第34話
失恋を経験したルルはしばらく塞ぎ込んでいた。
タルの町で開催される祭りの話を聞いたルルは少し元気になって部屋から出てくるようになった。
レティシアは剣術大会の話を詳しくルルに話した。
「他の町からも出場者は来るのかしら?」
「ハンナが言うには田舎の方に住んでる貴族の息子とかのお披露目にも使われるみたいだよ。それよりも町の広場で行われる予選が盛り上がるみたい。いろんな町の人がこぞって出場するんだって。」
ルルは貴族という言葉に少し反応したが「おもしろそう!」と興味を示した。
ケリーは祭りの話を聞いてから何かをずっと作っていた。
革の紐の先にアメジストの小さな欠片を括りつけただけのペンダントだった。
「売り物にもならないと思っていたクズ石だけど、こうしたら売れると思わない?」
ケリーはそう言ってみんなに見せてくれた。
ツキは「これもあげる」と言ってカバンの中からアメジストを大量に出した。
「いや、こんな大きなのは無理よ。」
ケリーはそう言って笑った。そのケリーがおかしくてみんなも笑った。
久しぶりに家族が揃い、みんなが笑顔になった。
ツキは他にも洞窟で拾ったものをカバンから出した。変な色の石ころが多かったが、中に見慣れないものがあった。
「これ、なんだろう?」
それは金色のブローチで葉っぱの模様が描かれていた。
「どこで拾ったの?」
レティシアはそれを手に取りじっくり眺めた。ずっしりと重くて本物の金だろうとレティシアは思った。
「わかんない。カバンに入ってた。いらないからレティにあげる。」
「いいの?ありがとう、ツキ。」
ツキはレティシアが喜んでいるので嬉しそうにした。
この世界でも金の価値は高い。
服につけようとしたら「盗まれるからやめな」とルルに止められた。
レティシアはしかたなくカバンにしまった。
「いつか金をみつける。」
ツキは握りこぶしを作り、力強くそう言った。
「いいわね。」
ケリーも目を輝かせていた。
レティシアは前世で一瞬だけマイブームになった手芸を思い出していた。
あの時はパッチワークとレース編みをやりかけた。
どっちもうまくいかず、ものになる前に諦めてしまった。
レティシアは枝を加工してかぎ針を作ろうとした。
なかなかうまくいかずに「何してるの?」とツキは不思議そうに聞いてきた。
こういう形の棒がほしいとレティシアは地面に描いてみせた。
ツキはすぐに魔法で枝を切ってくれた。
「ツキすごいね!こんな細かいこともできるんだね!」
レティシアが褒めるとツキは照れて嬉しそうにした。
「本当は金属で作るんだけどね、流石にね。」
レティシアがそう言うとツキはカバンから鉄の棒を出した。
「実は金属の形を変える練習をしてた。」
ツキはそう言ってかぎ針を作ってくれた。
それはレティシアが前世で見たものにそっくりだった。もしかしたらツキも手芸をしたことがあったのかもしれないとレティシアは思った。
家に戻ったレティシアはケリーに太い白い糸をもらった。
レティシアはレースをこの世界で売れば儲かると思ったのだ。
しかし不器用なレティシアに作れるわけもなく、ルルが「何をしたいの?」と興味を示した。
レティシアはやり方だけは覚えていなのでルルに教えた。
ルルは器用に糸を編んでいった。
「わぁ!すごいわね、花みたいな模様ができたわね。」
この世界にも刺繍はある。しかしレースという概念はないようだった。
ルルは楽しくなったようで「私にやらせて」とレティシアから奪った。
ルルはすぐに花のモチーフを完成させた。
「こういうのをたくさん作って服とかに縫いつけると豪華に見えるの。」
レティシアが前世で作ろうとしていたのはそんなに大きなものではなかったが、ルルなら作れるのではないかと思った。
「なるほどね。」
ルルは少し悩んでいるように見えた。
「ねぇ、レティ。これは時間のかかるものだから、祭りには間に合わないわ。でも商売にするにはいいかもしれないわね。」
ルルは店をやりたいと言っていたのを思い出したようだった。
「レティは面白いことをたくさん思いつくわね!他に何かないかしら?新しくて、流行りそうなもの!」
レティシアは悩み、「思いついたら言うね」とその場を離れた。
レティシアは前世の記憶をたどった。
お祭りの屋台を思い出していたのである。
ソースがこの世界にはないので焼きそば系のものはできない。
りんご飴はこの世界にもある。
わたあめはどうだろうかと考えた。
レティシアは前世で科学クラブというものに所属していたことがある。
全員何かしらのクラブに入らなくてはいけなくて、運動の得意でなかった前世のレティシアはそのクラブに入ることにした。
そこで空き缶を使って作った記憶がある。確か磁石とかモーターとかそんな感じの実験でくるくる回していたのをなんとなく覚えていた。
レティシアは紙に設計図を描いた。
カイはそれを見て作るのを手伝うと言ってくれた。
ここで1番大事なのが缶を回転させることだった。
ツキは「回せばいいの?」と回転する魔導具を作ってくれた。
この世界にはプラスチックがない。
円形に囲いたいと言うとケリーがツルツルすべすべの革を出してきてカイが作ってくれた骨組みにつけてくれた。
レティシアが想像していたものとは全然違うものになったが、構造的にはうまくいきそうだった。
「この缶に粒の大きい砂糖を入れてね、下から温めて回すと、この缶の穴からふわふわしたやつが出てくるの。」
実際にやってみると火加減が難しかった。
ツキの火魔法では強すぎるし、ろうそくでは弱すぎる。
「照明に使ってる魔導具は?」
ルルが持ってきた魔導具は魔力で消えない炎を出し続けるというものだった。
試してみるとわたあめになった。
レティシアは長いきれいな枝にわたあめをくるくると巻きつけようとした。
しかし不器用で砂糖の塊ができただけだった。
「違うの、このふわふわをね、枝にふわっとまとわらせてね。」
ケリーはレティシアの説明を理解したのか、「やってみる」と枝を持った。
ケリーは器用にわたあめを作った。
「こういうこと?」
「そう!それ!食べてみて!」
わたあめは口に入れるとシュワッととけた。
「ただの砂糖だけど…。面白いわね。」
「子供に人気が出ると思うよ。」
カイとケリーは目を合わせ、「砂糖を仕入れてくる」とタルの町に行ってしまった。
ツキは喜ぶかと思ったけどあまり興味がなさそうだった。子供なら誰でも好きだと思ったが違うようだった。
ルルは気に入ったようでひたすら作っては食べていた。
「これ、作るのがとても面白いわ!」
ルルはすぐに上達して大きなわたあめを作り出した。
レティシアはパチパチと拍手をして大きなわたあめをもらい食べた。
甘くて、なんだか懐かしい気持ちになった。本当ならアニメやキャラクターのかわいい袋に入れたいところだが、この世界では無理そうだ。
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帰ってきたカイとケリーは同じ装置をもう一つ作った。
なんと、祭りでの出店を決めてきたというのだ。
「枝を集めなきゃ」と言うので、レティシアは割り箸を思い出してツキに木材を加工してもらうことにした。
「切り刻めばいいんでしょ。」
ツキはニヤリと笑うと華麗に大量の木の棒を作った。
「うん、枝よりもきれいにくっつくわ!」
ルルもこっちがいいと言い、あっという間にわたあめ屋さんが完成した。
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ルルは塞ぎ込んでいたのが嘘のように元気になった。
今は看板を作ると言って板に文字を描いている。
絵の具を使ってかわいいわたあめの絵も描いた。
ケリーは原価の計算をし、1つハーフ銀貨にすると言った。
ハーフ銀貨とはそのまま銀貨半分の価値でパンなら5個くらい買うことができる。
「高くないかな?」
レティシアは少し不安になってきた。
「普段なら売れないかもしれないがお祭りだぞ?子供に買ってと言われたら俺なら買うね。」
カイはにこやかにそう答えた。
「なるほど。」
レティシアは想像がついて納得した。
ケリーはレティシアとツキにかわいいエプロンを作ってくれた。
ルルはそこに編んでくれた花柄のレースをつけてくれた。
「すごくかわいい!」
レティシアは大喜びだった。ツキも嬉しそうにくるくると回って見ていた。
祭りは明後日だった。
みんなワクワクウキウキしていた。
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