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和風異世界いかがですか  作者: 真打
第十七章 禁術・御霊降ろし
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17.3.全てを共有


 私たちは傀儡城をあとにし、全員が十山城へと集まった。

 重鎮たちは広間に集まっており、今回は土丹もその部屋の中にいる。

 彼は他の土傀儡に会議の内容を伝達する役割を担ってもらっているのだ。

 これで全員に話が通るだろう。


 出陣していた布伝や無形たちを連れ戻し、話を聞くようにと説明する。

 しかし話をする前に、どうしても伝えたいことがある、と月芽と由海が口にした。

 なにより、案山子夜が行方不明であることに繋がっているのだとか。


「どうしたの?」

「私たちは旅籠様に隠れて行動をしておりました……。その中で案山子夜、由海も志を共にしております」

「案山子夜は今、黒霊城にいます。和平を進めるため、なにか知るつもりのようです」

「なるほど。三人で何かしてたわけね。でもあれでしょ? 主魂については誤解だったんだよね?」

「それが一つ。もう一つあるのです」


 私は腕を組む。

 次に出てくる言葉は何となくわかっていた。


「和平です」

「雪野ならそうするだろうね。あの時も、まぁ説得しようとしてたし」

「これは、私が発起人なのです」

「月芽が?」


 これには驚いた。

 ……いや、考えてみれば必然か。

 月芽でなければ方々を自由に移動できないだろうし、どこかのタイミングで雪野と接触しに向かったのだろう。

 ああ、それがあの時か。

 案山子夜がボロボロになって帰ってきた時。

 魔蛇さんが天狗と接触してたっていったし、多分天狗と戦ったな?


 でもどうして和平を進めようと思ったんだろう?

 その理由を聞いてみた。


「……戦となれば、誰かが死にます。私はもう、仲間を失いたくはないのです……」

「……そっか」

「私は案山子夜に話をして、雪野様と会話をする機会を得ました。その時はもうどうにもならなかったのですが……。時を同じくして、天狗と出会って戦い、勝利しました。あの時出会った芦山という天狗です」

「あいつか! よく勝てたな……」

「雪野様と共に戦い、案山子夜も来てくれたので」

「案山子夜がボロボロになって帰ってきた経緯はこれね」


 俄然府に落ちた。

 それから月芽たちは和平となる切っ掛けを探しつつ、主魂について調べていたのだという。

 結局詳しい事は分からなかったが、雪野が異形の文字で記された書物を持ってきたことで、過去が少しずつ紐解かれたようだ。


「継矢海里守常治……」

「継矢? それって月芽のご先祖様?」

「はい。初代継矢家当主の名だそうです。彼が残したとされる書面も見つかっております。そこには……過去二千年以上前に、異形が消えた理由が記されていました」


 月芽はこれまでに調べた内容を、由海と共に説明をしていく。

 過去、異形たちは人、鬼、妖と手を取り合って何かと戦っていた。

 これが最初の異形……主魂の力を得た異形人であったということは分かっている。

 そして導禄九十年に、異形人の多くが消えた。


 主魂はその異形人に手を貸したのだ、と一度は思ったのだが……。

 今までの彼の行動に、そこまでの邪悪さはなかった。

 月芽たちはこれを疑問に思いつつも、引き剥がす方法がなかっため何もできなかったようだ。


 決定的だったのは雪野が主魂は安全な存在であると口にしたことだ。

 雪野は代果城にいた異形人と接触し、彼女から全てを聞いたらしい。

 主魂は己の力の恐ろしさを最もよく理解しており、誰にも力を貸そうとはしなかった。

 だが……なにか事件があり、主魂の力は奪われた。


 四世代に渡る長い戦い。

 主魂の力は受け継がれ、多くの種族を苦しめてた。


 そこで視線が主魂に集まる。

 人間になにをされ、長く続く戦いを引き起こしてしまったのか。

 その答えを求めるような沈黙が数秒続くと、彼は一つ頷いた。


『夢芽か。あの子が人前に姿を現そうとはな……』

「主魂。過去に何があったんだ?」

『話は大方合っておる……。そうさな、詳しく語ろうか』


 ゆらりと揺らめいた下半身が少し小さくなる。

 その姿は寂しさを表現しているようでもあった。


 主魂は将門を見る。

 視線に気づいた彼は大きなため息をつき、小さく頷いた。


『好きに言え』

『承知した。……では、そうだな。どこから話すべきか……。我が捕らえられた時は八百年……』

「……え? 四世代だろ……? ってそうか、異形人は不死なのか」

『左様。……我が眠ったは二千二百年。およそ三千年か』


 途方もなさすぎる時間に眩暈がしてきそうだ。

 だがこれだけの歳月があったというのに、この世界の化学などは進化していない。

 これはどうしてだろうか……?


『妖の仕業だ。これが、妖が管理すべき役目』

「役目……?」

『そうさな、まずはこれを伝えるべきか』


 主魂が突然居住まいを正す。

 今までの優しげな様子は霧散し、大きな存在と対峙しているような威圧感を覚えた。


『我ら。否、この世は……。異神の思惑を阻止すべく、渡り者を元の世に返す事を担っていた』

「……え?」

『されど、これを知る者は極僅か。渡り者が持つ知恵を広めぬため、いつしか妖は渡り者を喰らうようになった。将門、これはいつからだ』

『お前が眠ったあたりだよ』


 誰にとっても、千年を超える時は長すぎた。

 本来、この世界は別世界から来た人間を神社を介して返す役割があった。

 渡り者がこの世で死ねば魂蟲となって世界の養分になってしまい、異神の力を増強させてしまうのだ。

 文明の発展も異神の力を増強させてしまいかねず、これ以上の発展を阻止するため渡り者の知識の遮断を行っていた。

 いつの間にか口伝で伝えられていたことが改変され、間違ったあり方に変わり、異神にとって都合の良い世界の在り方となっていたのだ。


 主魂は旅籠の中に居た時から、この問題点に気づいた。

 これに衝撃を受け、異形たちの力を取り戻さなければならないと考えたのである。


「待って? ほんっとになんで主魂たちがそんなこと知ってんの? だって相手は神だろう?」

『我は魂の主、主魂なり。渡り者は異神と出会って地に降りる。この時の話を、幾ら聞いたことか』

「ああ……そういうことか……。つまり主魂は私の中に居る魂たち、それと魂蟲と話せるって事かな?」

『然り』


 なるほど、それであれば誰も知らない神の思惑を知っていても納得できる。

 主魂はこれを阻止しようと、人や妖怪たちと仲良くしていたのだろう。

 彼の話を信じた者たちは渡り者を返すためのルートを懸命に構築したはずだ。

 代果城があそこまで大きく発展していたのがその証拠。


 しかしその歯車は年月というどうしようもない力によって曲げられていた。


「……主魂。何があったか教えてくれ。この世界は、異形は……。人や妖怪はこれからどうすべきなのか、お前の話を聞けばわかる気がする」

『……うむ』


 腕を組んで空を見上げた主魂は、長く語られなかった物語を思い出す。

 懐かしい顔ぶれが思い出されるなか……やはりあの時……最も世界が平和で、幸せであったあの時の情景が鮮明に蘇った。


『今より三千年昔……。全てが、整っていた時だった』


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