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第59話

「あら?おかしいわね。」

ケンはアルフォーレの声が聞こえ、目を開けた。

そこはとても美しい場所だった。

小さな小川が流れている、花畑のような場所だった。

そこにポツンとベンチが置いてある。

人の気配はまったしくない。なぜか遠くが見えない。ぼやけているような霞んだ感じがする。


「こんな感じだったかしら?」

アルフォーレはまわりを見渡して首を傾げていた。

「ここはどこだ?あのベンチはなんだ?」

ケンに言われてアルフォーレはベンチを見た。

「あぁ、そうね。あれに座るんだわ。」


アルフォーレはふわふわとベンチの方へと移動した。

「そうね、レティシアに会いたいと強く願ってくれる?」

ケンはそう言われて「わかった」と頷いた。

アルフォーレはまたケンをギュッと掴んだ。そしてゆっくりとベンチに腰掛けた。


ケンは「レティに会いたい」と心の中で強く願った。

「あら?変ね。」

何も起きず、アルフォーレは「あぁ、これね」とレティシアのカバンをどこかからか出した。

その中から歴史書を取り出すとカバンは消えてしまった。

「これがお前とレティシアを繋ぐものだな?」

ケンは「はい」と頷いた。

「ではやり直しだ。」

アルフォーレはケンを歴史書の中にグイグイと押し込んだ。


ケンは本の中で「レティに会いたい」と繰り返した。体がほんのり温かくなったのがわかった。


────


レティシアは真っ暗な中で無だった。

何も考えず、何も感じない。

このまま消えてしまってもいいように思っていた。


急に顔の目の前に固いものがあたった。

目を閉じていたレティシアはしかたなく目を開けた。

真っ暗で見えるはずもない。

何かが顔の前にあることしかわからない。


「おい!ここはどこだ!また暗いぞ!ちくしょー!」

聞き慣れた声が顔の前で響いた。


レティシアはハッとした。

自分に起きていることをすべて思い出したのだ。

「ケン?!」

久しぶりに出した声はかすれていた。

「レティ!!ここはどこだ!暗いぞ!狭いぞ!たすけてくれ!!」

ケンはレティシアの首のあたりでもがいている。

レティシアはなんとかしようとしたが体は全く動かない。


「おい!女神!助けろ!助けろください!!」

ケンは思いきり叫んだ。

するとバリンッという音と共にレティシアは暗い空間に落とされた。

本がドサッと落ちる音がした。耳元からケンかパタパタと飛ぶ音がした。


レティシアはすぐにケンを掴むとギュッと抱きしめた。

「どこ行ってたの?」

レティシアは感情が一気に湧き上がってくるのがわかった。

ポロポロと涙を流すレティシアにケンは「ごめんごめん」と言うしかなかった。


「感動の再会は終わったかしら?」

アルフォーレは金色の何かで辺りを照らしてくれた。

カバンをまたどこかから出すとそれをレティシアに渡した。

「大事なものをなくすんじゃないわよ。これだからガキは嫌いよ。」

レティシアはカバンを受け取り、笑顔でお礼をした。そして落ちていた歴史書をカバンの中にしまった。


「さて、ここはどこかしら?」

アルフォーレは楽しそうにふわふわと辺りを飛び回った。

「なんだ?お前が作ったんだろ!わからんのか!許さん!」

ケンは怒ってピーピー飛び回った。

レティシアはなんだかそれが懐かしくて嬉しかった。


「クリアすると変わるって言ったでしょ。私が作ったときと違うの。バカなの?」

アルフォーレは怒ってケンを掴まれてブンブン振り回した。

「やめろ!やめろください!ごめんなさい!」

アルフォーレはそのままケンをポイッと捨てた。

レティシアは目の回ってるケンを拾い上げた。


「クリアってなんのこと?」

「ここはこいつが…女神が…女神様が作ったダンジョンだ。」

ケンはチラチラとアルフォーレを確認しながら説明してくれた。

「冒険者を楽しませるのに作ったんだってよ。危険がいっぱいだ!早く抜け出したい!」


レティシアは前世の記憶のそれを思い出した。

冒険者のグループが挑み宝箱をゲットしたり修行したりするやつだ。

「わかった。がんばろう!」


────


アルフォーレは楽しそうに次から次へとトラップに発動させた。

レティシアは自分たちに攻撃が当たらないように結界を張ったが痛くないというだけで恐怖は毎回感じる。


矢が飛んできて、岩が落ちてきて、たくさんの虫も出てきた。

大きな滑り台のようなものを滑り落ちたり、強風で飛ばされたり、本当に散々な目にあった。

想像と違うのは魔物がいないところだった。

ツキがいない今、出てこられても勝ち目はない。


「魔物が出てこなくてよかったよ。」

レティシアがそう言うとアルフォーレは「あら?言ってなかった?いるはずよ。」と言ってクスクス笑った。


目の前に大きな扉が現れた。

「もしかしてこの向こうにいる?」

レティシアが恐る恐る聞くとアルフォーレは「よくわかったわね!正解よ!」と言って高笑いをした。


「おい!無理だ!すごい魔力を感じる!!とんでもないやつがいる!」

ケンはピーピー騒ぎ飛び回った。

レティシアは扉を開けてみようとしたがびくともしない。

「開かないわ。他に道はないのかしら?」

「なさそうね。ずっと一本道だったでしょ。」

アルフォーレはアクビをして「飽きたし、疲れた」と言ってブローチの中にシュッと入ってしまった。


レティシアはコロンと転がったブローチをみつめて絶望した。

「こんな時に、ツキがいてくれたら…。」

レティシアは自分のポンコツさを実感して悲しくなった。もっと攻撃魔法をたくさん練習しておけばよかったと後悔した。


「おぉ!そうだ!俺様がツキを連れてくる!」

レティシアはハッとしてカバンから歴史書を取り出した。

ケンは「ここで待ってろ」と言って本の中に消えていった。


────


カイの家ではみんなが集まって今後のことを話し合っていた。

なんの手がかりもなしに一人の少女を探すことは無理に近かった。

目撃証言も何もない。忽然と消えてしまった。


「おい!出せ!!早くしろ!」

ツキのカバンから急にケンの声が聞こえた。

ツキは急いで本をテーブルに出した。ケンはそこからスゥーッと出てきた。

「ケン!!!レティは無事なの?!」

みんなは一斉にケンに詰め寄った。


「落ち着け、レティは生きてる。だがピンチだ。ツキの助けが必要だ!」

ツキは「うん」と言ってケンを両手で捕まえた。

「レティはどこ?案内できる?」

ケンはそれを聞いてハッとして固まった。

「まさか場所がわからないとでも言うの?」


ケンは明らかに目を泳がせていた。

ツキのケンを掴む手に力が入る。

「いてて、やめてくれ、今思い出すから!!えっと、始まりの地とか果ての地とか言ってたな。でかい木が生えてて大きな湖がたくさんあったぞ。」


みんなはそんな場所を知らないと言った。

そもそも空中に大きな木が生えているのも、湖が何個も浮いているのもおかしいと言った。

「まるで天国じゃない。」

ケリーはそう言ってハッとした。そしてすぐに泣きそうになった。

「レティは…もう…。」

ケリーは言いかけて両手で顔を覆った。

「バカ言うな!さっきまでピンピンしてた!」


ずっと考え込んでいたハンナが口を開いた。

「もしかしたらあの場所かもしれない。」

ハンナはカイの地図を開いた。

世界が大まかに載っているそれの真ん中を指差した。

今いる大陸の北にある場所のようだった。

「この雲みたいなマークの場所よ。」

「ここがそれだというのか?」

みんなは不思議そうに地図をみつめた。


「ここはずっと雲が広がっているの。不毛の地と呼ばれているわ。植物が育たないから生物もいない荒れ果てた荒野よ。」

「そこに木があるの?」

「ケンは浮いてたって言ったわよね?もしかしたら…」

「雲の上にある?!」

カイはそう言ってテーブルをバンッと叩いた。


「行ってみる!」

ツキは立ち上がり出ていこうとした。

「私も行くわ!」

ハンナがそう言うとツキはハンナの腕を掴んだ。

「飛ばすよ。」

ツキは方角を確かめて空高く舞い上がった。

ハンナはツキに腕を掴まれたまま一緒に空を飛んだ。

ハンナは「ひやぁぁあぁ」と変な声を出し、ツキに抱きついた。


二人はすごいスピードで北に向かった。

ケンはツキのカバンから出てこようとはしなかった。


────


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