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和風異世界いかがですか  作者: 真打
第十八章 蘇りの乱
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18.5.鬼を味方に


「んで、話ってなんだ?」


 鬼に接触するためには、まずオドを通したほうがいい。

 ということで早速オドを呼び出したところだ。


 私が異形の主と彼も認識しているので、ずいぶん警戒しているようだった。

 まぁ無理もない。

 一度は鬼の軍勢を退けたのだし、異形にトラウマを持っていてもおかしくないのだ。

 その主がいるとなれば尚更だろう。


 今この場には私とオドしかいない。

 一応由海が警戒してくれているようだが、私は死なないので何かされても問題はないと思う。

 ……いや、そうなったら流石にやばいか。

 そうならないように願う。

 とりあえず話を始めよう。


「まぁ単刀直入に言うけど、私は鬼とも仲良くしたいと思ってる。どうしたらいいかなって思って」

「仲良く……? お前らがそうする意味が分からんな。勝って従えるだけの力があるだろうに」

「いや、支配って好きじゃないし」

「何……?」


 低く威圧的に聞こえた台詞だったが、怒っているというわけではなくひどく驚いた中でようやく絞り出した声だった。

 なにか変だっただろうか?


「……ん?」

「ああ、いや……。異形ってのはだいたいそんな考えなのか?」

「どうだろう? 腹の底なんて分かんないしね」

「……まぁ、そうか」


 私の答えに満足はしなかったらしい。

 微妙な顔をしながら小さく唸った。


「んで、どうしたらいいと思う?」

「分からんな。そっちが受け身で手を差し伸ばしたとしても、こっちは受け取りにくい。なんせ一度負けてるからな」

「んまそれもそうか……」


 やはりそう簡単にはいかないようだ。

 メリットを話したところで彼らが頷く保証もない。

 戦いで異形の力は示せただろうが、完全に敵対しているので和平は難しそうだ。


 さて、ではどうするか。

 鬼側からアクションは絶対にないだろう。

 ともなればこちらが動かなければならないわけだが、鬼たちが反応するようなことを提案しなければならない。


 継矢異形軍を倒すために力を貸せというのは難しいだろう。

 では……あれに持ち込もう。


「んじゃあさ。鬼たちはどうやって兵糧を人に届けるの?」

「そりゃあ荷車に乗せて運ぶしかねえだろ」

「え、遅いね」


 オドの表情が少し険しくなる。

 乗ってくれそうな予感を感じ、私は続けて話し出す。


「異形たちだったらもっと早く運べるのに」

「鬼と同じ量を運べるってのか? お前ら異形たちを見てはいたが、力のある異形は少なそうだが?」

「お、じゃあ勝負してみる?」


 これにオドは不敵に笑った。

 拳を作って力こぶを見せつける。


「異形共に負けるはずがねえ! 流石に舐めすぎだ!」

「でも私たちは勝てると思うよ?」

「言いやがったな? じゃあ貴様らが負けたどうする!」

「そうだな……。じゃあ鬼の下に付こうかな?」

「異形が勝ったらどうする」

「その時は和平を無理にでも通してもらうよ。それと同等の条件だと思うし」

「よし乗った!」


 パン手を叩いて立ち上がる。

 おお、やっぱり鬼は勝負が好きなんだな。


 昔の鬼は人を攫って勝負事を決めさせていたと何処かで聞いたことがある。

 勝負に勝てば解放されるらしいが、鬼が負けることはほぼほぼない。

 その後攫われた人間がどうなったかは知らないが、まぁ何にせよ私の作戦は成功した。


「明日でいいな!」

「いいよ〜」


 オドはすぐさま立ち上がり、このことを伝えに鬼たちのいる場所に向かったようだ。

 割と何とかなった。

 あとは勝負に勝つだけなのだが……。


 さぁ、どうやって勝とうか。

 人数も勝負のルールも決めなかったが、これであれば何をやってよさそうだ。

 とりあえず忙しくなさそうな異形を集めるとしよう。


 となると月芽や案山子夜は忙しいか。

 兵糧の重量を考えると……。


「よし、あの二人だな」



 ◆



「てことでよろしく!」

「おうよ!」


 翌日、私はオドに呼び出されて不落城の外に来ていた。

 そこでは既に鬼たちが待機しており、私と異形を若干警戒しながら視線を向けている。

 まぁそれも無理はないか。


 だが勝負事だと聞いてソワソワしている鬼もいるようだ。

 というよりほとんどの鬼がそうらしい。

 今までは妖怪との戦いで、人間たちは相手にしてくれなかったのだろう。


 ていうか勝負一つで敵だった異形たちと会おうとするってなかなか肝が座ってないか……?

 いやこちらとしてはいいんだけど……。

 多分あれだ、人と鬼の考え方は違うってことか。

 まぁ今回は負けた時の条件がどっちも厳しいしね。

 本気になるのかもしれない。


「ほんでえ? 勝負内容は兵糧の運搬だよね?」

「おう。今から隣の鬼の里へ向かう。そこから兵糧を持ってくるだけ。何か質問があるか?」

「いくつか」


 ここに来てオドが余裕の表情を見せているので、少し気掛かりなことがあった。

 なにも情報が共有されていない可能性のついてだ。


「私たち異形はその鬼の里には初めて行く。勝負だなんだと言っても信じてくれないかもしれないが」

「だから異形には俺が付く。不平等は一切ない。そこは案ずるな」

「良かった。じゃあ兵糧の場所までは案内を頼む。次にその量だけど……」

「ああ、それは分からん」

「え?」


 分からない……?

 鬼もわからないのであれば、運搬に問題がありそうだが……。


 すると、オドがニッ笑った。


「勝負の内容を確認しよう。兵糧は多ければ多いほどいいな?」

「うん、確かに」

「じゃあ運搬速度と、運搬量を見るべきだ」

「あっ! こいつ!」

「否とは言わせねえぜ?」


 なるほど……そう来たかぁ〜!

 いやでも、確かにそうだ。

 運搬が速くても量が少なければ何往復もする必要がある。

 私たちが速度に自信があると言った手前、オドは鬼の得意をこの勝負に混ぜてきた。


 これは……この勝負はどうなるか分からないぞ……!?

 ……な〜んてね。


「いいだろう、その勝負内容でやろう」

「二言はねえな?」

「男だからな!」

「よし! 往復は二度まで。つまり兵糧を担いでここに戻れるのは二回。人数は十人と決めていたが……お前らはその人数でいいのか?」

「うん。これでいい」

「カコロロッ!」


 私の後ろには、木夢と無形、そして布伝がいた。

 ぶっちゃけこの三名だけいれば十分だ。

 

「んで、運搬が早かった方はなにか有利になる?」

「何が欲しい?」

「荷車を一台減らしてもらおうか」

「おお、いいな。ではそれでやろう。こっちが早い場合は人数を一人減らしてもらおうか。勝機あってのその異形たちだろう?」

「おお~流石。じゃあそれで」


 ようやっとルールが明確化されてきた。

 もう少し吟味して考えた方がいいだろうが、どうやら鬼たちは早く勝負したくてたまらないらしい。

 まぁここで手打ちにしようか。


 ここで勝ったとしても根回しは色々しなければならないわけだが、まぁ何とでもなるだろう。

 とりあえず鬼との友好関係を示すことができれば十分だ。

 その前にこの勝負、勝たないとな。


「よ~し、やろう! はじめぇ!!」


 オドの掛け声で鬼たち十名は一斉に走り出した。

 一応速度勝負でもあるので急ぐのは至極当然のことだ。


 ……彼らが砂煙を上げて走り去っていく姿を、私たちは静かに眺めていた。


「……おい、何してんだ……? 勝負は始まってるぞ?」

「いや~道が分からないからさ? あの鬼たちを見てんのよ」

「俺が案内するが?」

「多分だけど案内できないんだよね」

「え?」

「だから君の仕事は、鬼たちの仲介ね」

「……え?」


 終始意味が分からない、といった様子で口を開けっぱにしているオドを無視し、私は木夢に視線を向ける。

 鬼たちの移動速度はやはり速いが、木夢ほどではない。


「さて、そろそろ行こうか。木夢、行けそう?」

「カコロロッ!」

「よぉ~しいい子だ。布伝、無形。手筈通りにね」


 布伝は小さく頷き、無形は靄の中から出した手で親指を立てる。

 布伝は大きくなった木夢の背に乗り、無形は靄の中へと消えてしまった。


 さて私も乗り込むとしよう。

 布伝に手伝ってもらって木夢の背中に乗った後、振り返ってオドに手招きする。


「乗って~」

「おお、ようやくやる気になったか!」


 意気揚々と乗り込んだオドだったが、次の瞬間には布で固定された。

 これは私も同じであり、振り落とされないようにするために必要な事。


「ん?」

「舌噛むなよ。木夢! よろしく!」

「カコロッ!!」


 地面に何かが突き刺さる音が聞こえた。

 腕に木材の棘が生えて地面を深く突き刺し、力を入れる。

 グンッ……と動き出したかと思えば、次の瞬間には先行していた鬼たちをあっという間に追い越してしまった。


『『ええええええぇぇぇぇ……!?』』


 鬼たちの声が遠くなる。

 私は布伝のおかげで木夢の速度に耐えることができており、前方を見ながら凄まじい風を感じていた。

 気分はまるでジェットコースターだ。

 後ろでなんか叫んでる声が聞こえるけど、きっと気のせいだろう。


 さて、鬼たちを追い越して先行したが、やはり道は分からない。

 とはいえ方角だけは合っているはずだ。

 なのでこの辺りでいいだろう。


「よ~し! 木夢~!」


 背中を拳でコンコンッとノックすると、木夢は地面を前足で力強く叩きつけた。

 ふわっと浮いた上半身のバネを殺すことなく、下半身に力を入れて思い切り跳躍する。

 だがこのままでは急速に落下するだけだ。

 なので再び背中をノックし、体を変形してもらう。


 木夢の横腹から大量の板が飛び出した。

 それは鳥の翼のような姿となり、ゴバッと鋭い音を立てて羽ばたく。

 木材で体を自在に変形させることができる材万化。

 知識さえあれば飛ぶことは難しくても滑空程度であれば簡単に実行できる。


「おいオド! 村ってのはあれか!」

「……ハッ!? ……はああああああ!? 空ああああ!?」

「村はどれだって聞いたんだよ!!」

「あっあ、ああ、あれ、あれだが……。はああ!?」

「よ~し木夢行くぞ~!」

「ゴゴロゴロゴ」


 場所が把握できた今、もうオドに構う必要はない。

 そのまま滑空してもらって村へと向かう。

 流石に驚かれるかもしれないが……まぁ、そこはオドに何とかしてもらおう!


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