第14話
ひょんなことから大金を手に入れることができたレティシアたちは馬車を買い、家に戻ってきた。
カイとツキはその馬のための小屋をまる一日で建ててしまった。
その間にケリーはトンネルを通り近くの町まで買い物に出かけた。そして鶏を4羽買って帰ってきた。
カイはそれを見て、次は鶏小屋だな!と笑っていた。
住んでいる家がどんどんアップデートしていくようでレティシアは楽しかった。
前世の世界でもコツコツやり込む素材収集系のゲームが好きだった。
寝ないでゲームをして親にみつかって怒られたことを思い出した。それも遠い昔のような変な気分だった。
《ツキはどんな人生だったんだろうな》
レティシアはその言動や行動から幼くして亡くなってしまったのだろうと考えていた。だからこそ、その点について聞くことはなかった。あまりに酷い話だからである。
鉄を売ってお金が入り、町に行けるようになってから食卓が明るくなった気がする。
照明の魔導具を買ったこともあるかもしれないが、ケリーの料理の腕が急に上がったように思えた。
ケリーは大きな町でたくさんの調味料も買って来ていた。そして町に行けるようになり、食材も豊富になったのである。
カイが最近狩りに行けていないが肉や魚は町で買うことができている。
地図を見る分では海は近くにないのだが、大きな川が町の横を流れていた。そこで魚が捕れるのだろう。
ツキは魚が大好きで何が食べたいかと聞かれるといつも「魚!」と答えていた。
レティシアは前世の記憶から「子供にしては珍しいな」と思っていた。
しかしすぐに「そういう子もいるか」とあまり気にしていなかった。
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家畜の小屋造りが一段落して、みんなは普段の生活に戻りつつあった。
カイは馬のオルリに乗って狩りに出かけ、ケリーとルルは畑の手入れと家畜の世話をした。
レティシアとツキはトンネルに探検に出かけることにした。
「宝石をみつけたいんだよね。」
レティシアは歩きながらボソッとつぶやいた。
「宝石って指輪とかについてるきれいな石のこと?」
「うん、それそれ。できればダイヤモンドがいいんだけど、多分貴重なものだからそんなに簡単にはみつからないと思うんだ。」
レティシアは某ゲームのゾンビだらけの洞窟でダイヤモンドを採掘する場面を思い出した。
この世界でそんな命がけのことはできない。
「魔法で出す?」
ツキは悪ぶれた感じもなくそう聞いてきた。
「うーん。そんな必要なものでもないし、みんなにどこでみつけたとか説明できないし、出さなくて大丈夫だよ。欲しいというか、みつけたいんだよね。わかる?」
レティシアが申し訳なさそうにそう言うとツキは「わかる!」と言って目を輝かせた。
二人は目を合わせて小さく頷いた。
「ダイヤモンドをみつけるぞ!」
「おー!」
二人はトンネルではなく、違う場所を掘ってみることにした。
トンネルを穴ボコだらけにするわけにはいかない。
レティシアはトンネルの入口から少し離れた場所まで行くと山肌に触れて魔力を流してみた。
ツキも真似をして山に触れた。
二人は歩きながら何か異変がないか探し回った。
「ん?」
二人は同じタイミングで何かをみつけた。
「何かあるよね?」
「ある!なんか下の方!」
二人はうんうんと頷いた。
ツキは土魔法で何かありそうな場所に向かって掘り出した。
「私たちが通れるくらいの大きさでいいよ。」
レティシアがそう言うとツキは「わかった!」と言い、直径1mくらいの幅で掘り進めた。
二人が屈んで進むことができる大きさだ。
斜め下に掘り進めること5分くらいでボコッと音がした。
どこかに貫通したらしい。
二人はゆっくりと穴の奥へと進んでいった。
進むと何やら広い空間に出てしまった。
「洞窟に来ちゃったみたい。」
レティシアはそれこそ某ゲームじゃないかとドキドキしていた。
この世界にはゾンビはいないはずであるが魔物が存在している。
きっと洞窟には何かしらが棲みついているはずだ。
「ツキ、きっとこの先は危ないよ。戻ったほうがいいかも?」
レティシアはドキドキしながら洞窟の中を観察した。
「でもほら、あそこに何か光る石があるよ。」
空間の先に紫色に光る大きな塊があった。
「アメジストかな?きれいだね。」
ツキはぴょんと洞窟の中へ飛び降りてしまった。
「ツキ!危ないかもよ!何か出てくるかもよ!!」
「レティはそこで待ってていいよ。」
ツキはすごいスピードでアメジストのところまで行くとまわりを削り出した。
レティシアはまわりを光で照らし、物音がないか神経を集中させた。
グルルッという何かの唸り声が聞こえた。
「ツキ!何かいる!!」
レティシアは驚いて《ツキを守って》と祈った。
ツキはぼんやりと光り、その瞬間唸っていた何かがツキへと飛びかかった。
ツキは反応して避けようとしたが、その前に飛びかかってきた何かは見えない何かにぶつかって自滅してしまった。
レティシアはすぐにツキのところに駆け寄った。
「大丈夫?怪我はない??」
「うん、やっつける前に死んじゃったみたい。」
見ると狼のような獣がそこで息絶えていた。
ツキは獣を風魔法で浮かせて喉を切った。
「血抜きしなさいってカイが言ってた。」
レティシアはなんだか見ていられなくなって目を逸らした。
「仲間がいるかもしれないから、もう帰ろう。」
ツキは獣をカバンにしまいながら「わかった」と言って掘っていたアメジストも岩から剥がしてカバンに入れた。
「そんな大きなものも入るなんて本当にすごいカバンだよね。」
「うん、便利だね。」
レティシアは改めてツキのチート能力がすごいと思った。
《ポンコツの私には使いこなせそうにないけど》
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レティシアたちが家に帰るとカイも帰って来ていた。馬での移動はとても快適らしい。
ツキはすぐにカイにさっきの獣をカバンから出して見せた。
「こいつは…二人とも噛まれてないか?」
カイは険しい顔になり、二人は首を横に振った。
「そうか、こいつは毒を持ってるんだ。」
そう言うとカイは革の手袋をはめて小さな瓶を獣の口に当てた。
「ここに毒の袋があるんだ。噛まれると毒にやられるんだよ。」
そう説明しながら毒を絞って瓶に入れた。
「なかなか貴重な素材だよ!大きな町なら売れるかもしれない。」
カイは嬉しそうに瓶に入った黄色い液体を眺めた。
ケリーは「食べるところはなさそうね」と残念そうに魔石だけ回収していた。
毛皮は硬くて使えそうにない。
ツキはいつものように燃やして灰にした。
これが野菜の肥料になるのだそうだ。
獣が一段落したのでツキはカバンからアメジストの塊を取り出した。
それはまん丸でキレイな紫色だった。
「これは見事だな…。」
みんなは初めて見るようで叩いたり匂いを嗅いだりした。
レティシアの記憶が正しければ割ると中から結晶のようなものが取れる。
「パカンと割りたい。」
レティシアがそう言うとみんなはビックリした。
「二人が採ってきたから、二人がいいなら好きにしたらいいよ。」
カイは興味深そうにアメジストを眺めながらそう言った。
ツキは頷いて、アメジストの塊の真ん中をチョップした。
するとパカッと割れた。
「わぁ!!」
中は想像以上に輝いていた。
「割ってみるもんだな。」
カイはうんうんと感心していた。
「レティ、ツキ、すごいね!とってもきれいだね!」
ルルはすっかり魅了されていた。
「ルルにあげる。」
ツキがそう言うとレティシアもうんうんと頷いた。
「え?いいの??でも売れるなら売ってもいいんじゃないかな?」
ルルは困惑した表情になった。
「パカンってしたから、2個あるし、1個売って1個ルルのにしたらいいよ。」
「もらっておきなさい。」
ケリーもアメジストが気に入ったようだった。
「次に大きな町に行くときに片方持っていって売れるか試そう。」
カイがそう言うとみんなは納得したようで、1つは家に置いておくことになった。
「二人とも、ステキなプレゼントをありがとう。」
ルルは二人の頭をくしゃくしゃと撫でた。
二人は目を合わせクスッと笑った。
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