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第49話

レティシアは魔力持ちということがバレて、騎士団によって城に連れてこられていた。

朝起きると部屋にハンナが来ていた。


「レティ、よく聞いて。あなたが魔力持ちなのはすでにバレてしまったわ。そして属性も調べる魔導具があるからすぐにバレるわ。

レティが魔法を使えたらそのまま騎士団に入れさせられるだろうし、使えなくても学校に入れさせられると思う。

国民の義務とか法律とか言ってくると思う。この国では魔力がある人は国のために尽くさないといけないみたいな決まりがあるのよ。」

ハンナは早口で説明してくれた。レティシアは理解しようと頑張った。


「このままカイたちのところへ戻るのはもしかしたら難しいかもしれない。レオハルト様はピーツ国の元王子だってバレてしまったの。銀色の髪の人は珍しいからね。王族って言うだけで期待されちゃうのよ。魔力が膨大だとか、すごい魔法を使えるとか、規格外なことが多いの。

実際、レティに会ってからレオハルト様の魔法が開花しちゃってね、とんでもない強い魔法が使えることがわかったの。戦争で大活躍しちゃって、今では騎士団の副隊長よ。」

ハンナはそう言って苦笑いをした。


レティシアは敵国を撤退に追い込んだのがレオハルトかもしれないと思った。

ハンナの言うことが正しければハンナにはできなかった治療をできたのは王族だったからの可能性が高い。

だからハンナは確信を持って自分に会いに来たのだと納得した。


もちろんレティシアにはそんな自覚は一切ない。

自分はポンコツで、主人公になるのはツキであると今でも思っている。


今の状況は八方塞がりであった。

どう考えてもカイたちのところに戻れそうなルートがない。


「騎士団も学校も嫌だよ。」

レティシアは悲しくなってきた。

「そうよね。何か手立てを考えないと。」

「あのね、ケンが手錠を外してくれたの。だから私、逃げようと思えば逃げられると思うの。」

レティシアは自分に"見えてるけど見えていない"結界を張ればいけるんじゃないかといった。


「なるほど…。みつかったら今度は監視がきつくなるとは思うけど…。レティに危害を加えることはないと思うの。貴重な逸材だからね。」

「ハンナが疑われないようにしないと。今すぐ帰るかアリバイを作っておいて。」

ハンナは頷き、部屋から出ていった。


朝食を持ってカリンがやって来た。

「お食事が終わりましたらお支度を整えに参ります。本日は宮廷魔法師様に会ってから、国王様に謁見する予定でございます。」

カリンはそう言うと部屋を出て行った。


レティシアは国王に会ってみたい気持ちもあった。

しかし会うことによって今後の身の振り方を決められてしまうことになりそうで怖かった。

《逃げるなら今しかない》


レティシアは最大限の結界を自分に張った。ケンはすぐに部屋の鍵を開けてくれた。それから廊下で歩くタイミングを教えてくれた。

人が少ない目立たないルートを進んでいった。


メイドたちは忙しく働きまわり、レティシアの存在に気がつかない。

そして裏口のようなところから城の外に出ることができた。


見回りの兵士たちが歩いている。

レティシアは祈りながら横を通り過ぎた。兵士はまるで気がつかない。

レティシアは透明人間にでもなったようだった。

音を立てないように気配を消した。

門番ですらレティシアを気にすることはなかった。


城を出たレティシアは、とにかく走った。

どこに向かえばいいのかわからなかったけど、とにかく城から離れたかった。

走るレティシアを気にする人はいない。かなりうまく結界が張れているようだ。


レティシアは馬車を停めている場所を覚えていた。

馬車をみつけ、その中に隠れた。

「おい、本を出せ!」

レティシアはカバンから歴史書を出した。

「ちょっと行ってくる。許可を出せ!」

「ツキのところへ行ってきて。」

レティシアは小声でケンに命令をした。

ケンは笑顔で歴史書の中に吸い込まれていった。


────


カイたちはまだ宿にいた。

昨日、レオハルトがやって来ていろいろ説明してくれたのだが、説明を聞けば聞くほど悪い想像しかできなくなっていた。


みんな肩を落とし、口数も少なくなっていた。

「私が店なんて開いたから…。」

ルルは自分のせいだと泣いてしまった。

ケリーは「そうじゃないわ」と言ってルルを抱きしめた。


ツキは窓から外を眺めていた。今にもレティシアが走って帰ってくるんじゃないかと思っていた。

「おい!カバンを開けろ!!俺様を出せ!!」

ツキのカバンの中からケンの声が聞こえた。


「ケン!絵本に出てきたの?レティは?!」

ツキは驚いたが笑顔になった。

「馬車でみんなを待ってる!早く帰ろう!」

ケンの言葉にみんなは笑顔になった。すぐに宿を出ると馬車に向かった。


────


カイは馬車の中にレティシアがいることを確かめるとすぐに馬車を走らせた。

「レティ!もうだめかと思ったわ!」

ルルはレティシアをぎゅっと抱きしめた。

「心配かけてごめんね。」

泣きそうなレティシアにツキはこっそり魔力を隠すペンダントを首にかけてくれた。きっと複製してくれたのだとレティシアは思った。

ツキはレティシアの手を握りしめ、泣きそうな顔で笑った。

レティシアはその表情を見て泣いてしまった。

自分がどれだけみんなに心配をかけたのか、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


馬車は静かに、しかし素早く街を出た。

レティシアは馬車に結界を張っておいた。それの効果があったのか、門番にすら止められなかった。


街を出るとみんな一斉に喋りだした。

「どうやって?まさか、逃げてきたの?」

「うん。だって騎士団になるか学校に入れられるかどっちかだろうってハンナが言ってた。」

「そっか…。そうよね。ハルも同じことを言ってたわ。」

「とにかく早く家に帰りましょう!」

ルルは追っ手が来ないか後ろばかりを気にしていた。


「来たらやっつけていい?」

ツキは少し怒っているようにも見えた。

「ダメよ。風魔法で吹き飛ばすくらいならいいけど。」

真面目な顔でケリーがそう言ったのでレティシアはおかしくて笑ってしまった。

街を離れ、さっきまでの緊張感が少し和らいだ。


逃げたはいいけど先のことをよく考えていなかったことをレティシアは思い出した。このままではみんなに迷惑をかけてしまうのではないか。

レティシアの不安は消えず、馬車は家に到着した。


────


ケリーはルルとすぐに食事の支度をしてくれた。

カイは動物たちに餌をあげに行った。少し多めにあげてきていたのだが空っぽになっていて怒っていた。


レティシアがずっと浮かない顔をしているのでツキはそわそわしていた。

「嫌なことされた?」

ツキは心配そうにレティシアの顔を覗きこんだ。

「ううん。とってもいい待遇だったよ。」

レティシアは手錠をされたままだったことを言わなかった。

それでもレティシアの顔が晴れないのでツキはそれ以上聞くのをやめた。

ただ横に座って寄り添った。


「簡単なものだけどできたわよ!」

ケリーは笑顔でみんなを呼んだ。

温かい食事がテーブルに並ぶ。

みんなは一息ついた。

問題が山積みであることはみんなもわかっている。

しかしこの時間を大事にしようと、みんなは楽しい話をした。


「あのね。」

レティシアは何かを決めたような顔で話し始めた。

みんなはそれを静かに見守った。


「逃げてきちゃったけど、戻ろうと思う。」


シーンと静まり返った。

何が正解なのか誰にもわからなかった。


「じゃあ、私も行く。」

ツキはケロッとそう言った。

「ツキはだめだよ!ころ…」

ルルは殺されちゃうと言いそうになって止めた。

また静まり返った。

どうしたらあの楽しい日々を取り戻せるか、みんなは一生懸命考えた。

しかし答えは出てこなかった。


「私は魔族なんでしょ。人間の敵だよね。わかってるよ。」

ツキは泣きそうな顔で一生懸命笑顔を作った。

「ツキ…。」

レティシアはツキが自分を助けるためにこの世界に来てくれたことを知っている。

そんなツキを突き放すことは残酷なことになるだろう。

だからといってリスクがあるなら一緒にいるわけにはいかない。


「そうね、いろいろ考えがあるわよね。でも今すぐ決めなくてもいいと思うの。」

ケリーはそう言って「今日はおしまい!」と言った。


ツキはレティシアの部屋にやって来て「一緒に寝る」と言った。

レティシアは「うん」とツキの手を握った。

二人は何も話さなかった。

でもとても温かくて、安心できた─。


────


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