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第48話

レティシアたちはルルの服作りのための布を仕入れるために、この国の首都であるザギンの街に行くことにした。


目の前に広がる城壁を見て、レティシアは驚いた。

城とはこんなに大きなものだと思っていなかったからだ。

街自体が堀で囲まれている。

街に入るには通行証が必要となる。


通行証の発行には冒険者ギルドか商人ギルドで登録する必要があったのでカイ、ケリー、ルルの3人は書類上、商人ということになった。

レティシアとツキは子供なので必要ないと言われた。

厳しいのか緩いのかわからない制度だった。


街へはすぐに入ることができた。

元貴族の馬車ということもあり、不審に思われることもなかったようだった。


街の中は石造りの家が重なり合うように建てられていた。

レティシアは前世で見たどこかの外国のようだと思った。

道も整備されていて街並みも美しかった。


みんなはタルの町との規模の違いに驚いていた。

どこかで昼食にしたかったが、どの店が何なのかよくわからない。

カイはとりあえず冒険者ギルドを探した。

そこで街の情報を集めると言った。


冒険者ギルドは社交場のようになっていていろんな人が来ていた。

依頼を出す人に受ける人、売ります買いますの掲示板におすすめのレストランの情報まであった。

魔物の牙や角などの買い取りもやっていて、カイはついでに買い取りをお願いした。


「最近は魔物退治に行きたがる人が減ってまして…助かります!」

受付の人は笑顔で対応してくれた。その人の話によると魔物の数がじわじわ増えているのだそうだ。


「少し先にある赤い壁のレストランが安くてうまいって。」

カイは馬車に戻りみんなにそう言った。カイはその近くに馬車を預かってくれるところをみつけ、みんなは徒歩で店に向かうことにした。


「あ!赤い店あったよ!」

レティシアはぴょんぴょん跳ねてみんなに教えた。

その時、歩いていた男の人とぶつかってしまった。

レティシアは尻もちをついてしまった。男の人は何も言わずに立ち去ってしまった。


「レティ大丈夫?」

ルルは手を差し伸ばしてレティシアを起こした。

「ごめんなさいって言う前にどっか行っちゃった。」

「きっと急いでいたのね。ちゃんと前を向いて歩かないとだめよ。」

ケリーに怒られてレティシア「はーい」と返事をした。


────


レストランは雰囲気もよく、安いと言われていたがタルの食堂よりはずっと高かった。

味はお上品で女性に人気のありそうな店だった。

給仕をしている人たちもとても品があってルルは「素敵な店ね」と目を輝かせていた。


お腹を満たした一同は布を売っている店を探した。

ギルドで聞いた話だと3店舗あり、売っている布の品質も異なるということだった。

ルルはまず安い布から見たいと言った。

レティシアとツキがつまらないだろうとカイは二人を連れて公園に行くことにした。


街の中に大きな噴水のある公園があった。

ベンチもたくさんあって人もたくさんいた。

レティシアは公園と聞いて遊具があるのを想像したがこの世界にはどうやらそういうものはないようだ。


「あそこで何か売ってるみたいだ。」

カイは移動販売のカートのようなものを指差した。

そこには串に刺さったフルーツが売っていた。

「食べるかい?」

「食べる!」

二人はいちごの串を1本ずつ買ってもらった。


ベンチに座り、噴水を見ながらいちごを食べる。

ゆったりとした時間だった。

しかし急にザッザッという足音が聞こえ、ベンチのまわりに槍を持った男の人たちが現れた。


「レオハルト、こちらの子供ですか?」

金髪の美しい顔の青年がレティシアを指差した。

「は、はい。」

レオハルトはレティシアを見てすごく驚いているようだった。


「なんですか?いきなり。」

カイはレティシアを守るように立ちはだかった。

「特級の魔力を検知しました。危険なので確保します。」

金髪の男の両側にいた男たちがレティシアの腕を掴み、手錠のようなものをつけた。


「なにを?レティ?」

カイはそう言ってレティシアの首に魔力を隠すペンダントがないのに気がついた。

ツキは今にも飛びかかりそうな顔で男たちを睨んでいた。


レオハルトはカイに「この子の身の安全は私が保証します」と言った。

カイはツキのペンダントがあるのを確認し、ツキに「落ち着いて」と言った。


「どこに行くの?嫌だよ!」

レティシアは男たちに連れられて行ってしまった。

レオハルトは「彼らに説明します」と言ってその場に一人残った。


「お久しぶりですね。あの場で挨拶できずにすみません。色々あって騎士団に入れられちゃったんですよ…。僕は嫌だって言ったんですけどね。

街の見回りとかやらされてるんですけど、街の中ですごい魔力を検知しましてね。ほら、魔族が来たとかそんなことがあったら困るっていうんで見に来たんですよ。そしたらレティだったっていう…。魔力を隠す魔導具はどうしたんですか?」

カイは少し悩んで、「さっき男とぶつかったときに落としたか…もしくは盗まれたか…」と言った。

レオハルトはスリが流行っていると言った。


「捕まったのがツキじゃなくてよかった。ツキは絶対にペンダントを外さないように。」

ツキは何か言いたげだったが黙って「はい」と頷いた。

「レティはどうなる?」

「正直わかりません。戦争が始まってからみんな魔力や魔法に敏感で…。怖い目に遭わせないように僕がしっかり見守ります。今日すぐに帰れるといいのですが…。ちょっとなんとも言えないので宿屋でお待ちいただけますか?」

レオハルトはそう言って1軒の宿屋の名前を言った。


「ハルの紹介だと言ってください。レティと僕の関係については話さないほうがいいと思っています。元王族だとバレるとなかなか面倒ですから。僕みたいに、いろいろやらされることになったら可哀想だし…。」

「わかった。くれぐれもレティを頼む。」

レオハルトは頷いて空飛ぶ馬を呼んだかと思うと乗って行ってしまった。


「あのね、ハル、魔法師になったかも?」

ツキはカイにそう言った。

「ハルは剣士だろ?」

「すごい魔力がみなぎってた。きっとすごい魔法使い。」

「何があったんだろう。」

カイとツキはレティシアが連れて行かれた方向を見た。その先には大きな城が見える。


────


「なんでハルがレティを連れて行くの?」

ルルは状況を飲み込めずに騒いでいた。

4人はハルに言われたとおり、宿に来ていた。

「ハルもそこにレティがいるなんて思ってもいないという様子だったよ。」

カイはハルが悪いとは思えないと言った。


「レティの魔力はすごいから。ちょっとでもわかる人ならわかっちゃったのかも。」

ツキはそう言って俯いてしまった。


4人は今後どうなってしまうのかを話した。

どれもいい結果にはなりそうもない予想しかできなかった。

「今はハルを信じて待つしかできないよ。ツキまで連れて行かれたら最悪だからね。」

ツキは魔族だから捕まったら殺されるかもしれないと、カイは思っていたが言わなかった。


────


レティシアを捕まえに来たのは騎士団だった。

真ん中で偉そうにしていたのはこの国の王子だった。今は騎士団で勉強中なのだそうだ。


レティシアは手錠はされたものの、牢屋に入れられるわけでもなく、城の中のどこかの部屋に入れられていた。

魔法が使えなくなる魔導具をつけられていたので特に警備もつけられていなかった。


「おい!今助けるからな!」

ケンはずっとレティシアが一人になるのを待っていた。

ケンは簡単に手錠のような魔導具を外してしまった。


レティシアはそれをカバンにしまった。

ツキにカイと同じように自分以外の人はアイテムボックスの中身を取り出せなくしてもらっていた。

ケンに何かがありそうな時はカバンに押し込もうと思っている。


窓の外を見るとこの部屋が1階ではないことがわかった。城自体が高い場所にあるということもあるけれど地面が見えなかった。


廊下につながるドアには鍵がかけられている。

レティシアは魔導具を盗られたので自分の魔力を隠す結界を張ってみた。

うまくいった手応えがあるので多分大丈夫だろう。


ドアをノックする音とハルの声が聞こえた。

レティシアはどこかに隠れるか悩んだが間に合わなかった。


「やぁ、レティ。手荒なことはされていないかい?」

ハルは心配そうにレティシアを見回した。

「大丈夫だよ。」

レティシアは笑ってみせた。

「あぁ、あの魔導具を取ってもらったんだね。よかったよ。」

レティシアはケンに外してもらったことを黙っていた。


「私、どうなるの?」

レティシアは魔力を持っている人間は価値があるとさんざん聞いてきていた。

何かしらに利用され、奴隷のように扱われるかもしれないとも脅されてきた。


「今ハンナがこっちに向かってるよ。ハンナがきっとエリック王子に掛け合ってくれると思う。レティシアはまだ子供だからってね。」

「大人だったらどうなってたの?」

「大人だったら騎士団に強制的に入れられていたと思うよ。光属性の魔法師はとても貴重だからね。」

みつかったのが奴隷商人じゃなかっただけマシなのかもとレティシアは思った。


「まだレティがどんな魔法を使えるのかわかっていないんだ。魔力を持ってても魔法を使えない人もいるしね。」

「じゃあ魔法なんて使えないって言ってもいい?」

「そうだね、子供だし、信じてもらえるかもね。」

レオハルトは魔力のある子供は学校に入れられて魔法を学ぶものだと教えてくれた。


「僕はカイたちのところへ行ってくるよ。きっと心配してるだろうからね。何か伝言はあるかな?」

「私は元気って伝えて。」

レオハルトは「怖い思いをさせてごめんね」と言ってレティシアの頭を撫でて部屋を出ていった。


入れ替わるようにメイドが食事を持ってやって来た。

「わたくしはこの部屋の専用メイドのカリンでございます。何かありましたらお呼びください。」

カリンはルルと同じくらいの年齢の女の人だった。

とても丁寧な喋り方できれいな挨拶をして部屋を出ていった。

カチャッと鍵をかける音が聞こえた。


レティシアは城の一室に軟禁状態だった。

大きなベッドにポツンと一人だった。寂しくて、怖くて、涙がポロポロと落ちた─。


────


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