第60話
レティシアが消えてから2週間、やっと手がかりを得たツキたち。
空中にある大きな木といくつもの湖を探してツキはハンナと飛んでいた。
あまりにもスピードが速くて、ハンナは吐きそうになっていた。
「ついたかも。」
ツキはそう言ってスピードを緩めた。
「あぁ…。うん、多分ここだね。」
ハンナはもっと上空に行くように言った。
ツキは分厚い雲をくぐり抜けた。
そこはとても美しいところだった。
大きな湖が何個も浮いている。その上に大きな木がそびえ立っている。
「ケン!ついたよ!!」
ツキはカバンの中からケンを探した。
ケンは目を回していた。
「しっかりして!どこなの?」
ツキはぐったりしているケンをブンブン振り回した。
「えっと…。どこかの湖に飛び込んだような…。」
湖はたくさんあってどれも似たような感じだった。
ケンは思い出そうと必死に湖をみつめた。
1つだけ金色に光っている場所があった。
ケンはアルフォーレのキラキラが残ったのではないかと思った。
「多分あそこ。」
ケンは光っている湖へとパタパタ飛んでいった。
「じゃあ行くよ!」
ツキは躊躇なく飛び込んだ。
ツキは泳げないことを忘れていた。
もがくツキを今度はハンナが引っ張った。
「あの岩だ!」
ケンがなんとかそう言うとハンナはツキを引っ張って岩まで行った。
葉っぱのマークをみつけて触れるとツキたちは光に包まれた。足元には緑色の魔法陣が現れていた。
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ツキたちは美しい花畑に出た。
小川が流れていてその横にベンチがある。
「ここはどこ?レティ?!」
ツキはキョロキョロと辺りを見回した。
「こっちだ!ここに座るんだ!」
ツキはケンを握りしめてハンナの腕を掴んだ。
「座るよ。」
ツキがそう言うとハンナは小さく頷いた。
「待て!レティに会いたいって強く願うんだ!」
ケンが叫ぶと二人は「わかった」と頷き、そのままゆっくりとベンチに座った。
しかし何も起きない。
「ケン?」
「あぁ!!本がない!!俺様とレティを繋ぐものがない!!」
ケンは大慌てだった。歴史書はレティシアのカバンの中だ。
ツキは自分のカバンから絵本を取り出した。
「はい、本。」
「いや、そうじゃない。本がほしいわけじゃない…。レティと結びつく何かがないと…。」
ツキは首にかけていたペンダントをケンに渡した。
「レティとお揃いだよ。」
「よし、じゃあそれでやってみよう。握りしめて強く願うんだ。レティに会いたいって!」
ツキはペンダントを握りしめてレティに会いたいと強く願った。
二人は体がぐにゃりとする感覚を覚えた。
次の瞬間、二人は真っ暗な空間にいた。
「やったぞ!レティはここにいるぞ!」
ケンがそう言うとツキは洞窟の壁に手をあてた。
「いる!!わかる!!!」
ツキは何を思ったか洞窟を掘り出した。
ハンナは「なに?!」と驚いていた。
「まっすぐ行く。この洞窟はなんか変。」
ツキはあらゆるところにあるトラップを感知したのだろうとケンは思った。
ツキはどんどん新しい道を掘っていった。
さすがにトラップは1つも発動しなかった。
数分で大きな空間に出た。
「キャーー」
レティシアは急に現れたツキたちに驚いた。
「レティ!!」
ツキはレティシアに抱きついた。
二人は何も言わずにわんわん泣いた。
ハンナはそれをただ見守った。
ケンは「疲れた」と言ってレティシアのカバンの中に入っていった。
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レティシアは自分に何が起きていたのかを話した。
「あのままいつまでも真っ暗な場所で朽ちていたかもしれない。」
レティシアはあの時の無感情な自分を思い出して身震いした。
「そんなことさせない!」
ツキはにっこり笑ってレティシアの手を握った。
「いつも助けてくれてありがとう。」
レティシアは満面の笑みをうかべた。
「それで、ここから出るにはどうしたらいいのかしら。」
ハンナは目の前にある大きな扉を叩いたり引っ張ったりしていた。
「その扉、全然動かないんだよね。中に魔物がいるみたいなんだけど。それを倒して先に進まないといけないみたい。」
レティシアがそう言うとツキは「魔物?!」と少し嬉しそうな顔をした。
「扉が開かないなら壁を壊そう。」
ツキはそう言って扉の横の壁を魔法で壊した。
土煙が舞い上がった。薄明かりのついた中が見える。
「入れそうだね!」
ツキは嬉しそうにできた穴から中に入って行った。
ハンナとレティシアもそれに続いた。
「おい、それはないだろう。」
中に入るとワニの顔をした人型の魔物が立っていた。
ツキは問答無用にその魔物を倒してしまった。
「何か言いたそうにしてたよ。」
ハンナは少し魔物が不憫になった。
ツキはいつものように魔石を回収した。
その魔石は見たことのない輝きを放っていた。
「きれいね。」
ハンナはうっとりとそれをみつめた。
「あげる。」
ツキは魔石をハンナに渡した。「いいの?!」ハンナは嬉しそうにそれをポケットに入れていた。
一本道が続いている。
3人は慎重に前に進んでいった。
急に崖のような場所に出た。
向こう側にはどうやら道が続いていそうな穴が見える。
崖の下にはすごい数のいろんな魔物がいた。
「倒したほうがいいのかな?」
ツキはたくさんいる魔物を見て目を輝かせていた。
「でも下に降りる道もないよ。」
レティシアが困っているとツキは「待ってて」と言って下に飛び降りていった。
魔物たちはいっせいにツキに飛びかかった。
レティシアは思わず《ツキを守って》と祈っていた。
しかし魔物たちはツキに触れることなくツキの風魔法で竜巻のようにくるくると舞い上がった。
そしてそれらは次から次へと倒され、魔石を回収されていった。
レティシアは前世で見たことのあるベルトコンベアで流れてくる工場のお弁当のようだと思った。
中身を詰められているのではなく、取られていたわけだけど。
レティシアとハンナは目の前で起きている光景をただ見守るしかできなかった。
ツキは「終わったよ!」と笑顔で戻ってきた。
ゴゴゴゴッという音と共に崖の下の地面がせり上がってきた。
ツキは「邪魔だね」と言って倒した魔物をすべて灰にした。
あっという間に崖はなくなり、普通に向こうまで歩いて行けるようになった。
「すごいわね、どういう仕組みなのかしら。」
ハンナはおそるおそる今できたばかりの道を歩いた。
「アルフォーレが冒険者のために作ったみたいなんだけど。」
レティシアがそう言うとツキは「あのおばさんどこ行ったの?」と聞いた。
「疲れたみたいでブローチの中に戻ったみたい。」
レティシアはカバンから金のブローチを取り出して二人に見せた。
ブローチにはバツ印がついていた。
「起こすなってことかな?」
レティシアは首を傾げた。ハンナは「そっとしておいてあげましょう」と言った。
3人は気を取り直して先に進んだ。
いろんなトラップが発動してきてツキはすぐにキレた。
「やっぱりこの洞窟、すごく変!!」
そう言って何かを感じる方角に向かってまた洞窟を掘り出した。
レティシアはトラップを避けたり解除するより速いのでツキの好きなようにさせた。
ハンナは呆れていたがもう慣れたと言っていた。
そうしてあっという間に宝箱のある場所にたどり着いた。
池の真ん中に小さな島があってそこに宝箱がある。
レティシアもツキも泳げない。
ハンナは池の中をよくみた。
「水中の魔物がいるみたい。」
ツキはそれを聞いて目を輝かせた。
「魚、食べたい。」
ツキは泳いでいる魔物をどんどん捕まえた。
今すぐに食べるとツキが言うのでレティシアは焚き火の準備をした。
レティシアたちは宝箱の目の前でなぜか魚の魔物を焼いて食べることになった。
3人はお腹が空いていることに気がつくと焼けた魚の魔物を夢中で食べた。ケンも出てきてちょっとしたパーティのようになってしまった。
急に明るくなったかと思ったらアルフォーレが目の前に出てきていた。
「ちょっとあんたたち!ダンジョンをなんだと思ってるの??ぜんぜん違うじゃない!!もっとドキドキワクワクして進みなさいよ!!新しい道を作るとか何なのよ!あぁ、ムカつく!」
アルフォーレはかなり怒っているようで一人でプンプン文句を言った。
「あの…、ごめんなさい。」
レティシアが頭をペコリと下げた。それを見たツキも同じように「ごめんなさい」と言った。
それを見たアルフォーレは地面に崩れ落ちた。
「なんなのよ…。一人で騒いで私がバカみたいじゃない…。」
ハンナは「そうね」と言いそうになったが言うのを我慢した。
アルフォーレは「しばらく呼ばないでよね」とがっかりした様子で金色のブローチに戻った。ブローチは水滴のようなマークになった。
「汗かな。疲れてたもんね。」
ツキは首を傾げながらそう言った。ハンナはそれがおかしくて吹き出していた。
みんなは魚の魔物を食べて満腹になった。
水中の魔物は焼くと美味しく食べられるとわかった。
ツキはご機嫌で「楽しかった」と言った。
レティシアはちょっと悩んで「そうだね」と頷いた。
「早く帰りましょう。」
ハンナは楽しいと思えずにいた。
ツキはみんなの腕を掴み池の上のしままで飛んだ。
「宝箱を開けたらクリアだ!」
ケンは嬉しそうにパタパタと飛び回った。
ツキはバンッと宝箱を開けた。みんなは眩しい光に包まれた。
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