第61話
ダンジョンのゴールにあたる宝箱をみつけた3人。
ツキは勢いよく宝箱を開けた。宝箱からは眩しい光が放たれ、急に足元がグラグラして竜巻に巻き込まれたような、体がねじれるような感覚になった。
3人がゆっくり目を開けると大きな木のてっぺんにいた。
レティシアは枝から落ちそうになって悲鳴を上げた。ハンナは掴まっていた枝が折れて落ちていってしまった。
ツキは風魔法で飛びながら二人を回収して太い枝に降ろした。
「ここは?天国?」
レティシアは美しい景色を見て本当にそう思ってしまった。
「帰ってきたのよ。」
ハンナはそう言ってレティシアを抱きしめた。ツキも二人を抱きしめた。
「俺様のおかげだ!褒めろ!うまいもの食わせろ!」
ケンは嬉しそうにパタパタと飛び回った。
ツキは風魔法で飛んで帰ると言ったがハンナが許さなかった。
ハンナは空飛ぶ馬を呼び3人で乗り込んだ。
「ツキも大きくなったし3人はキツいわね。」
ハンナは嬉しそうに笑っていた。
「本当だね!」
レティシアはツキが同じくらいの大きさになっているのに気がついた。
「エヘヘ。」
ツキはちょっと恥ずかしそうに微笑んだ。
3人はぎゅうぎゅうになったまま空を飛んだ。落ちそうな感じがしてドキドキしたけど3人だから楽しかった。
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カイの家に到着すると待っていた二人は泣きながら喜んでくれた。
ハンナはすぐに城のルルたちに知らせに行くと言って家を出て行ってしまった。
ケリーはすぐに美味しい料理を作ってくれた。
カイはすぐに戻ってきてレオハルトとルルが明日城に来るように言っていたとレティシアたちに伝えた。
それからレティシアとツキはそれぞれの冒険の話を二人に聞かせた。
「結局ダンジョンのご褒美って何だったんだい?」
カイがそう言うとレティシアとツキは首を傾げた。
宝箱からは強い光が放たれていて中を見る暇もなかった。
「あの女神が作ったんだ。中身なんて最初からないかもしれん!許さん!」
ケンはそう言ってピーピー飛び回った。
レティシアはツキじゃなかったらクリアするところまで行かなかったと思った。アルフォーレもそう思って宝箱の中身を入れていなかったのかもしれないとレティシアは思った。
「あのダンジョンから抜け出すこと自体がご褒美なのよ。」
ハンナはあの過酷なダンジョンを思い出したのかため息をついた。
「そうかもね。」
レティシアはそう言って笑った。ツキもそんなレティシアを見てニッコリした。
その日、レティシアは久しぶりにゆっくりと眠れた。
ツキは離れようとしなかったので一緒に寝ることにした。
ツキも寝不足だったのだろう。ベッドに入るとすぐに眠ってしまった。
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レティシアたちは何もない日常を楽しんだ。
しばらく冒険はしたくない。
そうやって過ごしていると嬉しい知らせが届いた。
「ルルがお母さんになるって!」
ケリーはくるくる回って喜んでいた。
レティシアは何かお祝いがしたくて自分に何ができるのかを考えた。
不器用なレティシアには得意なことがなかった。
それでも心を込めて何かを作りたいと思った。
レティシアは前世の記憶にあるパッチワークを思い出した。パッチワークで赤ちゃんのおくるみを作りたいと考えた。
ケリーにいろんな布のハギレをもらった。
レティシアは勘を頼りにチクチクと縫い始めた。
「何してるの?」
ツキが「手伝う?」と話しかけてきた。
「時間はかかるかもしれないけど一人でやってみたいの。」
レティシアがそう答えるとツキはちょっとびっくりしてるようだった。
「私も何かやってみる。」
ツキはそう言ってニコッと笑った。
「赤ちゃんは何が好きなんだろう。」
チクチクとやっているレティシアの横でツキはゴロゴロ転がりながら考えていた。
ツキには赤ちゃんという記憶がないようだった。
「おもちゃなら少し大きくなったら遊べるけどね。」
「おもちゃかぁ。」
ツキは「店を見てくる」と言って行ってしまった。
ケリーは嬉しい知らせを受けてからずっとベビー服を作っていた。
素敵なレースを編み込んで白いドレスに縫い付けている。
「男の子だったらどうするの?」
レティシアはヒラヒラしたかわいいドレスを眺めてケリーに聞いた。
「赤ちゃんのうちは男でも女でもこれでいいのよ。」
ケリーは「楽しみね」と言って嬉しそうに笑った。
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月日はあっという間に流れ、ルルのお腹は大きくなっていた。
ツキは誰よりもルルの赤ちゃんに興味を持っていてルルが許す限りお腹を触らせてもらっていた。
「今日も元気だね。」
ツキは嬉しそうに笑っていた。
レティシアのパッチワークはなんとか形になっていた。
縫い目はガタガタでよく見ると怪しいところはたくさんあったけど努力を感じられる作品になっていた。
ツキも何かを作っているようだったけど秘密と言って何を用意しているのか教えてくれなかった。
国民たちもお祝いムードで明るいニュースにみんな喜んでいるようだった。
ルルはすっかりお母さんの顔になっていて、レティシアは自分が赤ちゃんの時を思い出していた。
《ハンナのことをお母さんだと思っていたんだっけ》
ハンナはいつも優しくていいにおいがした。
「そろそろ帰ろうか。」
いつまでもルルのお腹に寄り添っているツキにそう言うとツキは「はーい」と名残惜しそうに返事をした。
城を出ようと門へ向かっているとカイが慌てて飛び込んできた。
「レティ、ツキ!チュンバ国が攻めてきた!」
カイはすぐにレオハルトのところへ走って行った。
レティシアたちもそれを追いかけた。
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ビルトが空飛ぶ馬に乗ってやって来ていた。
国境警備隊からサツロ国が侵攻した土地とチュンバ国の国境付近で戦争状態になったと連絡があったという。
サツロ国はチュンバ国が降伏してからも国境の警備を緩めることはなかった。
今戦争状態にある場所はレオハルトの管轄ではなかったが、サツロ国の本体が来るまで援軍がほしいということだった。
レオハルトはすぐに兵士を集め、国境に行くと言った。
ルルは大きなお腹を抱えて心配そうにしていたがビルトが「レオハルト様は命に変えてもお守りします」というので黙って見送った。
ハンナはツキに手伝ってほしいと言った。ツキは「もちろん」と言ってレティシアを見た。
「私も行く!」
レティシアは渋るハンナに「後ろでおとなしくしてる」と約束して一緒に行くことになった。
空飛ぶ馬たちが一斉に空に出た。
ツキは先に行くと言って風魔法で飛んで行ってしまった。
レティシアはハンナの後ろに乗せてもらっていた。
「ルルの赤ちゃん、もうすぐ生まれるよね?」
レティシアはルルのことが心配だった。
「そうね。でもケリーがついてるわ。」
ケリーはルルのお腹が大きくなってきた頃からルルのメイドとして城に入っていた。
戦場が近づいてくると黒い煙が見えた。
ハンナは後方でレティシアを降ろし、支援隊のいるテントにいるようにと言った。
ここからは何も見えない。バンッやドンッという音だけが聞こえてくる。
「ツキがいるから大丈夫よ。」
ハンナは笑顔でそう言って前線へと行ってしまった。
テントには傷を負った兵士たちが運ばれてきた。
ここには光魔法の使い手が一人いた。
「レティシア様、ノンノンと言います。よろしくお願いします。」
ノンノンはレティシアよりも少しお姉さんのようだった。
茶色のくるくるの髪の毛がよく似合うかわいい女の子だった。
「回復を手伝ってもいいですか?」
「助かります!よろしくお願いします。」
レティシアは運ばれてくる兵士たちを次から次へと回復していった。
重症を負う人はほとんどいなかった。
兵士たちは「ツキ様が来てくれて優勢になった」と喜んでいた。
それでもツキは一人しかいない。
レオハルトも前線で魔法師として戦っているようだったが、それでも二人で相手できる人数は限られている。
チュンバ国は兵士に加えて魔物も放ってきた。
「気をつけて!その魔物たちは様子がおかしいです!」
ハンナは魔物たちを次から次へと浄化した。
「レティシア様を呼んできて!」
すぐにレティシアが前線に連れてこられた。
「レティ!広い範囲で浄化魔法をかけれる?魔物がおかしいの!」
「やってみる!」
《この土地にいる穢されたものをあるべき姿にお戻しください》
レティシアを中心にして光の輪が広がるように飛んでいった。
兵士たちは「おぉ!!」と驚いていた。
おかしな目つきの魔物たちは一瞬でおとなしくなった。
「今だ!やれ!」
ビルトが叫ぶと騎士団と兵士たちは一斉に魔物に飛びかかった。
「団長さんがいてくれてよかったです。」
ハンナはビルトに向かって微笑んだ。
「こちらこそ、援軍助かります。」
レティシアは二人の間がピリピリしていないことがなんだか嬉しかった。
チュンバ領からはたくさんの兵士たちがこちらに向かってきた。
そのほとんどが洗脳されていたようで浄化の結界の範囲に入ると急に戦意を喪失していた。
こちらの兵士たちはその人たちを拘束していった。
「チュンバ国は何がしたいんだ?」
レオハルトは様子がおかしいことに気がついた。
「ツキ、ここを任せていいか?」
レオハルトは焦った顔でツキに頼んだ。ツキは「大丈夫」と頷いた。
ハンナはそんなレオハルトに気がついて一緒について行った。
「何かおかしいですよね。」
ハンナも異変に気がついているようだった。
二人は険しい顔で城の方へ飛んで行った。
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