅籠が考えていると、遠くの方で草傀儡が立ち上がった。

 すでにボロボロだが最後に一矢報いようとしていることが分かる。

 敵意を丸出しにして武器を構えた瞬間、草傀儡は燃えた。


「『えっ』」

「……旅籠様……。あの炎重という異形ですが……。敵意に反応した時の攻撃が、遠距離攻撃となったのでは……」

「かもしれない」


 焼かれた草傀儡はその場に倒れる。

 過剰ともいえる高火力な一撃。

 ついにその場から動かずに敵意を向けた敵に攻撃ができるようになったらしい。


 だが炎重の持つ異術がこれだけであるはずがない。

 それに、一応今の異術は対策できる。


「巫女たち。お願い」

「分かったわ」


 守の御力で炎重の弱体化。

 恐らく今の状況では結界に閉じ込めても無意味だ。

 四名の守の御力があれば流石に炎重も弱体化できるはず。

 だがこれが、宣戦布告となることも間違いなかった。


「う……。うわああああああ! ああああああ!!」


 弱体化されたことに気づいたのだろう。

 炎重は泣きながら駄々をこねるように地団太を踏んだ。

 そして大刀を持ち上げ……地面に叩きつける。


「あああああああ打打炎斬!!」


 炎重が地面を切った瞬間……炎の柱が旅籠たちを取り囲むように立ち上がった。


「えっ」

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