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和風異世界いかがですか  作者: 真打
第十八章 蘇りの乱
294/334

18.6.勝負あり


 ズン……と少し大きめの足音を立てて大地に着陸した。

 木夢の背中に乗っていた私たちだったが、着地が大変優しかったので衝撃はほとんどない。

 どうやらずいぶん気を使ってくれたようだ。

 偉いぞ木夢。


 さて、鬼の里に到着したわけだが……。

 どうやら話は通していなかったらしい。

 武装した鬼たちが一斉に出てきて、こちら目掛けて矢を射ろうとしている。

 あの程度の攻撃ではこの三名には効果がないだろうが、攻撃を受けたくはない。


「おいオド」

「ぜぇー……! ぜぇー……! お、おいおい待て待て! 俺だ!! 俺だ俺だ!!」


 大慌てで転がり落ちたオドを見て、鬼たちは驚いた様子で武器を下げた。

 とりあえず何とかなったらしい。

 ていうかオドって結構顔広いんだな。


 オドが鬼たちに説明をしている間に、木夢には小さくなってもらった。

 これ以上目立てば何も知らない鬼が再び攻撃を仕掛けてくるかもしれないからだ。

 とりあえずはオドが説明をするのを待つしかない。


「だから来るって言っただろ!」

「あんなのが来るとは思わねえよ! 馬鹿か!」


 ……どうやら話は通してはいたようだ。

 てことは普通にこっちのインパクトがでかすぎただけか……。

 すまん。


 鬼たちは暫くしてからようやく落ち着きを取り戻したらしい。

 勝負事ということでこの村自体も楽しみにはしていたようだ。

 なので兵糧はしっかり用意されている。


「それがこの山……と」


 案内された場所は、私の数十倍の背丈はありそうな米俵が積まれていた。

 加えて、これは人間が作るサイズの米俵ではない。

 横幅が私の背丈と同じで、高さが腰まである。

 なんだこれ土管かよ。


 無論私一人の力では持ち上げる事は出来ない。

 鬼に勝負を挑むという事は、鬼の土俵で勝負をするという事。

 流石にこれは予想外だった……。


「さあ、一番に来たはいいがこの米俵をどう運ぶ? 一応荷車はあるぜ?」


 オドはもちろん、鬼たちはにやにやとしながらこちらを見ていた。

 彼らからすれば勝利が確定した瞬間なのだろう。

 人の身ではもちろん無理だし、犬と布と影法師もこの米俵を持ち上げられるとは思っていないらしい。


 いや正直私もビビってる。

 とはいえ……多分何とかなるだろう。


「無形」


 ズモモ……と黒い靄が出現する。

 最も色の濃い部分からぬ~っと顔を出した無形は、その米俵を見て首を傾げた。


「これ、持てる?」


 私がそう聞いてみれば、無形は迷うことなく頷いた。

 ズモッと靄から伸びてきた大きな手が、一番てっぺんにある米俵を掴む。

 それはまるで積み木でも持ち上げるかのように浮かんだ。


 とりあえず持てる。

 だが鬼たちはそれだけでは焦らない。

 なにせ今回は速度もそうだが数の方が重要なのだ。

 二度しか往復できないことを考えれば、ここで出来る限り大量に持ち運ぶ必要がある。


「木夢~。尻尾」

「ココロッ!」


 ブンブンと振り回した尻尾を肥大化させる。

 それをズンッと地面に下したと同時に、バコッと半分に割れた。

 中は空洞で……大量の物資が入りそうな構造をしている。


「よ~し無形! 積んじゃって~!」

『『……え?』』


 私の合図を受け、無形はひょいひょいと米俵を木夢の尻尾へと積み上げていく。

 大きさを自由に変えられる木夢は、使い方によっては無限の輸送車となる。

 大量の腕を使うことができる無形がいれば労働力も不要。


 無形が積み終わると……残っている米俵はほんの一握りだった。

 九割以上を尻尾に詰め込んだわけだが、これだけでは強度に不安がある。

 なので割れた尻尾をかぶせた。


「布伝、よろしく」


 片腕を伸ばすと、布が尻尾にまとわりついた。

 これでしっかりと縛り上げ、米俵が移動の衝撃で飛び出さないように固定する。

 あとは木夢が体を巨大化させて尻尾を持ち上げ、帰るだけだ。


「じゃ!」


 布伝が伸ばしてくれた布を掴み、再び木夢の背中に戻った。

 今回はオドを置いて行ってもいいだろう。


 さて、一往復でほとんどの米俵を持って行ってしまったということで、勝負は完全に決してしまった。

 とはいえまだ油断はしない。

 帰るまでが勝負なのだ。


 木夢にも帰りは少しゆっくり帰ってもらうことにする。

 慎重に、かつ安全に持って帰ることが重要。

 だが巨大化しているので、一歩歩くだけでも相当な距離を稼ぐことができる。


 鬼の里から不落城へ戻る途中で走ってきた鬼たちとすれ違ったが、彼らからは米俵が見えない。

 何も持っていないじゃないか、と言いながら笑って通り過ぎていった彼らに内心で爆笑しつつ、私たちは勝利を確信しながら帰路へと就いたのだった。



 ◆



「じゃ勝負あったという事で」

「卑怯すぎるだろ!!!!」

「うるせ~~~~! 急に量で勝負始めやがったお前に言われたくね~~!」

「くっ!!!!」


 ようやく戻ってきた鬼たちに勝利を宣言すれば、オドが早速反応した。

 だがオドも勝負を自分たち有利に進めていたのだ。

 ちょっと本気を出すくらいなんてことないよね。


 まぁ最初にちゃんと勝負内容を決めておかなかったからなんだけど……。

 勝ったので良しとしよう。

 さて鬼に勝ったという事は、これから和平について進めてもらわなければならない。

 流石にこの約束は守ってもらうぞ。


「男に二言は~?」

「ねえよ! くっそ人間に負けるなんざ初めてだ!!」

「いや異形ね?」

「ああ、すまん。で、何すりゃいいんだ?」


 まぁそこだよね。

 これは昨日からずっと考えていたので、ある程度はまとまっている。

 でも鬼たちの生活様式とか常識とかが分からないから、提案だけしてあとは鬼が納得できるような格好にしてもらうってのがいい。


 さて、ここで問題なのはやはり認知だ。

 不落城にいる人間たちには、和平を結んだ時に私が演説をしたのである程度は納得してくれていると思う。

 だが鬼たちにはそれがないし、する時間もない。

 今のところオドの独断での和平進行となるので、これを知っていなければ納得する鬼も少ないだろう。

 一応勝負ごとに付き合ってくれた鬼やその里は前向きな様子だった。

 あとは他の場所についてだ。


「和平を結んだから異形と敵対しないように、って知らない場所に言っても意味ないと思う」

「ああ、それは間違いねえ。知らねえ奴らからしたら恐怖の対象だからな」

「でなんだけど~……。鬼ってさ。勝負事大好きだよね?」

「……いいや?」


 おいそっぽ向いてんじゃねえ。


「だからさ。和平を結ぶ気がある里があるなら、異形たちがいくらでも勝負を受けるよ」

『『『『本当か!!?』』』』

「うわびっくりしたあ」


 話していたのはオドだったが、勝負に参戦した鬼たちも一気に反応して詰め寄ってきた。

 筋肉達磨が主人に近寄るのを嫌った布伝が、全員の顔面を布で押しのける。


「あ、ありがとう布伝」

「おい旅籠! 本当だな!? 俺たちが勝負を決めてもいいんだな!?」

「いいんじゃない? でも喧嘩とかは無しだし、配下になるとかも無しだぞ? せいぜい酒を奢るくらいにしてくれ」

『『いいのか!?』』

(あっこれダメな奴だったか?)


 ……まぁ勝てばいいから問題ないよね!


「ってことを伝えておいてくれたらいいと思う。どうよ」

「いいだろう!! しかし時間かかるな……」

「まぁ私たちもすぐには相手できないよ。これから戦いがあるし」

「ああ、そうだったな。じゃあ和平を結ぶ里からはここに兵糧を持ち寄らせよう。とはいえ……」


 オドは木夢が持ってきた大量の米俵を見る。

 これだけあれば暫くは問題ないほどの量だ。

 とはいえ城にいる民たちを賄えるかと言えば未だ不安が残る。


「つっても、やっぱ悠長には待てないのが私なんだ。この米俵は兵糧にする。さあ~不落城城主さんよお。兵糧は準備できた。もう足踏みさせねえぞ?」


 動けるのは兵糧が集まった後って言ったもんな。

 これで、動けるよね?


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