第73話
レティシアとツキはカイとケリーに「ちょっと遠くまで買い物をしに行ってくる」と言って討伐にはしばらく行けないと言った。
「討伐に行けないのはいいけど…二人で大丈夫かい?」
カイは自分で聞いて「まぁ、大丈夫か」と自分で答えていた。
二人は気をつけていってらっしゃいと見送ってくれた。
この世界では15歳は大人らしい。
レティシアも15歳になった。ツキに年齢という概念があるのかわからないけど、ツキもこの世界に来て同じくらい経っただろう。
だからカイとケリーは二人で暮らせるように家を建てさせたし、討伐に行くことにも何も言わなかった。
買い物に行くくらいなんてことないのかもしれない。
レティシアは嬉しいような寂しいような複雑な気分だった。
ユウリは自分も行きたいと言ったがハンナが許さなかった。それにユウリは立派な兵士の仲間になっている。魔法が使えて剣も使えるなんて重宝されないわけがない。
レティシアたちはカバンに食べ物を詰め込んだ。
人が近くにいないことを確かめてペンダントを吹いた。
大きくなったケンにレティシアは手綱をかけた。
「よろしくね。」
「任せろ!俺様は飛ぶぞ!」
ケンはやる気満々だった。
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ケンがどういう理屈でペンダントの石を吹いたら大きくなるのかはレティシアにはまったくわからない。
ツキもわかってやっているかは怪しいところだった。ツキは普段からなんとなく、でやってることが多いからだ。
それでもケンは嬉しそうに羽ばたいた。
ツキも嬉しそうだった。
二人はとりあえずサツロ国の方向へ向かうことにした。ザギンの街で聞き込みをしようと思っている。
大きくなったケンは空飛ぶ馬よりも乗り心地が良かった。
風に乗って飛ぶ姿は鷹みたいでとてもかっこいい。
ザギンの街にはすぐに到着することができた。
相変わらずたくさんの人で賑わっている。
レティシアたちは久しぶりにいろんな店を見ることにした。
気になるものを買いつつ、香辛料が売っている店を探した。
お茶やハーブを取り扱う店で香辛料も売っていた。
「すみません、お祭りの時に香辛料を売っていたお店を知りませんか?」
店主は優しそうな女の人だった。
「あぁ、そう言えばなんだか怪しいやつが来ていたね。あれはこの国のものじゃないね。この国では売れなかったんじゃないかな…。好まれるにおいじゃなかったからね。」
女の人はライバルにあたるその店を視察していたようだった。しかし売っているものがこの国ではの好かれなさそうなものばかりだったと言う。
「好かれないにおいってあるんですか?」
「この国の人は刺激の強い感じはあまり好まないんだよ。」
レティシアはカレーがないのはそのせいだと思った。
二人は何種類かお茶と調味料を買ってお店を出てきた。
「やっぱり違う国だったね。」
「商業ギルドで聞いてみよう。」
二人は街にあるギルドへ向かった。
冒険者ギルドと商業ギルドがあり、前者はわりと何でも揃っていて、後者は商売に関することしか扱っていない。
二人は建物をみつけ中に入った。いつもは、こういう仕事はカイの担当で、二人が中に入るのは初めてだった。
中は落ち着いた雰囲気のある静かな空間だった。
「何かお探しですか?」
受付の人がキョロキョロする二人に声をかけてくれた。
「香辛料を扱ってる人か、売ってそうな国を探してるんですが。あの、この国では好まれなさそうな刺激的なにおいのするものなんですけど。」
レティシアはなんて説明すればいいのかわからなかった。カレーの原料を探していると言いたかったがきっと伝わらない。
「それってお祭りの時に売っていたやつですか?」
女の人は心当たりがあるようだった。
「お祭りのあとで探している人が何人かいたんですよ。お待ちくださいね。」
そう言って書類を探してくれた。
露店の許可証を出す際の申込書のようだった。
「ダークンという国から来てますね。この国の南にある小さな国です。」
親切に地図まで見せてくれた。
二人は丁寧にお礼を言ってギルドを出てきた。
「中には好きな人もいるんだよ。」
ツキはそう言ってニヤリと笑った。
二人は大通りにある食べ歩き用の食べ物を売る店でいろいろ買ってお腹を満腹にした。
ケンのおやつ用に焼菓子もたくさん買ってカバンに詰めた。
「じゃあ行こう!ダークンへ!」
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商業ギルドの女の人は隣国への入り方を教えてくれた。敵対しているような国にはなかなか簡単に入れないが、ダークンなら商人で登録したら入れるだろうと教えてくれた。
買い付けになるので二人を商人で登録してくれた。
南に進むと少し暑い気がしていた。
レティシアは理科で習った気候のことを思い出そうとしたけど全然覚えていなかった。
山を越える前に関所のようなところが見えたが二人は飛んでいたのでそのまま越えてしまった。
畑には見たことのない野菜や果物がたくさんあった。
二人は大きな町をみつけたので人に見られないように近くの雑木林に降りた。
木もなんだかジャングルに生えていたような背の高い木で、蔦のような植物がぐるぐると生えている。
「蒸し暑いね。」
小さく戻したケンは「暑い!疲れた!」と言ってカバンに入っていった。
町へは10分くらい歩けばつくだろう。
レティシアとツキは珍しいものがあるたびに立ち止まり、なかなか進まなかった。
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町には何も見せずに入ることができた。
やはり許可証は関所のようなところで使うのが普通なのだろう。
歩く人たちの服装がレティシアたちのそれと違って二人はなんだか浮いてしまった。
レティシアは香辛料を探す前に服屋さんに入った。
服屋さんは見慣れない格好の二人を怪しむようにジロジロと見た。
レティシアは手頃な服を2着選び「着ていきます」と言って試着室からそのまま着て会計を済ませて店を出た。
「涼しくていいね。」
ツキは快適になったと嬉しそうだった。
飲食店らしい店も数軒あり、どこも美味しそうなにおいがしたけどカレーという感じではなかった。
調味料を売っている店をみつけ、香辛料の話をしたら「ここでは売ってない」と教えてくれた。
そして教えてもらった店の前まで二人はやってきた。
「変な店!」
店先にはドクロが並べられ、窓から見える店内には骨や何かの皮のようなものがぶら下がっている。
明らかに怪しい店だった。
「こんにちは。」
レティシアはおそるおそる店内に入った。
「いらっしゃい。」
店の奥から男の人の声が聞こえてきた。
レティシアはこういう店にはおばあさんかおじいさんが店番をしているイメージを持っていた。しかし出てきたのは若い男性だった。
「あの、香辛料を探しているんですが。」
レティシアがそう言うとにこやかだった男性の顔が一瞬で険しくなった。
「どんな香辛料でしょう?」
二人はこの店主から殺気を感じた。
レティシアはすぐに防御の結界を張った。
ツキはおもしろいものでもみつけたかのようにニヤニヤとしていた。
「あの、サツロの国でお祭りの時に売っていたんです。」
レティシアがそこまで言うと店主は二人にナイフを向けていた。
そして素早くロープで二人をぐるぐる巻きにした。
ツキは反撃をしないで様子を見る構えだった。
レティシアは小さく頷いてツキに合わせた。
「このお店ではお客をこうやって扱うんですか?」
二人は騒ぎもせずされるがままだった。
「お前たち、魔族なんだろう?」
店主はナイフを向けながら震えているようにも見えた。
「魔族ってそんな簡単に捕まっちゃうんですか?」
レティシアは内心とても焦っていた。
どうしてバレてしまったんだろう。
店主はその言葉に反応した。
「確かにおかしいな。」
店主はそう言ったが解放はしてくれなかった。
「どうして魔族と香辛料を結びつけるんですか?何かの儀式とかに使うんですか?」
レティシアは骨や血を用意して悪魔を呼び出すような映画を観たことがあった。もしかしたらそれに必要なものがあるのかもしれない。
「何に使うのかは知らない。」
「そんな情報だけで私たちを捕まえたんですか?」
店主はレティシアに詰められて「うーん」と悩みだした。
店主は悩んだ末、レティシアたちのロープを解いてくれた。
「すまない。魔族が香辛料を買いに来ると言う話を聞いてね。」
店主は申し訳なさそうに二人を見た。
「香辛料は料理に使いたいと思ってるだけです。」
レティシアがそう言うと店主は香辛料がたくさん入っている木箱を持ってきた。
「この中に欲しいのはあるかな?」
レティシアはにおいを嗅いでそれっぽいものを選んだ。
「どうして食料品のお店に売ってないんですかね?」
「食用として買う人がいないからね。魔族を呼び込むとかそういう噂もあるし…。うちは見ての通り変なものを扱う店でね。そういう怪しいものが好きな人しか来ない店なんだよ。」
店主はそう言って苦笑いをした。
「親父がどうしても魔族を捕まえたいって。祭りで店を出したのもうちの親父だよ。」
レティシアはこの世界でもオカルト好きがいるんだなぁと思った。
「ところで食用じゃないものも混ざってそうだけど大丈夫かな?これなんて猫を捕まえるときに使うやつだし。」
「え?マタタビ??」
「毒ではないと思うけど、美味しくもないと思うよ。」
レティシアの横でツキはうっとりした顔で「買う」と言っていた。
二人はたくさん買って店を出てきた。
カレーになるような気はしないけど、ツキが喜んでいるのでいいことにした。
疲れた二人はこの町の宿に泊まることにした。
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