第41話
「おかえり!早かったわね。」
3人が汗だくで家に戻るとケリーはいつもの笑顔で迎えてくれた。
3人の様子がおかしいとすぐわかったケリーはすぐにドアの鍵をかけた。
「ほら、みんな座って。今お水を持ってくるわね。」
3人は食卓の椅子に座った。
「お母さん、あのね。」
ルルは息を整え、今見てきたことを話した。
「そんなことが…。お父さん、今狩りに出てるのよ。帰ったらまた話してくれる?」
「うん。」
ケリーはすぐにスープを作ってくれた。3人はそれを飲み、ゆっくり休むように言われた。
レティシアは部屋に入り、ふわふわのラグの上に横になった。
「おい!元気だぜ!お前が狙われてるわけじゃないだろ!」
ケンはレティシアの上をふわふわ飛びながら慰めようとしているようだった。
レティシアはそっとケンを掴んで抱きしめた。
「ありがとう。」
「何をする!離せ!!」
ケンは少しもがいたが、レティシアがまだ悲しそうな顔なので撫でさせることにした。
「しかたないな。好きなだけ撫でろ。」
ケンがそう言うのでレティシアはおかしくてクスッと笑った。
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夕方になりカイが帰ってきた。
ケリーは獲物を解体せずにそのまま冷凍庫に入れた。
食卓には晩ご飯が並んでいた。
「いったいどうしたんだ?」
険しい顔になったカイにルルは「国王の暗殺未遂事件が起きた」と短く言った。
カイもケリーもこの国の王を見たことがない。
何かをしてもらった記憶もないので王様バンザイという感じは一切ない。
しかしその話は二人にもかなり衝撃的だった。
ヒギンズが爆発した話をするとカイの表情は歪み、ケリーと目を合わせたかと思うと小さく頷いた。
「あいつらが今度はこっちに来たのかもしれない。」
レティシアはハッとしてカイを見た。
ルルの表情もこわばっている。ツキだけはなんのこと?という顔だった。
レティシアが生まれたのはピーツという国だった。
その隣国にあったのがチュンバという国だ。
チュンバには黒い噂が絶えず、その勢力は一気に膨れ上がり勢力を増していた。
ピーツも吸収されてしまった国の一つである。
闇属性と聞いた瞬間に「魔族絡みか」とカイは言った。
ツキがそこでやっとピクッと反応した。
レティシアはすぐにツキの手を握り、「ツキは大丈夫。私が絶対に守るから。」と言った。
ツキの表情は和らぎ、「うん」と頷いた。
「戦争が起きそうだな。きっと町の人たちも徴兵されるぞ。」
レティシアは前世での悲しい戦争の話を思い出していた。
たくさんの罪のない人たちが犠牲になる。
「ハンナは家でおとなしくしててって言ってた。」
ルルも何かを思い出しているかのような悲しい顔になった。
「それがいい。狩りや買い物もなし。家のまわり以外は外出禁止にする。二人は魔法禁止!」
みんなは「はい」と受け入れた。
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「おい、国王のことが気にならないか?」
ケンは部屋で暇を持て余しているレティシアに聞いた。
「気になるけど、国王がどこに住んでるかすらわからないもの。」
レティシアはそう言ってお手上げのポーズをした。
「俺様の新しい技を見せてやる!」
そう言ってレティシアの部屋にいたツキに絵本を持ってこいと言った。
ツキは首を傾げながらカバンから絵本を出した。
ケンはレティシアが買った歴史書の中にスゥーッと入っていった。そして顔だけピョコっと出した。
「いいか?絵本を見てろよ。」
絵本からケンの足がピョコっと出てきた。
「えっ?分裂したの?!」
歴史書から顔が出ていて、絵本から足が出てきている。
レティシアとツキは驚いて両方の本を順番に見た。
ツキは「意味がわからない」と言って絵本から出ているケンの足を引っ張った。
すると歴史書から出ていた顔は消えて絵本からケンが出てきた。
「すごい!マジックみたい!」
レティシアが喜ぶとツキは「マジックって魔法ってこと?」と真剣な顔で聞いてきた。
レティシアの中では少し違ったが「あ、うん、そう。」と答えた。
「おい!離せ!!」
ケンはツキに足を掴まれて宙吊りになっていた。
「どういうこと?」
レティシアが首を傾げるとツキはケンを離して「説明して」と言った。
「俺様がすごいからだ!ここに来てから魔力が強くなった!今までできなかったことができるようになった!」
ケンはそう言って部屋中のものを浮かせて踊らせてみせた。
「わぁ!ほんとだね!」
レティシアは純粋にケンすごいと褒めた。
「俺様が知ってる本にワープできるんだ。本というか…、知ってる場所に本があれば行ける!」
レティシアとツキはイマイチ何を言ってるのかわからなかった。
「だから、あのババアの本屋の本にもワープできるぞ!」
「なるほど!それは便利?かな?」
レティシアは自分で言っていてわからなくなった。
「この能力に気がついたとき、いろんな場所に行ってみたんだ。顔を出して覗いただけだがな。今まで、この本があった場所なんだが…。あの王のいる城の図書館に行けるのがわかった。」
「ケンって城の図書館にいたの?」
「そうだぞ!いつの間にか使用人が俺様をあんな本屋に売りやがって!許さん!!」
この国の国王のいる城に行けるとケンは言う。
「でもみつかったらどうするの?図書館に人がいるかもしれないし。」
レティシアはなんだか不安になってきた。
城にはいい思い出がない。
「俺様を誰だと思ってる!世界一周した冒険家だぞ!」
ケンは行く気まんまんだった。
しかしレティシアに遠くに行ってはいけないと言われていたので覗くしかできなかったのだそうだ。
「ちゃんと帰ってきてよ?」
「もちろんだ!俺様はケリーの作るご飯が好きだ!」
レティシアは不安を感じつつ、必ず戻ることを条件にケンが行くことを許可した。
ケンは歴史書に吸い込まれるように消えていった。
「待つしかないね。」
ツキはまた退屈そうにそう言った。
「釣りにでも行こうか!魔法なしだけど。」
「いく!」
二人は湖へと向かった。
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レティシアはいつケンが戻ってもいいように手元に歴史書を置いておいた。
ツキは嬉しそうに釣りをしている。
こんな美しい世界のどこかで戦争をしているなんてレティシアには信じられなかった。
「レティ、ちょっと釣り竿持ってて。」
ツキはレティシアに釣り竿を渡すといきなり湖の中に入っていった。
「だめだ!」
ツキはすぐに溺れそうになった。
レティシアは湖に飛び込んでツキを助けた。
「大丈夫?」
二人ともビシャビシャになった。
「ごめんね。泳げないの忘れてた。」
ツキはそう言ってアハハと笑った。
「湖の中に何かあったの?」
レティシアは湖の中を覗きこんだ。
「あのね、湖の底に金色の何かが見えるんだけどね、それを取ろうと思ったんだけど泳げなかった。」
ツキは恥ずかしそうに頭を振って水を飛ばした。
レティシアは湖に頭を入れて見た。確かに金色の小さなつぶつぶが見える。
「レティは泳げる?」
「ぜんぜん泳げない。」
二人は目を合わせて笑った。
この湖は中心に向かって徐々に深くなっているようだった。
しかし釣りをしているこの場所は崖のようになっていて見た感じレティシアの背丈よりもずっと深そうだった。
「虫あみでもあればいいのに。」
「虫を捕まえるの?」
「あの石をすくうんだよ。」
二人は作れないかとカバンをあさった。
長い棒と布をみつけた。
「着替えてから作ろう。」
レティシアはくしゃみをしながら笑った。
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ビシャビシャになって帰ってきた二人を見て、ケリーは慌てた。
「なに?!どうしちゃったの??大物にでも引っ張られた?」
「ううん。湖の底に金色の何かがあって取ろうとして失敗したの。」
二人は目を合わせてクスッと笑った。
「金色?まぁ、とりあえずお風呂に入って着替えてらっしゃい!」
二人はそのままお風呂に向かった。
ケリーは二人の着替えを持ってきてくれた。
「金色の何が見えたの?」
ケリーは金色の何かに興味があるようだった。
「えっとね、ちっちゃいつぶつぶ。」
「ちっちゃいのかぁ。」
明らかにケリーはがっかりした声を出した。
「それでね!すくう網がほしいの!」
レティシアは勢いよくお風呂から出てきた。
ケリーは二人をタオルで拭いて着替えさせた。
「小さい粒をすくうのね…私も手伝うわ。」
ケリーはお宝ではなくとも二人が楽しそうなので協力することにした。
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