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和風異世界いかがですか  作者: 真打
第十八章 蘇りの乱
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18.17.亡霊異形鬼


 天千を遠くへと転送し、炎重も何とか結界の中に閉じ込めているこの状況。

 これにより魔生良を倒す手順をようやく踏むことができそうだった。

 金巫女も合流し、魔蛇も遅かれながら到着したその瞬間。

 雪野は守の御力を発動させ、魔蛇も術返しを使ったその瞬間……魔生良に異変が起きる。


 動きが止まり、酷く痙攣しはじめた。

 これで赤雪を開放し、魔生良に物理攻撃を与えることができると誰もが安堵した。

 赤雪に憑りついていた魔生良が姿を現す。

 幽体離脱するかのように出てきたそれは、地獄から出てきたような姿をした鬼だった。


 曲がりくねった角は汚い色をしており、眼球は真っ白でどこを見ているのかはっきりしない。

 ボロボロになった黒い衣は大きな帯で無理やり結んでいた。

 鬼人が魂蟲を喰らった異形鬼である彼であったが、鬼よりも鬼らしい恐ろしい顔面をしている。

 口からは牙が飛び出しており、それは般若を思わせた。

 真っ赤な皮膚が覆うのは筋骨隆々な肉体であり、長く伸びた爪が手のひらを貫通している。


『したらばぁ……? 二回戦目といこうじゃあねえかああああああ!!!!』

「ヤバ──」


 ボゴアアアアアンッ!!!!

 魔生良が咆哮を上げた次の瞬間、彼自身が爆心地となり大爆発が発生した。

 近くにいた異傀儡はもちろん、ヤガニ衆も炎にやられて地面を転がっている。

 落水や萩間親子、久原もその爆発に巻き込まれたはずだったが、雪野が間一髪結界を作り出して身を守ったらしい。

 だが雪野は魔生良に結界術を封じられており、結界を維持できる時間が極端に短くなっていた。

 

 だが最も至近距離にいた赤雪は守ることができなかった。

 爆発の衝撃で遠くに飛ばされ、魔蛇の横の地面に叩きつけられて再び遠くへ飛んでいく。


「!? 今のはっ……」

「よそ見してはダメです! 術返しが使えるの貴方しかいないので!!」

「ぬぅ、わかっておる!」


 雪野の言葉を聞き、魔蛇は振り返らずに魔生良を睨んだ。

 結界で守られていた者たちも土埃が消えたところで彼を視界の中に入れた。


 一応、これで攻撃は通るようになったはずだ。

 赤雪の体から抜け、武器も手放している。

 無手となった魔生良であれば四名でもなんとかなるのではないか、と思っていたが……。

 現実はそう甘いものでなかったらしい。


『どうした人間! さぁこいよ! やろうぜやろうぜ楽しもうぜえ!?』

「こやつ……!」

「……さっきよりも……数倍……強くねえか……?」

『ったりめえよ~! 殻に入ってちゃ二割の力しか出せねえよ』


 笑みを消し、狙いをつける。

 ゾッと怖気を感じとった久原が一歩引いた瞬間、魔生良は既に眼前へと迫っていた。


『よぉ』

「なん──」


 ドォオオオンッ!!!!

 魔生良が久原の前で大きく踏み込んだ。

 たったそれだけではあったが、地面が大きく割れて隆起して久原を吹き飛ばす。

 大量の土塊と爆風が体を叩きつけ、体に大小さまざまな傷が生じてしまう。


 誰も、反応できなかった。

 異常なまでの速さに鬼としての馬鹿力が加わっている。


「久原殿!」

『他人の心配してる暇あんのかおい』


 拳が眼前に迫っていた。

 孫六はすぐさま日本刀を上へと突き立てて魔生良の腕を貫通しさせる。

 そこに横から古緑も参戦して片腕を日本刀二本で縫い付けた。


 間一髪。

 魔生良の動きに反応しただけで上々をも言えるこの結果。

 だがここで止まるわけにはいかないし、失敗するわけにもいかない。

 何もしなければ魔生良の怪力で二人は簡単に吹き飛ばされてしまうだろう。


 案の定、残っている腕が攻撃を仕掛けてきた。

 二人は日本刀を引き抜こうとしたが、びくともしない。

 魔生良が力を入れて筋肉で日本刀を掴んでいたからだ。

 引き抜けることを前提として力を込めた二人はこれ以上何もすることができない。

 彼の攻撃を何とかするには、次の行動を失敗するわけにはいかなかったのだ。


 パァンッ!!!!

 孫六の真横に、硬い水の壁が出現する。

 落水が作り出したそれは粘性がある水だったようで、魔生良の攻撃を大きく吸収したようだ。

 しかし魔生良の攻撃は強かった。

 衝撃波は防ぎぎれなかったようで、孫六と古緑は若干よろめく。

 これと同時に予想外の壁が出現したことにより、力が少し抜けて腕から日本刀を引き抜くことができた。


「無事か! 孫六!」

「な、なんとか……! 落水殿、かたじけない!」

「礼はいい……! それよかどうする!」

『なあっはっはっはっはっは! 悩め悩め! 悩める時間が、あったらなあ!!』

「では、作りますぞ」

『んあ?』


 ズバンッ!!!!

 回しながら繰り出された遠心力の乗った攻撃が、魔生良の頭蓋を完全に叩き割る。

 頭のてっぺんから股下までを完全に切り裂いた案山子夜は、テンッと地面を軽く蹴って距離を取った。


「案山子夜か!」

「相手は異形鬼……。だが喰らった魂蟲は少ないはずですぞ」

「何故だ」

「今しがた旅籠様より聞いたのですが、常人であれば魂蟲を多く体に宿らせられぬそうですな。精々十程度。そう聞きましたぞ」

「最低でもあと九回は殺さねばならぬと?」


 これに案山子夜は頷く。

 赤雪も五つの魂しか保持できないので、魔生良も似たような数しか保持できないはずである。

 とはいえ個体差はあるだろう。

 死ぬまで殺せば、殺せるはずだ。


 案山子夜がこちらへ合流したという事は、旅籠や月芽もこちらに戻ってくるはず。

 案の定継ぎ接ぎが地面に伸びてきて、それが魔生良の足から上っていく。

 まだ再生の追い付いていない魔生良だったが、容赦なく体をバラバラにしてしまった。


 これを続ければ魔生良も倒せるはずだ。

 長い間戦い続けていた孫六は流石に膝を地面に突いた。


「孫六!」

「俺は、大丈夫です……。父上、久原殿を!」

「案山子夜! 赤雪を探せ!」

「む、そうですな」


 二名の安否が気になる。

 赤雪は魔蛇が見ていたので、彼女の指示のおかげですぐさま見つかった。

 久原は旅籠がこちらに来る道中、空から降って来たので治療に当たっているとのことだ。


 そんな中でも、魔生良は再生を続けている。

 月芽は雪野と魔蛇の居る場所へ赴き、三人で魔生良討伐の事に当たっている。


「……あ、あれ……?」

「どうしたの月芽ちゃん」

「つ、継ぎ接ぎが……。私の異術が弾かれます!」

「なぬ!?」

「え……!?」


 元の姿に戻りつつある魔生良。

 彼の足元には継ぎ接ぎがあるのだが、再生するに従って体の外へと追い出されていく。

 どう頑張っても継ぎ接ぎを伸ばすことができず、遂には完全に弾き出されてしまった。


 これと同時に、魔生良の肉体の再生が完了する。

 ニィと笑って顔を上げた彼は、そろそろ己を縛る女を倒しに向かうか、と雪野へと視線を向けたのだった。

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