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第16話

洞窟の中にあるネズミの穴を好奇心で壊してしまったレティシアとツキ。

その奥には人間より大きなネズミがいた。


「ネズミが私に勝てると思ってるの?」

いつものツキじゃないように見えた。

バカにするような上から目線で話しているように見えた。

レティシアは驚いて腰を抜かしてしまった。

カイたちは採掘に夢中でこちらに気がついていない。


ツキは襲いかかってくるネズミを嘲笑うかのように避けた。

そしてまるで遊んでいるかのように弱い魔法を複数回あてた。

ネズミは怒り狂ってツキに襲いかかってくる。

ツキはなかなか倒そうとしなかった。


レティシアにはツキがおかしくなったように思えた。

《私がなんとかしないと》

レティシアはネズミに向かって「もうやめて!」と叫んだ。すると雷のような光がネズミの頭に落ちた。

ネズミは真っ黒に焼け焦げた。


「ツキ?!大丈夫?」

レティシアは様子のおかしいツキに駆け寄った。

ツキは残念そうな顔をしていた。


「レティ、攻撃魔法が出たね。」

「あ、うん。なんか出たね。」

ツキはいつものツキに戻っていた。

さすがに採掘していた3人も異変に気がついてやって来た。

「今すごい音がしたけど…。」

3人はまる焦げになった何かを見て驚いていた。

「レティがやったの?あの時みたいに?」

ルルはそう言うとレティシアの頭を撫でた。

「やったね!」

レティシアは褒められて嬉しい気持ちと、さっきの不気味なツキのことで複雑な気持ちになった。


ケリーはネズミの魔石を取ってくれた。

その他は使えなさそうだったのでツキに灰にしてもらった。いつものツキだった。


「エメラルドもたくさん採れたし、今日はもう帰ろう。」

カイはレティシアの顔色がよくないのに気がついた。そしてレティシアを抱き上げた。

「カイ?歩けるよ?」

「そうだね、でも今日はこういう気分なんだ。」

カイは優しい顔でそう答えた。

レティシアは甘えることにした。なんだか疲れたし、怖かった。


────


洞窟へ行った翌日もルルは採掘に行きたいと言った。

ツキはあれ以降様子がおかしくなることはなかったがレティシアはなんだか気が進まなかった。

「今日は鶏小屋の掃除をしてるよ。みんなで行ってきて。」

元気のないレティシアを見て、「私は馬小屋の掃除をするわ」とケリーが言った。

ケリーとレティシアは採掘に行く3人を見送った。


「具合が悪いの?それとも何かあった?」

二人になり、ケリーは心配そうにレティシアのおでこに手をあてて熱を計った。

「ちょっと熱っぽいかしら。」

「ううん、元気だよ。でも昨日ネズミを倒したりして疲れちゃったのかな。」

レティシアは一生懸命笑おうとしたけどうまくいかなかった。

「鶏小屋の掃除も私がやっておくわ。レティはベッドで横になっていなさい。」


レティシアは寝室に連れて行かれ、ベッドに入れられた。

レティシアはなんだかぐったりしていて話をする元気もないようだった。


────


レティシアは夢を見た。

夢の中にはツキが出てきて、こちらを見て不気味に笑っていた。

「ツキ、どうしちゃったの?」

レティシアがどんなに話しかけてもツキは返事をしなかった。

不気味に笑いながらネズミの尻尾を持ってブンブン振り回している。

「やめて…。もうやめて…。」

レティシアの声だけが響いた。


────


その日、レティシアは高熱を出した。

自分に回復魔法をかけようにもうまくいかない。

「ツキ、今日は私のベッドで一緒に寝ようね。」

「わかった。」

ルルはレティシアを気づかって一人で眠れるようにした。

真っ赤な顔をして苦しそうな呼吸をしているレティシアを見て、みんなは心配だった。

レティシアは今まで大きな病気をしたことがない。

「きっとすぐに熱が下がるよ。さぁ、ゆっくり眠らせてあげよう。」

ケリーは寝室のドアをゆっくり閉めた。


「今日は何かみつけたの?」

ケリーは3人に今日の発掘の成果を聞いた。

「なんと、また鉄の鉱脈があったんだよ。」

「エメラルドを掘っていた上にね、ツキがみつけてくれたんだよ。」

ルルはそう言ってツキの頭を撫でた。

「近いうちにまた鉄を売ってくるよ。エメラルドについてはまず1つだけ持っていって相手の出方を見るよ。」

カイは一度にたくさん持っていって希少性を下げるのは嫌だと言った。


「しばらく暮らすには十分すぎるお金が今手元にあるんだ。発掘は楽しいけど欲をかかないほうがいいと思ってる。」

「そうね、私はまたみんなでのんびり暮らしたいわ。」

みんなが今後の話をする中でツキは黙っていた。

まるで興味がないという感じさえした。それよりもレティシアの方が気になって、閉じているドアをチラチラと見ていた。


「ツキはレティシアが心配なのね。」

ケリーにそう言われてツキは小さく頷いた。

「子供はたまに熱を出すもんだ!明日にはケロッとしてるさ!」

カイはそう言って豪快に笑った。笑いながらもチラッとレティシアのいる方を見ていた。

そんなカイを見てケリーはクスッと笑っていた。


────


レティシアの熱はなかなか下がらなかった。

3日目に入ると「伝染する熱だったら困るから隔離したほうがいい」とカイは言い出した。

隔離したくてもこの家には他に部屋がない。馬小屋や鶏小屋で寝るわけにもいかない。


「これを機に、この家を改築しようと思う。ツキ、手伝ってくれるかい?」

カイがそう言うとツキは「わかった。」と言って頷いた。

ツキの魔法があればすぐにできるだろう。


ケリーとルルはデザインを考えることにした。

カイはツキを連れて森に木材を取りに行ってくると言ってオルリに乗って出かけて行った。

家の周りの木はできるだけそのままにしておきたいようだ。目隠しがなくなるのは困る。


みんなレティシアを心配していて、なにか忙しくしている方が気が紛れていいだろうとカイの提案だった。

いろんな薬草を試したがレティシアの熱には効かなかった。

苦しそうにしているレティシアを見るのはとてもつらかった。


────


「レティ、具合はどうかしら?スープを飲みましょうね。」

「ケリー…ごめんね。」

レティシアは真っ赤な顔で一生懸命笑おうとした。

ケリーは額に手をあててまだ熱があるのを確認した。

「あとで身体を拭いて着替えもしようね。」

レティシアは力なく頷いた。


────


レティシアの熱が下がることなく一週間が過ぎた。

ツキの魔法で改築は2日で終わった。

ルルとツキはそれぞれ新しい部屋に移動した。


「タルに行って薬を探してくるよ。鉄を売れば高価な薬も買えるはずだ。」

カイはそう言って一人でオルリに乗って行ってしまった。


「薬、みつかるといいな。」

ルルは閉じられたレティシアのいる部屋の方を見た。

「ルル、薬のために発掘したい。」

珍しくツキがやりたいことを言うのでルルは少し驚いた。ルルは優しくツキの頭を撫でた。

「そうだね、どんな高価な薬でも買えるくらいたくさんお金を稼がないとね!」

ルルがそう言うとケリーはにっこり笑って頷いていた。


ルルとツキは例の洞窟に来ていた。

レティシアはここに来てから具合が悪くなった。

あの後何度か原因を探そうとやって来たが、ここには何もなかった。


「もうこの洞窟には何もなさそうだね。」

ルルは採掘したあとの岩肌を触りながらツキにそう言った。

「違う洞窟に行こう。」

「違う洞窟って、そんなにポンポン洞窟ってあるわけじゃないよ?」

ルルが笑いながらそう言うと、「あるよ」とツキは真面目な顔をして言った。

「飛んだときに見えたんだ。」


二人は反対側の出口までやって来た。こちら側は出ても崖の途中で道もない。

ツキはルルの腰に両手を回してぐっと掴んだ。

「えっ?えっ??」

困惑するルルと一緒にツキは空へと高く飛んだ。

「ひゃぁぁあ」

ルルは聞いたことのないおかしな悲鳴を上げた。

「ほら、あそこ。」

ルルは恐る恐る下を見た。

確かに山肌に穴が開いてるように見える。

「なにかあるね」ルルは消えそうな声でそれだけ言った。

次の瞬間、二人はビュンと高度を下げてその穴まで飛んでいった。


「洞窟でしょ?」

ルルを離したツキは真面目な顔で洞窟の入り口を指差した。

「そ、そうみたいね…。」

ルルは変な汗をかいたようで額を拭っていた。

「何かいるかもしれないよ?」

ルルは調子を取り戻し、立ち上がった。

「そんなの、私が倒すよ。」

ツキの言葉は力強く、ルルも心を決めた。

「じゃあ、行ってみようか。」


────


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