第56話
騎士団の働きによって元ピーツ国だった土地をチュンバ国から全て奪還することができた。
その噂は瞬く間に広がり、逃げ出していた元国民が続々と戻ってきた。
レオハルトは一時的にこの土地の統治を任された。
元国民たちはレオハルト王子の帰還に喜び涙した。
とても小さな国だったが、すぐに活気を取り戻していくのがわかった。
レティシアは保護していた動物たちを戻ってきた住民たちに返した。
レティシアとハンナは土地が豊かに育つようにと結界を張った。
レオハルトはハンナにこの国の宮廷魔法師になってほしいと頼んだ。
ハンナは泣きながら「お任せください」と言った。
チュンバ国からどんどん兵士がやってきた。彼らは槍を持ち、虚ろな目をして攻撃を仕掛けてきた。
その多くが元ピーツ国民だったようでレティシアたちが洗脳を解くとピーツ国復活を目の当たりにして涙して喜んだ。
少しずつ人が増え、町にも活気が出てきたように思えた。
1ヶ月もすると元通りとまではいかなかったが町には店が並び、商売を始める人も出てきた。
レオハルトを中心に国はかつての光を取り戻そうとしていた。
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サツロ国の国王が元ピーツ国城にやってきた。
小さな城の小さな大広間でレオハルトは戴冠式をしてもらった。
元ピーツ国はサツロ国領地となり、城のあった町はピーツと名づけられた。
レオハルトは領主として元ピーツ国領地を正式に任されることになった。
それを聞いたカイたちはすぐにピーツの町にやって来た。
ルルは店をたたみ、カイとケリーは動物たちを連れてピーツの町に移住すると言ったのだ。
ツキはすぐにあの燃えた家の辺りに湖の家をそのまま建てた。
カイは「あの家をこっちにも建ててくれていたんだね!」と喜んだ。
ケリーはすぐに持ってきた野菜の苗を植えた。
レティシアはみんながそこにいる生活を思い出して泣いてしまった。
ルルは「おかえり」と言ってレティシアを抱きしめた。
「ただいま!」
ツキがやって来て二人を抱きしめた。
3人はそのまま抱き合ってその幸せを実感した。
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元ピーツ国領は見事な復興を遂げた。
半年という時間がかかった。
国境にはバリケードのようなものがチュンバ国によって建てられた。
結界が効いているようで敵が侵入してくることはなかったが緊張は続いていた。
カイはレオハルトから防衛大臣という役職を任され、ツキに手伝ってもらいながら国境の整備に尽力していた。
ルルは新しい店を開くのかと思ったがそうではなかった。
「レオハルト様!」
領主として活躍するレオハルトは銀色の髪の王子様だった。
ルルの最推しとなったレオハルトは少しずつルルとの距離を縮めていった。
レティシアは二人が仲良くしてくれることが自分の幸せであると二人を見守った。
そしてそうなる運命だったかのように二人の結婚が決まった。
ルルが正式にレティシアの姉になったのだった。
町の人たちも喜び、結婚式には遠くからも人がやってきてお祭りのようになった。
みんなに祝福されるレオハルトとルルを見てレティシアは本当に幸せだった。
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幸せな時は続き、レティシアは12歳になっていた。
髪の毛も背も伸びてすっかりお姉さんになっていた。
ツキは相変わらず小さなままで二人で並ぶと姉妹のようだった。
ツキが気にしている様子がなかったのでレティシアもそれについては気にしないようにした。
サツロ国はその後もチュンバ国へと侵攻を進め、元ピーツ領との国境はチュンバ国の撤退で平和状態になった。
チュンバ国民はその不穏な空気を察知してどんどん隣国である元ピーツ国領へと流れてきた。
レオハルトはハンナの助けを借りて移民を審査した後に受け入れた。
魔族を入れないことに重点をおいたおかげで特に問題になることはなかった。
ツキは移民達のために住居を用意し、ケリーは農業や牧場業を始める手助けをした。
何もなかった土地がどんどん開拓されていく姿を見るのは某ゲームのようでレティシアはとても楽しくなった。
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みんなが活躍しているのをレティシアは眺めているだけだった。
みんなが幸せそうでレティシアも幸せだったが、それでいいのか?という疑問がわいていた。
何もできない自分がなんだか嫌になってきていた。
こんな時、いつもツキが横にいて手を握ってくれていた。
でも今はいない。ツキにはやらないといけないことがたくさんある。
レティシアは寂しい気持ちをグッと我慢して畑の雑草を抜いた。
ケリーが「お昼ご飯よ!」と家の方から声をかけた。
レティシアは汚れた手を浄化してきれいにした。
ケリーはおにぎりを作ってくれていた。
米を作ってくれる人が増えてレティシアの口にもよく入るようになっていた。
レティシアが美味しく食べているとケリーが深刻な顔でレティシアに話をしだした。
「ツキのことなんだけどね…あの子、ほら、大きくならないでしょ。」
ツキは今でも出会った頃のままの姿だった。
「私たちはいいけどまわりがね、疑いだしたのよ。ツキ様は人間じゃないんじゃないかとかなんとか。」
「そうだよね…。」
レティシアはいつかそうなるんじゃないかと思っていた。
「ただいま!」
カイとツキが帰ってきて一緒におにぎりを食べた。
「今日は早かったのね。先に食べちゃってごめんなさいね。」
「いや、ツキが早く帰りたいって飛んできちゃって。」
カイは苦笑いをしていた。ツキの風魔法で一緒に飛んできたということだろう。
みんなが食べ終わった頃、レティシアは重い口を開いた。
「ねぇ、ツキ。自分の姿を変えたりはできる?」
できるだけ軽い感じでレティシアは話した。
「できるよ。する?」
ツキはケロッとそう答えた。
みんなはおそらく「できるんかい!」と言いたかっただろう。
「あのね、ツキが成長しているように見えないって噂になってるんだって。だから定期的に少しずつ大きくなってるように見せるのはどうかな?って。」
ツキは首を傾げ、何かを悩むような顔をした。
「どうかな?」
ツキは急に大きくなり、レティシアと同じ背丈になった。
それがいきなりすぎて3人は驚いた。
「ツキ!すごいね!!」
「でも急すぎないか?少し段階を踏んだほうが…。」
カイは「このくらいにしよう」とレティシアの頭の半分くらいの大きさを示した。
ツキは「わかった」と言ってその大きさになった。
いったいどういう仕組みでそんなことができるのかわからない。
魔族が他の人の姿に変身するのと同じなのだろうかとレティシアは思った。
「毎日ちょっとずつ伸ばしていこう。」
「うん。レティと同じになるのは嬉しい。」
ツキはそう言って笑った。レティシアも少し安心した。
ツキは主にカイとばかり仕事をしていた。
実際近くでツキと会うのはごく一部の人で、それもツキは飛び回っているから背丈までしっかり把握してる人は少ないだろうと思われる。
しかし何かがあって城に呼ばれるときにはその大きさがわかる。特にレティシアと並ぶとひときわ小さく見えてしまっていた。
カイとケリーは目を合わせ頷いていた。二人も心配していたのだろう。
レティシアはツキの凄さをまた目の当たりにして自分のポンコツさを実感した。
《私もみんなのために何かしないと》
わかっているのにどうしていいかわからない。
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チュンバ国が降伏するという話が入ってきた。
サツロ国にかなりの土地を侵略されて兵の士気も下がる一方だったようだ。
レオハルトとハンナはサツロ国王に呼ばれてザギンの街へ行った。
降伏の条件を決めるのだと言っていた。
レティシアは二人に「ブドウ畑を条件に入れて」と言っておいた。
チュンバ国には大きなブドウ畑がある。
レティシアはブドウ畑が手に入ったらやってみたいことがあった。
楽しそうなレティシアを見たツキはとても嬉しそうにした。最近のレティシアに元気がないのに気がついていたのだ。
戦争が終わる─。
みんなは待ちに待ったその時をむかえようとしていた。
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