第44話
ツキの前世が、自分の助けた黒猫だという衝撃の事実を知ったレティシア。今までずっと幼くして死んでしまった可哀想な子だと思っていたが違っていた
。
ツキの狩猟センスや生きるのに必要なときどき見せる無慈悲さは野良猫だったと聞いて妙に納得してしまった。
レティシアは何も望まずにこの世界に転生したわけだったが、ツキはあの時の女の人に会いたいと強く願ったらしい。
そもそも転生のシステムもわからないし、世界が何個あるのかもわからないので考えるだけ無駄である。
しかしツキがいなかったらレティシアはとっくにこの世界で死んでいただろうと思った。
ツキのことは絶対に守ると誓い直したレティシアだった。
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鉄を売りに町に行ったカイは、町の様子を教えてくれた。
ケンの情報の通り、ハンナは騎士団に入れられたようだった。
町の住民も報酬目当てで兵士になる人が続出していた。そんなことがあり、町はなんだか静かになっていたということだ。
鉄はとても喜ばれ、防具屋と武器屋が喧嘩するくらいの騒ぎになってしまった。
ケンはいつも2軒で半々ずつ買い取ってもらっていたのだが、今回は「武器のほうが大事だ!」「防具のほうが大事だ!」と両者譲らずに、もっとよこせと言い合いになってしまったと言うのだ。
結局はケンがいつものとおり半々じゃないと売らないと言ったので事態は収拾したのだが、殴り合いになる寸前だったと苦笑いで教えてくれた。
鉄に似た金属は鉄より固くて扱いにくいものだったが性能がとてもよく、鉄より高い値で売れたという。
ツキは魔法が使いたくて「新しい洞窟を探したい」とウズウズしていた。
「町で魔力持ちの子供が次々誘拐されてるって噂を聞いたんだ。二人ともしばらく魔法は禁止だ。ケンも派手なやつはダメだぞ!家具が動いてるのに気がついているからな。」
カイはそう言ってふわふわ飛んでいたケンを睨みつけた。
ケンはケリーやルルにすごいだろと家具をくるくる回して見せていたのだった。
「はーい。」
みんなはおとなしく返事をした。
「誘拐って誰がそんなことをしてるのかしら。」
ルルは眉間にシワを寄せていた。
「せめて敵国じゃなければいいのだがな。」
カイはそう言って目を伏せた。
《チートもののアニメならここで助けに行ったりするのに》
レティシアは自分がポンコツすぎてそんな展開はありえないと気を落とした。
ツキはそんなレティシアを見て肩をポンポンと叩いてニコッと笑った。
ツキにはまだいろんな能力が隠れているんじゃないかとレティシアは思った。
《ここに主人公がいたわ!》
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カイはルルを連れて洞窟に行ってしまった。
ケリーは忙しそうに動物の世話と畑の手入れをしている。
二人は野菜に水をあげて収穫の手伝いもした。
「フルーツが食べたい。」
レティシアは野菜ばかりの畑を見て心から声が漏れた。
「私もいちごは好き。」
ツキはそう言って笑った。
「いちごなら森でみかけたわ。探しに行く?」
ケリーは町との間にある森で赤い実を見かけたと言った。
「いく!」
二人は「やったー」と喜んだ。おとなしくしている生活に飽きていたのだった。
3人はツキの切り開いた道を少し進み、森の中に入っていった。
木が密集していて少し薄暗い。
「もう少し行くとひらけているところがあるのよ。」
ケリーの言うとおり、少し行くと明るい場所があった。
大きな岩のまわりには赤い実がたくさんあった。
レティシアの知っているいちごとは違っていたが間違いなくベリー系の何かだった。
一つつまんで食べてみると甘酸っぱくてとても美味しい。
3人は夢中になって赤い実を採集した。
かごいっぱいになるまで採った。3人は満足して帰ることにした。
「ケリー、ジャムを作って!」
「ジャムって何かしら?」
この世界にはジャムがないのを思い出した。
干してドライフルーツにするか、ソースとして煮ることはあってもパンに塗ったりするものじゃなかった。
「えっと、いちごを砂糖とぐつぐつ煮込んで、ドロドロにするの。」
レティシアがそう言うと、「それっておいしいの?」とケリーは首を傾げた。
「じゃあ帰ったらみんなで作ってみましょうね。」
「やったー!」
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レティシアは前にツキに作ってもらった銅の鍋を出した。
中華鍋のようなシンプルな作りでレティシアは気に入っていた。
そこに洗ったいちごと砂糖をたくさん入れた。
「こんなに砂糖を入れるの?もったいない!」
ケリーはオロオロしていた。
「大丈夫、美味しくなるから!弱火でどろどろになるまで煮込むだけ!」
レティシアはそう言ったが焦げそうになってケリーに鍋を奪われた。
「水分を飛ばせばいいんでしょ?私がやるわ。」
ケリーはとても上手にレティシアの想像通りのものを作ってくれた。
「あんなにいちごと砂糖を入れたのにこれしかできないのね。」
レティシアはこの世界でジャムが流行らないのはこのせいだと思った。
高くつくからだった。砂糖は高級品だった。
しかし一口食べたケリーは驚いていた。
「すごくおいしい!!」
ツキは無言でパクパク食べたのでケリーに止められた。
「これは高級なものよ!カイとルルにも残してあげて!」
ツキはハッとして食べるのをやめた。
「ごめんなさい。」
「砂糖がたくさんあればたくさん作れるのにね。」
わたあめを作るときに大量に買ったのが悪かったようで砂糖の値段がさらに上がってしまっていた。
「砂糖も作れたらいいんだけどね。」
レティシアは頭の中の少ない知識をフル回転して砂糖の作り方を思い出そうとした。
「確か…甘い大根みたいなやつからできていた気がする…。」
レティシアがそう言うと「そんな野菜あったかしら?」とケリーは首を傾げた。
「あとはね、サトウキビっていうまっすぐに生えるこういう茎の長いやつ。」
レティシアは身振り手振りでサトウキビを伝えた。
「それなら湖の近くに生えてたよ。」
ツキは採ってくると言って外に出ていってしまった。
ツキはすぐに戻ってきた。手にはレティシアの思い描いているサトウキビがあった。
「そんなのどこにあったの?」
レティシアには見た記憶がなかった。
「ボーボーの草の向こうにたくさん生えてるよ。」
ツキの言うボーボーの草とはその名の通り、丈の長い草だった。
レティシアはそこを掻き分けて向こう側に行こうだなんて思ったことすらない。
レティシアはツキの持ってきたサトウキビを折ってかじりついた。
「甘い!サトウキビだ!」
レティシアは某ゲームのことを思い出した。
サトウキビから砂糖になるのはわかったがどうやって作るのかはわからない。
しかし種のある植物ではなかったはずだ。
三分割した茎を水の横に植えたら育った気がする。
「サトウキビを栽培して砂糖を作ろう!」
レティシアは何かのスイッチが入ったようにそう言った。
「おー!」
ツキはレティシアが楽しそうだったので自分も楽しくなった。
「楽しそうね、私も手伝うわ。」
そうして3人でサトウキビが生えている場所に向かった。
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ボーボーの草は本当にボーボー生えてて手強そうだった。
魔法を使えたらすぐなのに。とツキはがっかりしている。
「魔法なんてなくてもね、どうにかなるのよ!」
ケリーはナイフで上手に草を切っていった。
レティシアとツキも負けずに草を引っ張って抜いた。
わりとすぐにサトウキビは姿を見せた。
「たくさん生えてたね!」
レティシアは圧巻の景色に嬉しくなった。
「こうやってね、一本を3個くらいに分けて、土に埋めると生えてくる…はず…。」
「なるほどね。そういう植物はたくさんあるわ。やってみましょう。」
3人はサトウキビをたくさん収穫して家に戻った。
ケリーは今までの植物の知識と生まれながらのセンスでサトウキビを切り分けて畑に植え付けてみた。
「すぐにはわからないわ。このまま様子を見ましょう。」
「うん!」
3人は砂糖作りをしてみることにした。
3人は外にあるテーブルでどうしたらいいかを話し合った。
「多分、絞って液体を出していた気がする。」
テレビで見たような気がしたレティシアはそう提案してみた。
ケリーは「いいものがある!」と言って金属でできた何かを持ってきた。
革を鞣すときに使う道具なんだそうだ。
ケリーはそれを大きな鍋に入れて茹でた。
「さすがに食べ物に使うなら消毒しないとね。」
レティシアは魔法が使えたらすぐに浄化したのに、と思った。
その間にレティシアとツキはサトウキビの必要なさそうな葉っぱの部分を取り除いた。
「楽しいね!」
ツキはごきげんだった。
「うん、楽しい!」
二人は目標をみつけて作業するのが好きだった。
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