第30話
新生活に向けて家を建設中のレティシアたち。
タルの町にみんなで買い出しに来ていた。
みんな欲しいものをそれぞれ買い込み、ルルはマイトに会いたくて貴族街への門を見張っていたが会えず。
「そんなに素敵な人なら母さんも会いたいわ。」
帰りの馬車でがっかりしているルルにケリーは話しかけた。
「そうなの!とっても素敵なの!」
ルルは急に目を輝かせ、マイトの何が素敵なのかを話し続けた。
最初はケリーも楽しそうに聞いていたが、ルルの勢いがあまりにもすごかったので、少し面倒になったのか「今度新居に連れてきて」と言った。
そして一同はハッとした。
それは問題がある。ケリーはすぐに謝り、「無理だったわね。ごめんなさい。相手の家は貴族の屋敷だし、なかなか自由にはいかないわね。」とルルの肩をポンっと叩いた。
さっきまで楽しくおしゃべりをしていたルルは一気に静かになり、何かを考え込んでしまった。
「ルルはお店を出したらハンナみたいにお店に住むの?」
レティシアはお店のことを思い出して、ルルに聞いた。
ルルもどうやら忘れていたように見えた。
「そうだったわ!もちろんお店に住むわよ!!明日からお店の場所も探さないと!」
ルルは馬車の中で立ち上がりそうになってケリーに腕を掴まれていた。
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建設中の湖の湖畔についたのは夕方だった。
ケリーは美味しそうなサンドイッチをテイクアウトしていた。
「さぁ、さっさと食べて、できるところまでやるわよ!」
ツキとカイは買ってきた窓ガラスをはめ込んだ。
これだけで家らしくなった。
玄関と玄関ホールが完成し、とりあえず小屋のようになった。
今日はみんなでここで寝ることにした。
「木のいい香りがするね。」
レティシアは前世で行ったキャンプ場を思い出していた。
大学2年生のときに友達に連れて行ってもらった。キャンプなどやったことのない女子大生4人でバンガローを借りた。
あそこも木のいい匂いがしたっけ。
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家の建設は着々と進んでいた。
ツキは魔法を使うのが楽しくてしかたがないという様子だった。
よく見るとだんだん精度が上がっているように見える。
カイはおおまかな建設をツキに任せ、自分は細かいところをやることにした。
ドアをつけたり棚をつけたり、ケリーの要望を聞きながら作っていく。
ルルは気がつけばいなくなっていた。タルの町にいい空き地を探すと息巻いていた。
まだ何の店にするのかも決まっていないのに、とケリーはため息をついていた。
そんなケリーは持ってきていた野菜たちを植え終わり、動物たちの小屋まわりの整備も終わらせていた。
「レティシア、少し散策しない?」
レティシアはツキのために魚を釣ろうと餌になる虫を探していた。
「いく!」
湖は今日も美しく、まわりの山々をその水面に映していた。
《きっとスイスってこんな感じだわ》
レティシアは行ったこともない海外の国を思い浮かべていた。
山に向かうにつれて少し傾斜になっている。
この山はトンネルを掘った山と違い、緑豊かだった。
斜面には立派なまっすぐの木がたくさん生えている。足元は光が差し込み、苔が生えて幻想的だった。
道という道がないので斜面を登っていくのは諦めた。
「滝だ!」
レティシアは山から湖へと流れる小さな滝を見つけた。
「きれいね。」
ケリーはその景色の美しさにしばらく見惚れた。
「洞窟はないね。」
レティシアはどこかに穴が開いていないか探していた。
「そうね、簡単に見つかるものじゃないわよ。」
ケリーはそう言ったが少し残念そうだった。
小さな小石がコロコロと斜面を転がり落ちてきた。
二人が見上げるとそこには大きな茶色の牛がいた。
「ケリー!牛だ!!」
ケリーはすぐにシーッと人差し指を立てた。
「捕まえるわよ。」
二人は目を合わせてニヤリと笑った。
ケリーはすぐにカバンからロープを取り出した。
それを輪にして首に引っ掛けようという作戦のようだ。
斜面にいる牛はなかなか移動できないでいた。
上から落ちてきたのか、それとも山を登ろうとしたのか、どちらにしてもマヌケな牛のようだ。
「魔法を使ってみる。」
レティシアは光属性の攻撃魔法を特訓中だった。
ケリーは牛がメスであるのを確認し、「ミルクをとるわ。生け捕りよ。」と言った。
レティシアは少し悩んで《牛さんを安全に山から降ろして》と祈った。
そんな魔法がないことはレティシアにもわかっていた。しかしどうしていいのかわからなかった。
牛はモォーと大きな声で鳴き、二人の方へとゆっくりと歩いてきた。
ケリーは慎重にロープを牛の首にかけた。
牛はとても大人しく、ロープを引くとそのままついてきた。
「とてもいい子ね。」
レティシアがそう言うとケリーは笑って、「私たちの家族になりたかったのかしら」と言った。
そのまま牛を建設中の場所まで連れてきた。
「小屋が必要ね。」
ケリーはロープを柵に括った。牛はそこで草をつまんでいる。
レティシアはすぐに桶を持っていき、水を入れてあげた。
牛は美味しそうに水を飲み、またモォーと大きな声で鳴いた。
カイとツキが「どうした?」と見に来た。
「牛を捕まえたの!」
レティシアが喜ぶとツキも笑顔になり「やったね!」と一緒に喜んだ。
「小屋が必要だな。」
カイも嬉しそうにどこに建てるかと他の動物の小屋のまわりを歩いた。
レティシアはツキと一緒に牛が食べそうな草を探しに行った。
ケリーは悩んだ末に他の動物たちと少し離して建てると言った。
将来的に拡張していくのを視野に入れたらしい。
ツキは小屋を建てるための木材をたくさん用意してくれた。
「こっちは任せろ!」
カイはケリーに手伝ってもらいながら小屋を建て始めた。
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「できたよ。」
日が沈みはじめた頃、ツキは小屋を建設中のカイとケリーにそう言った。
二人は「えっ?」と驚き、家を見た。
そこにはケリーの図面通りの立派なログハウスが建っていた。
「ツキ?!すごいな!!」
「でも窓とかドアはまだないよ。」
カイは牛舎の建設をやめ、家の方の仕上げにかかった。
買ってきた窓ガラスをはめ込み、用意していたドアを次々と設置していく。
そしてついに完成した。
大小合わせて10室もある3階建てのログハウスだった。
「レティ!!家が完成したわよ!!」
ケリーは大声でレティシアを呼んだ。
「わぁ!!!もうできちゃったの??」
レティシアはバケツと釣り竿を持って呆然と立ち尽くした。
ツキはバケツの中身が気になったようだ。
「あ、ツキにおみやげだよ。」
バケツには大きな魚が数匹入っていた。
「よし、今日は魚パーティだな。」
カイは外で魚を焼くと言った。
「えぇ??完成したの??」
外のコンロに薪を用意しているとルルが帰ってきた。
「素敵よね。みんな揃ったから中に入ってみましょうか?」
カイはツキを先頭にして家の中に入った。
相変わらず木のいい匂いがする。
入るとまずは玄関ホールになっている。
上に行く階段もここにあり、3階まで吹き抜けになっている。階段は半分進むと左右に分かれている。
3階への階段は左右に分かれた階段と繋がるようにそれぞれにつけられた。
1階には風呂やトイレなどの水回りが中心で、キッチンは2階にある。
リビングも2階でそのリビングからはテラスに出られる。
テラスは湖に面していてとても眺望がいい。
ゲストルームも2階にある。
3階は主にみんなの部屋がある。
カイとケリーの部屋が一番広く、真ん中に位置している。
ルルは「どうせ出ていくから」と言って湖側の部屋をレティシアとツキに譲った。
二人の部屋は中がドアで繋がっていた。
まだ家具もないもない空っぽの家だったが、みんなはこれからの生活を想像してワクワクしていた。
ツキだけは魚の方が大事そうだったが。
「戻って魚を焼きましょうね。」
ケリーがそう言うとツキはケリーの手を握り、引っ張るように外に出ていった。
辺りはすっかり暗くなっていた。
ルルはカバンから照明の魔導具を出してテーブルのまわりを照らした。
静かな夜だった。
「明日は家具を作ろう。」
カイがそう言うとツキは嬉しそうに「うん!」と返事をした。
ツキが嬉しそうで、レティシアも嬉しくなった。
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