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第58話

サツロ国城内にある図書館から戻ったハンナはツキとカイの家で合流することができた。

ツキは上空から見てきた様子をみんなに話した。

「レティシアの気配がまったくしないの。」

ツキは涙をこらえながら話し終えた。


「レティシアは魔族の罠にかかったと思われるの。」

ハンナはあの魔法陣は相当上級な魔法師じゃないと作り出せないだろうと言った。

自分たちが遭遇して倒すことができた魔族は下っ端の可能性が高いことも話した。


「あの黒いやつは?」

ツキは黒い霧の正体が気になっていた。

「前に魔王だって言ってたやつと同じやつだと思うわ。」

ハンナがそう言うとツキはため息をついた。

「アレの倒し方がわからない。」

「そうね。」

ハンナとツキはまた一緒にため息をついた。


「俺たちも町の人から変わったことがないか引き続き聞いてみるよ。国境警備隊にも言っておく。」

カイは防衛大臣として国のことも考えないといけない。戦争が終わったとしても油断してはいけないとみんなに言っていた。


ケリーは涙を流しながら「何もできない」と悲しんでいた。

「レティシアが帰ってきたときにケリーが笑っていないと。」

ハンナはそう言ってケリーの背中を優しく撫でた。


レティシアが消えてから2週間が過ぎた。


────


「おい!誰かいないのか?許さん!」

ケンは真っ暗な中で1人もがいていた。

魔法が使えないし、飛べるような空間もない。

しばらく気を失っていた感覚があるが、どのくらい経ったのかもわからない。

「ちくしょー!」

ケンはレティシアが近くにいないということがわかっていた。

心配な気持ちとどうなっているのか不安な気持ちで黙っていられなかった。


「あー。もう、うるさいわね。なんだって言うのよ?」

聞き覚えのある声がした。

「おい!おまえ!俺様を助けろ!!」

「はぁ?お母様、どうぞ助けてください。でしょ?やり直し!」

金色のブローチはほのかに光り、アルフォーレの不機嫌そうな声が聞こえる。

「どうぞ、助けてください。」

ケンはおとなしくそう言った。

「最初からそう言いなさいよね。まったく、なんなの?ここは?真っ暗じゃないのよ。」

アルフォーレはブローチから出ようとしているのかブローチはガタガタと動いた。


「ちょっと!出れないじゃないのよ!狭いのよ!!どこのどいつが私にこんなことしたのよ!!」

ブローチは光ったり消えたりしている。

「ここがどこなのかわからない。レティがいない。俺様の力が弱まってる。」

ケンはいつもの勢いがなくなり、しょんぼりとそう言った。


アルフォーレは、ふぅとため息をついた。

「私が作った世界で私にどうにかならないことがあっていいと思う?」

ブローチは今までで1番強く光り、バリンッと何かを破壊した。

どこか広いところに出れたと空気でわかった。

「やったな!出られたぞ!」

ケンはパタパタと飛んで狭い空間から解放されたのを確認した。


「暗いわね。何なのよ。」

アルフォーレはブローチから出てきた。美しい金色の髪は暗い空間の中では輝かなかった。

「嫌だわ。美しさが半減してるじゃない!」

ケンは「それどころじゃない」と言いたかったが我慢した。


アルフォーレは人差し指をふわっと動かし、出てきた金色の何かで辺りを照らした。

「ここ、何だったかしら…。」

ケンは何か言えば言い返されるのでアルフォーレの言葉を待つことにした。


「わかったわ!気まぐれで作ったダンジョンだわ!」

アルフォーレは思い出すことができてスッキリという顔をした。

「ダンジョン?」

「そうよ、冒険者が楽しめるようにたくさん罠を仕掛けてね。クリアできたらご褒美がもらえるのよ!楽しそうでしょ!」

「さっきの暗くて狭い部屋は罠なのか?」

ケンがそう聞くとアルフォーレは少し悩んでいた。

「そんなのあったかしら?忘れちゃったわ。とにかく出られたからいいでしょう?」


アルフォーレが照らす範囲を見たケンはここがどこかの洞窟か何かだと思った。

さっきの狭い空間では全く魔法が使えなかった。

今はレティシアと離れているのでいつものような魔力がないように感じるが飛んだり明るくしたりはできるようだった。


「レティを探す。」

ケンはパタパタと暗い道を進んで行った。

「探すってここにいると思ってるの?」

アルフォーレはケンの前に立ちはだかりケンを止めた。


「どっちにしてもここにレティはいない。ここにいても仕方がない。ここには何もない。」

ケンがそう言うと「確かにそうね」とアルフォーレは頷いた。


「我ながらワクワクしちゃうわね!ダンジョンってやつは!」

アルフォーレはふわっと飛びながらいろんな罠を起動させた。

矢が飛んできたり、爆発したり、地面に穴が開いたりする。普通の人間にクリアさせる気がないとケンは思った。


アルフォーレは道がわかっているのかサクサクと進んでいく。

ケンは矢や爆弾を避けながら必死について行った。

美しい青い色に輝く池のような場所にたどり着いた。

池の真ん中にこれみよがしに宝箱が置いてある。

ここまで来れた人ならあれはトラップだろうと疑うだろう。


アルフォーレはふわりとその宝箱の前に降りた。

ケンは嫌な予感がしていたがアルフォーレの横まで飛んできた。

「さぁ、これがクリア報酬よ!開けるわよ!」

アルフォーレは嬉しそうに高笑いしながら宝箱を開けた。


中からは白い煙が出てきた。

ケンは「あぁ…。」と嫌な予感が当たってしまったのかと覚悟した。

グラグラと地面が揺れる。ケンは思わずアルフォーレの白いドレスにしがみついた。


「行くわよ!」

アルフォーレは楽しそうにそう叫んだ。

ぐるぐる回る竜巻のようなものの中にいるのがケンにもわかった。

回っているはずなのに、目が回る感じは一切しない。とても不思議な感覚がした。


────


ケンは眩しさに耐えられず目をぱちぱちとした。

突然明るいどこかに移動したのだった。

目が慣れてきてまわりを見ると大きな木の枝の上だとわかった。

大きな木の幹には葉っぱのマークがついていた。

女神の印である。


アルフォーレは枝の先に座り「美しいでしょ」と遠くを眺めていた。

ケンはアルフォーレの肩に止まり一緒に景色を眺めた。


この大きな木は空中に浮いているようだった。

下には大きな湖があり、滝のように下へ下へと流れているように見える。

何個もの湖が上下に浮いていてとても壮大な景色だった。


「ここはどこなんだ?」

ケンは見とれていた自分に気がつきハッとしてアルフォーレに訪ねた。


「ここは果ての地。そして始まりの地。」

アルフォーレの言葉の意味がわからなかったケンだったが、不思議と納得してしまった。

生命力の強さを感じた。ここから何かが生まれたとするならば、それはきっと美しいものだろう。


「ダンジョンをクリアしたらここに来るんだな。」

ケンがそう言うとアルフォーレはクスッと笑った。

「ここに来た人はいないみたいだけどね。」

アルフォーレは一度クリアしたダンジョンは中身が変化すると言った。


「おい!!レティが中にいたらどうするんだよ!!レティごとおかしくなるっていうのか?!」

ケンは大きな声を出した。

アルフォーレは「うーん」と少し考えていた。

「わからないわ。探しに行く?」

悪びれる感じもなく、アルフォーレはそう言った。

ケンは「今すぐに!」とアルフォーレを急かした。

「もう少しこの美しさを感じていたかったのに…。」

アルフォーレは名残惜しそうにしてからケンを片手で掴んだ。

「痛い!きつい!!」

アルフォーレは苦しそうにするケンを見てニヤリと笑った。

「しっかり掴んでいないとはぐれるわよ。」

そう言ってアルフォーレは大きな木から飛び降りた。

「ギャーーー!!」

ケンたちは湖にすごいスピードで落下していく。

アルフォーレは「アハハハ」と楽しそうだった。


そしてついにドボンと湖の中に落ちてしまった。

水の中なのに息苦しい感じがしなかった。

ケンはゆっくり目を開けてまわりを見た。

確実に湖の中にいるのに苦しくない。


「ほら、あそこがダンジョンの入口よ。」

アルフォーレはどんどん深いところへ向かった。

葉っぱのマークのついた大きな岩が見えた。

アルフォーレはそのマークに手を当てた。


アルフォーレの足元に緑色の魔法陣が現れ、眩しい光に包まれた。ケンはおもわず目を閉じてしまった。


────


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