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和風異世界いかがですか  作者: 真打
第十六章 不落城夏の陣
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16.3.不落城夏の陣③大手門夏の風陣営の戦


 一日。

 これが人間たちに与えられたタイムリミットだった。

 夜間の間に不落城の四方を囲んだ兵士たちは、それぞれの役割を全うするため準備に準備を重ねて日の出を待った。

 道中で全ての作戦を全員が頭に叩き込み、異形に乗っ取られた城を奪還する。


 今は夏。

 城下町にいた少ない異形戦力は簡単にすり潰され、全軍が配置についていた。

 主力はもちろん夏の風たちであり、これが大手門からの正面突破を試みる。

 この中には秋の風たちの精鋭たち面々も交じっており、彼らが止まればこの作戦は失敗を期すこととなるだろう。

 それが分かっているからこその過剰戦力。

 夏の風陣営に加え、秋の風である萩間古緑、萩間孫六。

 そして早瀬と八角が混じっており、銀巫女である御代と最も早く戦いに志願した巫女三名が同行している形となる。

 生き残りの鬼たちも交じっており、正門を突破するには十分な戦力だった。


 春、秋、冬の風陣営は、それぞれ別方向から城攻めを行う算段だ。

 目的は正門からの敵兵力分散。

 こちらに兵力を集中させ、本体の方を手薄にさせる作戦ではあるのだが……これが成功するか否かは異形の指揮官次第だ。

 異形の指揮官が戦力の分配を見事にこなしてしまったのであれば、敵勢力を突破して夏の風たちと合流するしかない。


 だがやることは変わらない。

 立ちふさがる異形を始末するだけなのだ。

 難しい作戦ではないので思う存分戦うことができるというもの。

 因みにこちらにも巫女が複数名混じっている。

 彼女たちは夏の風が連れて帰ってきてくれた戦いに意欲ある巫女たちだ。

 力はまちまちであるものの、彼女たちがいるだけで戦局は大きく左右されるだろう。


 人間の襲撃を確認した異形陣営は、すぐさま持ち場へと走って向かい、各々が武器を手に取って準備を行っている。

 油断していたわけではないのだが……彼らが部隊を展開する時間があまりにも速過ぎた。

 もともと住んでいた土地ということもあり、地の利をよく理解していたためだろう。


 燃やされて跡形もなくなった天守閣の石垣から、その様子を眺める。

 ついに敵も本腰を入れたか、と黒細はにんまりと笑った。


「いいでさねえ~。はじまりやした」

「……良い事ではありません。由海殿が気づいてくれなければ増援は見込めませんから」

「こっちには月芽がいるでさ。多少遅くたってなんとかなりやす。まっ! 増援なんてなくても返り討ちにしてやりやす!!」

「では黒霊衆の指揮はお任せいたします。私は異傀儡衆を」

「任せたでさ!」


 そう言ってから黒細は石垣を飛び降りてしまった。

 これに溜息を吐きながら曲音は今一度敵兵力の分散具合を確認することにする。


 ここからであればよく見える。

 主戦力は大手門からの正面突破を試みるらしく、明らかに兵力が多いように感じられた。

 となれば残り三部隊はこちらの戦力を分散させるための囮だろう。


「……いや、こんなにわかりやすくするだろうか……」


 他の三部隊に比べて、正門に集結している部隊はこの倍の戦力差がある。

 であればこちらも正門に兵力を集中させるのが妥当なのだが……。

 いや、そうしなければならない。

 そうした上で、この胸騒ぎを対処することにした。


「木傀儡殿」

「はっ」

「私は他三方の対処に当たります。母体には今すぐに戦力の増強を。まずは本体に近い部隊を削ります。草傀儡は全軍そちらに。残りは分散してほかに部隊を。攻めてくるまで動くことは禁じます」

「承知」


 木傀儡に素早く指示を出す。

 指示を受けた彼はすぐさまその場から消え、伝達しに向かった。


 曲音は九つ山を見る。

 もうそろそろ由海が気づいてくれてもいい頃合いなのだが……一向に増援が来る気配はなかった。

 いや、兵力を集めるのに時間がかかっているだけだろう。

 自分もそろそろ動かねばならぬと思い、四尺刀を手に持って立ち上がる。


 一方、人間の主力となる部隊では出撃の合図を今か今かと待ちわびていた。

 号令を出すのは意外にも御代であり、彼女の手には金色の小さな結界が握られている。


 この結界は雪野が作ってくれた者であり、さらに言伝を貰っていた。

『結界が消えたら攻撃を開始していい』

 詳しくは教えてもらえなかったが、とにかくこれが消えない限り攻めてはいけないとのことだった。

 雪野と山本が何をしているのか不明ではあったが、どちらも信頼のできる人物だ。

 素直にこれに従い、時を待つ。


「……あっ」


 御代が持っていた結界が、スーッと消えていく。

 合図だ。


「萩間様!!」

「よし! 捌菅ああああ!!!!」


 部隊中央にいた孫六が、戦闘にいるであろう捌菅に向けて声を上げた。

 しっかりと聞き取れたようで、最前線にいた捌菅はにんまりと笑う。


「いい声出せんじゃねえか。っしゃお前らああああ!!!! 準備はいいなあ!!!!」

『『『『』おおーーーー!!!!』』』

「この大戦!! 負けるわけにはいかねえ!! この戦で挽回するぞ!!」


 ババッと半裸になった捌菅を見て、他の夏の風たちも真似をする。

 暑苦しいったらありはしないが、これこそが彼らの姿だ。


「いくぞおらああああ!!!!」


 掛け声に合わせて全員が一斉に抜刀した。

 これを聞いて塀の上から異形たちが顔を出す。

 この城の中で回収した弓をこちらに向けて引いており、合図を共に一斉に射出してきた。


 だがこれは半透明な結界に阻まれる。

 先頭にいた巫女である菊音が作り出したものだ。


「~! 皆さん早く!」

「初めてにしちゃ上出来だぜ菊音ちゃん!」


 捌菅が大手門から伸びる橋に足を踏み込んだ。

 これが不落城夏の陣、大手門夏の風陣営の戦が開始された合図だった。


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