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第43話

国王暗殺未遂事件があってから数日後、おとなしくしていたレティシアたちだったがツキがみつけていた穴を探検することにしてしまった。

戦争を視野に城は動いているとの情報を聞いたカイは鉄をみつけたいと思っていた。


穴を降りた先は洞窟の端っこのようだった。

一本道なのでとりあえず迷うことはないだろう。

ケリーは念のため入口の穴の前で待つことになった。

「鉱脈があったら参加するわ。」

ケリーはそう言ってみんなを見送った。

偵察だけしてすぐに戻るとカイは言った。


洞窟の中は湿っていた。湖が近いからかもしれないとカイは言った。

「滑って穴に落ちたりしないように。」

生き物がいる感じは全くしなかった。

ここには食料となりそうなものが何もない。


たいまつで照らして隈なく見ながら前に進むと早速鉄鉱脈があった。

ルルはその下に照明の魔導具を置いた。


さらに進むと壁に白っぽく光る何かをみつけた。

「これって…銀じゃない?」

全体的に黒くくもっているが、金属自体は白っぽい。

ツキは魔法で大きな塊を取り出した。

中から出てきたのはピカピカと輝く銀色の鉱石だった。


この世界での銀は銀貨に使われているのがメインだったが貴族の間では食器やトレーなど鉄の代わりに使うのが流行っていた。


「お金にはなるけど戦争で役に立つとは思えないな。」

カイは銀には興味がないようだった。

ルルは美しく光る銀に魅了されていた。

「あとでちゃんと掘るからね。」

ルルは銀をペチペチ叩きながらそう言った。


4人はさらに奥に進んだ。

急に上り坂になり、滑る道はみんなを苦戦させた。

ツキはイライラして地面を階段のように削った。

あまり魔法を使ってほしくなかったレティシアだったが、転びまくるよりいいと甘えてしまった。


登った先には美しい池があった。

カイは湖と繋がっているのだろうと言った。

レティシアはもしかして、と池の天井を見た。

そこには輝く金色の何かがあった。

「金鉱脈だ…。」

みんなはその美しさに言葉を失った。

この金鉱脈からあの金の粒ができたのだろうと思われる。


洞窟はとても短かった。

4人はケリーの元に戻り、今見てきたことを話した。

「鉄に銀に金?どうなってるのかしら。」

ケリーはできすぎだと不安になってきたと言った。


カイは「とりあえず鉄を掘る」と言った。

ツキはできるだけ魔法を使わないでほしいとカイも考えていた。

「ツキとレティはケリーと帰って食事の支度を手伝ってあげて。」

カイにそう言われた二人は渋々ケリーと一緒に家に帰った。


────


「いつまでおとなしくするのかな。」

ツキはとても不満そうにケリーに聞いていた。

「そうね、少なくとも戦争するしないの話がなくなるまでは、おとなしくしていたほうがいいわね。」

ツキはそれを聞いてがっかりした。


「ねぇ、戦争を終わらせるにはどうしたらいい?」

ツキはレティシアにそう聞いた。

「うーん。」

レティシアは「どちらかが負けたら終わる」と言いたかったが言うのをやめた。

ツキが今すぐにでも飛んで行って城を陥落させたら困る。


「お金がほしいとか、土地がほしいとか、貴重な何かがほしいとか、そういうことで戦争が始まったりもするんだよね。」

レティシアが話しているとケンがパタパタと飛んできた。


「人間とは愚かな生き物だな。」

ケンはヤレヤレという雰囲気でそう言った。

「ねぇケン。ケンの他に精霊っていないの?精霊の世界みたいなのはないの?」

レティシアの質問にケンは首を傾げた。

「他の精霊に会ったことがない。あのババアが言うにはどこにでもいるし、どこにもいないってことらしい。」

レティシアにもツキにも意味がわからなかった。


「見えないだけでいるのかもね。」

レティシアがそう言うと、「魔力が足りなくて姿を現せないのかもしれない」とケンは言った。

本屋のミラーさんは魔法が使える。その前の本の持ち主は王族らしいので魔力が使える人が常にケンの近くにいたことになる。

そういう環境にない精霊は存在しているが魔力不足で見えていないだけだろうとケンは考えていると教えてくれた。


どんなものにも精霊は宿ることができるらしい。

レティシアは古そうなものを探したがこの家にはなさそうだった。

カバンからツキにもらった金のブローチを出した。

古そうだったけど精霊は呼んでも出てこなかった。

「このマークどこかで見た記憶がある。」

ケンはブローチの葉っぱの模様に触れた。

ふわっと一瞬光ったように感じた。


「ケンは冒険家だったからいろんな国の記憶があるのかもね。」

レティシアはそう言ってケンを撫でた。

ケンは「思い出した!」と言ってパタパタ飛んでいき、歴史書を持ってきた。

「お前!全然読んでないだろ!」

レティシアはビクッとした。

「だって眠くなるんだもん。」


ケンはパラパラやってあるページを開いた。

「あ!葉っぱだ!」

ツキは挿絵の中にそのマークをみつけた。


「女神って書いてる?」

「この大地を創ったと言われている女神様だよ。ちゃんと読めよ!」

レティシアは読んでみることにした。


「なんか要約すると失恋して大地を創ってる途中でやめちゃったみたいなこと書いてるね。」

レティシアは首を傾げた。女神様も万能ではないらしい。


「ただの神話だけどな。完璧な大地だったら戦争なんか起きないだろうっていう人間の言い訳みたいなもんだろ。」

ケンはそう言って「まったく人間ってやつは」とブツブツ文句を言った。


レティシアは本を閉じた。なんだか眠くなってきてしまったからだ。

「レティ!ツキ!ちょっと手伝って!」

ケリーに呼ばれて二人は部屋を出た。


「サラダにする野菜を採ってきてくれる?」

「わかった。」

ツキはかごを受け取った。


畑は自分たちで食べられるだけの量を作っている。

広げすぎて上空からみつかるのが嫌だとカイが言っていた。

ケリーがまめに手入れをしていてとてもきれいな菜園だった。


「苦いやつは嫌だ。」

ツキは野菜が好きではないらしい。

「なんでも食べないと大きくならないってケリーが言ってたよ。」

ツキは「ちぇーっ」と言いながらトマトをかごに入れた。


────


夕食前にカイとルルが帰ってきた。

二人ともホクホク顔で嬉しそうな顔だった。

なんと見えていた鉄の奥にもまだたくさんの鉄が埋まっていたのだという。


「鉄以外にも鉄っぽい金属があったから掘ってきたよ。売れるか明日聞いてみる。」

レティシアには金属の知識がほとんどない。

こっちに来てから、勉強しておけばよかったと思うことがたくさんあった。

気になったことはすぐに調べられる環境にいたのに、調べることさえしなかった前世の自分にはがっかりしている。


「レティどうしたの?」

レティシアは考え事をしていて食べる手が止まっていたことに気がついた。

「自分のポンコツさをしみじみ感じてただけだよ。」

ツキは「なにそれ?」と首を傾げていた。


────


カイは朝一番に荷車を引いて町に向かった。

レティシアたちはまた留守番だった。

「何か楽しいことをしよう。」

レティシアはツキとそう言って何をしようか悩んでいた。


「あっ!そうだ!」

レティシアはカバンの中から祭りで買ったスパイスたちを出した。

「変なにおい。」

ツキは顔をしかめた。

「カレーのにおいだよ?嫌い?」

「多分嫌い。」

ツキは辛いものが苦手だったのかなと思ったが、小さいときに亡くなったならカレーを食べていないのかもと思い直した。


「ツキは前世で何が好きだったの?」

レティシアはなんの気なしに聞いてみた。

「魚。あと、ちゅーる。」

レティシアは首を傾げた。

「ちゅーるって人間用もあったっけ?」

レティシアはペット用のおやつを思い出していた。


「知らない。ときどきくれる人がいた。いい人!」

「知らない人に食べ物もらったの?」

「だって野良猫だったから。」

レティシアは予想外の言葉に固まってしまった。


「野良猫って外で暮らしてたってこと?え?猫ってこと?どういう意味??」


レティシアの頭の中はパニック状態になった。

「外で暮らしていた猫だよ。レティにも会ったことあるでしょ。」

レティシアの頭の中から猫の記憶を取り戻そうとした。しかし出てくるのは前世で死ぬ直前に助けたあの黒い猫だった。


「えっ!あのときの?!」

レティシアの中で何かが一気に繋がった気がした。

謎だった部分がそれによって納得がいく。


「知らなかったの?言わなかったっけ?」

ツキはケロッとしている。

「うん、知らなかった。そっか、あの黒猫ちゃんか。助からなかったんだね。」

レティシアはそこまで言ってポロポロ涙をこぼした。


「え?事故のときでしょ?助かったよ!だからお礼に来たんだよ。」

「でも死んだから転生したんでしょ?」

「猫だっていつかは死ぬでしょ。」

「寿命をまっとうしたってこと?」

泣きながらレティシアに掴まれてツキは困惑していた。


「野良猫の寿命は短いからなんとも言えないけど。多分そう。」

ツキがそう言うとレティシアは笑顔になった。

「そっか。私のしたことは無駄じゃなかったんだね。」

ツキは「ウンウン」と頭を縦に振った。


「死んだ時期が違うのに私たち同じくらいの年齢だよね?なんでだろう。時間とかの概念が転生にはないのかな…。」

ツキはレティシアが難しいことを言っているので首を傾げていた。


「ここに来たときからこの大きさだよ。多分。気にしてなかったけど。」

「そうなの?」

レティシアはツキが魔族なのを思い出した。

もしかしたら魔族とは人間と違う時間の流れがあるのかもしれない。


「聞きたいことはたくさんあるけど、いろんな謎が解けたよ。ありがとう。」

レティシアはツキの両手をギュッと握った。

ツキはわけがわからない様子だったがレティシアが嬉しそうにしているので自分も嬉しくなった。

レティシアは今はそれどころじゃない、とスパイスをカバンに戻した─。


────



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