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第二十九話  結婚式に行って欲しい

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 周辺の漁師を取り仕切るカウアの家は小さな丘の上にあり、入江を一望出来る眺めの良い場所だ。今は炊き出しのために女性たちが集まって料理をしている所なので、ヴィオは居間を借りて、王都からやってきたペドロと情報交換をしている所だった。


 ちなみにずぶ濡れの衣服はアンドレが持ってきたズボンとシャツと冬用のジャケットに着替えている。


「とにかく、お前はリジェに帰る事を選ばなかった。ブリタンニアのアーサー・ウェストウィック閣下をこちら側へと取り込むために、閣下の要望を叶えるサポーターとして自ら志願したわけだろ?」


「ボルボーン男爵がラゴスに現れるって知って、調度良いと思ったんだもん!」

「お前がわざわざ男爵を捕まえる意味がわからない」

「ジョゼ殿下の仇を討たないと」

「お前なあ・・・」

こめかみを自分の両手でぐりぐり押していたペドロは、大きなため息をつくと、

「ボルボーン男爵はコンドワナに移動して裁きを受けてもらう。よくぞ、コーランクールから奪って来たな」

と言って、ヴィオの頭をぐりぐりと撫でた。


「とりあえず、ここラゴスで大規模な武器と奴隷の取引が行われた。違法行為に当たるので、ルシタニア国軍は介入する事になる」

「絶対にブリタンニアは文句を言ってくると思うけど?」


 何せブリタンニア海軍は敵国メロヴィングに対して恭順の意を示しているのだ。船2隻を壊して半分沈めてしまった為、陸軍のペリグリンが何とかしてくれるだろうという域を越えている。彼はあくまで陸軍の将校なのだから、海軍の何処まで顔が効くのか良くわからない。


「ブリタンニアがメロヴィングとの融和路線に舵を切る事となったら、ブリタンニアが我々に宣戦布告を申し出るという事もあり得る話だ。我がルシタニア王国は前門にメロヴィング軍、後門にブリタンニア海軍、挟み込まれて滅びる未来しかないな」


「まあ、単純に考えればそうだよね」


 一時的に休戦協定にまで持ち込む事は出来たものの、ブリタンニア王国の議会の動きが今後も肝になると考えて、ヴィトリアは祖父となる伯爵家を訪問する事を決めたのだ。


 現在、ブリタンニアのジェームズ王が、

「絶対に皇帝を許さない!あいつを倒す!」

と言っているから、ブリタンニアは皇帝と戦うルシタニア王国を応援してくれているけれど、このジェームズ王が亡くなるなんて事になったらもう終わりだ。いや、ジェームズ王が亡くならなくても、もう終わりかもしれないけれど。


ペドロの美しく整った顔立ちはまるで人形のように整っていて、乙女ゲームにありがちなツン多めの眼鏡キャラ。紺碧の瞳を揺らしたペドロは、酷く切羽詰まった様子でヴィオの手を握りしめた。


「リジェでは今、民兵を募って訓練を施し、新たな部隊編成を行っている。私たちで後はなんとかするから、お前はコンドワナに移動しろ」


「ペドロ?」

「出来ればフォルハス公爵夫人もコンドワナに連れていって欲しい」

「ママを?」

「公爵夫人は王都を移動されないんだ」

「ママったら・・・」


 息子のジョゼを産んだ公爵夫人は、一度はブリタンニアへと渡ったものの、メロヴィングがあっさり負けて休戦協定が結ばれる事になったのを機に、ルシタニアに帰ってきてしまった。


「将軍が困り果てている、すぐにでも移動させたいとの事なんだ」

「でしょうね」


 お互い再婚する事となった二人だけれど、良くある『お前を愛する事はない』と、しょっぱなにぶちかましながらも、結局溺愛しまくるというターンを得て、今は超仲良し夫婦となっている。ママはパパから離れたくないし、パパはそんなママが心配で仕方がない。


 さすがママはヒロイン気質というか何というか、羨ましいよ。愛ってのは身近ではよく発生するんだけど、自分自身には全く降り注いでは来ない。そんな現象に、ヴィオは心の中で血の涙を流していた。


「アルフォンソ殿下の結婚式が良い機会だと思う。招待状も来ていることだし、夫人とヴィトリアには参加してもらって」

「元婚約者を式に呼ぶのもどうかと思うよ?」

「だったら式に参加しなくてもいい」

 ペドロは真剣な様子で、

「お前がコンドワナに行く事が重要なんだよ」

そんな事を言い出したので、思わずその手を振り払ってしまった。


「確かに、このままでいったらルシタニアは負けると思う」


ペドロは振り払われた自分の手とヴィオを交互に見ると、腹を立てた様子で自分の手を握りしめた。


「だから逃げろって言っているんだよ、殿下だってお前の事を待っているんだ」

「逃げるってのが気に食わない」


悪役令嬢が敵を前にして、トンズラするのはダサすぎる。悪役令嬢となって転生したヴィオにはそれなりに誇りがあるのだ。


「別に海軍が敵に回ろうが、エスパンナの最高議会がひっくり返ろうが、大義は我にありだよ。やれる事はやるだけやって、それでもしも駄目だったら、ラムエスブルグ皇家に保護してもらう」

「ラムエスブルグ皇家?」

「王配の実家には亡命するかもしれないって事を言っていて、化粧水と乳液のレシピを渡すのを条件に受け入れてもらう手筈になっている」

「はああ?」


 予想外の言葉にペドロは呆れた声をあげた。


ここまでお読み頂きありがとうございます!

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