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第11話

レティシアたちはトンネルで採掘を続けていた。

ルルが掘っていた鉄の鉱脈は掘りきってしまったようで、そこだけ丸く部屋のようになっていた。

カイは町に偵察に行くと言って出ていった。

元隠密のカイだから町の人に怪しまれずに見てこられるだろう。


ケリーは採掘に飽きたようで家で畑の手入れをしている。

レティシアとツキはルルのために新しい鉱脈を探していた。

レティシアはトンネルの壁に両手をあてて目を閉じた。

「何してるの?レティ。」

ルルは不思議そうにレティシアを見ていた。

「何かいいものを感じ取るんだって。」

ツキは少しクスッと笑いながらルルに答えた。


「魔力を流してね、異変を感じ取ってるの。」

レティシアは真面目な顔をしてそう言った。

二人はレティシアが真剣なものだから茶化さずに見守ることにした。


「何かあるわ!光ってる気がする!!」

レティシアは目を輝かせて二人の方を振り返って見た。

ツキはレティシアが言う方向を土魔法で掘ってみることにした。

メリメリと岩は砕かれ、砂のようになっていく。それを風魔法で鉄の鉱脈があった部屋に運ぶ。

「いいなぁ、魔法。」

ルルはマメだらけになった両手を見てそう言った。

レティシアはルルの手がひどいことになっているのに気がつかなかった。

「ルル!私に任せて!」

レティシアはルルの両手を取り、目を閉じた。

ルルの手にあったマメはみるみるうちになくなった。

「ありがとう、レティ!」

ルルはレティシアの頭をグリグリと撫でた。


「あっ。何かあるみたい。」

ツキは一度掘るのを止めた。

3人はツキの言う何かまでやってきた。

それは鉄よりも黒く、硬いものだった。

「これなんだろう?」

ルルにもその正体はわからず、とりあえずツルハシで掘ってみることにした。


ルルは勢いよくツルハシを振り上げた。

バキッという音がして黒いものに当たったツルハシはポキっと折れてしまった。

「痛いっ」

ぶつかった衝撃を受けたルルは手をさすっていた。

すぐにレティシアが駆けつけて回復魔法をかけた。

「なんだろう?鉄よりもずっと硬いみたい。」

ツキは土魔法で崩せないかやってみたがうまくいかなかった。


「とりあえずまわりを掘ってみるよ。」

ツキはそう言って黒い鉱石のまわりを上手に掘り進めた。

それは思ったよりも平べったくて、目玉焼きみたいとレティシアは思った。

真っ黒でそれほど大きなものでもない。


「なんだか暑くない?」

ルルは額に汗をかいていることに気がついた。

レティシアはなんだか嫌な予感がした。

「もしかしたら近くにマグマがあるのかも。」

「マグマ?」

ルルもマグマを知らなかった。

3人はとりあえずここを離れることにした。

黒い石はとても重かったがなんとかカバンに入れることができた。


「さっきの場所、あのまま掘っていたら大変なことになっていたかも。山って元々火山が噴火してできてたりするでしょ?」

レティシアがそう言っても二人ともちんぷんかんぷんという様子だった。

「とにかく山の真ん中には熱くてドロドロした何かが眠っていることがあるのよ。それが目覚めると噴火を起こしたりするわ。」

「噴火ね!それならわかるわ!火柱が上がって灰を降らせるやつね。聞いたことがあるわ。」

ルルがそう言い、レティシアはうんうんと頷いた。

「あそこはあれ以上掘らないほうがいいってことね。」

ツキはまだよくわかっていないようだったが「わかった」と言って頷いていた。


外で休憩しているとカイが笑顔で戻ってきた。

「町の様子を聞かせたいから一度帰ろうか。」

お土産を期待していたレティシアはカイが手ぶらで戻ってきたのでがっかりした。


────


「山の向こうの町はなかなか大きな町だったよ。あの町から西に行ったところに住んでいるお貴族様の領地なんだそうだ。」

早めの夕食を囲みながらカイはみんなに町の様子を聞かせていた。


「たくさん店が並んでいたが、鉄を買い取ってくれそうな店はなかったよ。」

みんなそれを聞いてがっかりした。みんなは鉄で一攫千金の夢を見ていたからだ。

「それでな、町の人に聞いてみたんだ。そしたらその貴族の領主が住んでる町に行けば鍛冶屋があるって。歩きで一日ちょっとの場所にあるらしい。馬車なら半日で行けるってさ。」

それを聞いてケリーはタンスの中の財布の中を見た。

「4人分の馬車の運賃にはきっと足りないわね。行くならここにある野菜を売ってお金にしないと。」

「野菜ならすぐに売れるだろう。路上で物を売る人もたくさんいたしな。」


こうしてレティシアたちに「野菜を売ったお金で領主のいる町まで行く」という新しい目標ができた。


────


早朝から総動員で野菜を収穫した。

ケリーは今まで解体した獣や魔物の毛皮をカバンに詰めていた。

冬まで使いみちがなくて家の中でも邪魔だったから売れると助かると言った。


みんなで準備をしてすぐにトンネルに向かった。

カイ以外はトンネルの向こう側に出たことはない。

出口につくとカイは慎重に向こう側の気配を探った。

誰かに見られると面倒なことになりそうだからだ。

何事もなくみんなは外に出た。カイは手慣れた手つきで岩や枝で出口を隠した。


出口は本当に崖の途中のような場所だった。

ツキは歩きやすいように地面を少し削り、スロープのようにしてくれた。

一同は慎重に、かつ素早く山を降りた。

降りた先は木がポツポツ生えているだけの荒れた土地だった。

食べられそうなものも生えていなかったので人間がわざわざ来る場所ではないようだった。


「こっちに進むと麓をぐるっと回る道に繋がっているよ。」

カイに案内されてみんなは静かに道まで進んだ。

まだ朝も早く、薄暗かった。歩く人もいない。

道まで来るとカイはカバンから荷車を取り出した。

「売り物を乗せていくぞ。」

行商人を装う作戦らしい。

新鮮な野菜と剥ぎ取った毛皮を並べた。

あとは町に行くだけだった。


────


町には塀もなく、誰でも自由に入れるようだった。

路上では売り物を並べている人がちらほらいた。

カイは一番奥の目立たない場所を陣取った。

「こんな奥でいいの?」

ルルが心配そうに聞くと、「場所取りだなんだで揉めたくないだろう。」と答えた。

新参者に対する町の人の出方がわからないから目立たないほうがいいのだろう。


売り場はケリーとルルに任せることにした。大人数でいても目立ってしまうだろうとカイの提案だった。

カイとレティシアとツキは町の中を探検することにした。


まだ朝も早いので人もまばらだった。

露店の準備を始める人たちが大きな通りに集まってきている。

食べ物や衣類、装飾品や魔導具を売る店もあるようだった。

レティシアは初めての町で興奮を抑えるのが大変だった。

前世の記憶にないものばかりがそこにあるからだった。


建物はそのほとんどが石レンガのようなものを積み上げて作っているように見えた。

映画やアニメでも観ているような、海外旅行でもしているような、不思議な感じがした。


レティシアは普段気にしていなかったが、改めてカイを見ると着ているものも上等で立ち振る舞いも品があることに気がついた。

きっと城での任務のために教育を受けていたのだろう。隠密といえばレティシアの前世の記憶で言うならばスパイだ。

いろんな場所に潜入していろんな役を演じたに違いない。

たった今、目の前にいるカイはいつもの陽気なおじさんではなく、存在感を消したそこら辺にいそうなおじさんだった。

レティシアも騒ぐことなく、カイの邪魔をしないように静かについて回った。それはツキも同じようだった。


3人は町の賑やかな場所をひと通り見終わり、小さな庭のような公園のような場所にやって来た。

きれいな花壇が整備されていて、ベンチがある。

大きな井戸があるのでもしかしたらこの町の社交の場なのかもしれない。


まわりに人がいないことを確かめてから小さな声でレティシアはカイに話しかけた。

「お金が少し余ったら、さっき売っていたリンゴに飴がかかったやつを買ってもいい?」

露店の中に甘いものを売る店が数軒あった。

カイは笑いながら「もちろん、いつも頑張ってる二人に好きな物を買おう」と言ってくれた。

「私はお魚の焼いたやつがいい!」

珍しくツキも欲しいものを言った。いつもなら「いらない」とか言う、物欲のないツキだったからカイは嬉しそうに「なかなかいいセンスだね」と笑った。


昼前にはケリーたちが合流した。

「この辺りでは珍しいものばかりだったみたいで、すぐに売り切れちゃったわ。」

ケリーはニヤニヤしながら小袋のお金を見せてくれた。

「馬車の料金を払ってもたくさん残りそうだね。レティの飴とツキの魚を買いに行こうか。」

カイはそう言って二人の頭を撫でた。二人は小さな声で「やった!」と喜んだ。


こうして5人は昼過ぎには馬車に乗り込んでいた。

隣の町「タル」には夜に着くということだった。


────



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