表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『残響の夜に、断れなかった』  作者: こうた
第2章「朝が裁かれる」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
54/123

第24話「判決前の静止」

判決の日の朝は、異様に静かだった。



---


いつもの裁判所前のざわつきも薄い。



---



---


相沢は早く着きすぎていた。



---



---


ベンチに座る。



---



---


手は冷たいのに、頭だけが熱い。



---



---



---


もう考えることはないはずなのに、


考えが止まらない。



---



---



---


“あの夜”



---



---


その言葉だけが何度も浮かぶ。



---



---



---


だがもう、夜そのものは関係ない。



---



---


残っているのは、


切り取られた行動だけだ。



---



---



---


弁護士が隣に座る。



---



---


いつもより言葉が少ない。



---



---



---


「判決は……ほぼ固まっています」



---



---



---


その言い方は優しさではない。



---



---


予測だ。



---



---



---


相沢は小さく頷く。



---



---



---


「情状の余地は?」



---



---



---


弁護士は少しだけ目を伏せる。



---



---



---


「供述は一定の酌量材料にはなります」



---



---



---


「ただし……」



---



---



---


そこで止まる。



---



---



---


その“ただし”がすべてを含んでいる。



---



---



---


相沢は聞かない。



---



---



---


もう聞く必要がないことも分かっている。



---



---



---


法廷の扉が開く時間が近づく。



---



---



---


外から人の気配。



---



---



---


被害者家族が来ているのが分かる。



---



---



---


今日の空気は、昨日までと違う。



---



---



---


“終わる日”の空気だ。



---



---



---


相沢は一度だけ目を閉じる。



---



---



---


思い出すのは、


笑っていた夜ではない。



---



---



---


止めなかった瞬間でもない。



---



---



---


むしろその間の、


曖昧な沈黙の連続だった。



---



---



---


誰かが言うと思った。



---



---


自分が言わなくてもいいと思った。



---



---



---


その積み重ね。



---



---



---


それが今ここにある。



---



---



---


呼び出しがかかる。



---



---



---


「入廷してください」



---



---



---


その声で立ち上がる。



---



---



---


足は動く。



---



---


もう迷いはない。



---



---



---


法廷に入る。



---



---



---


空気は昨日よりさらに冷たい。



---



---



---


被害者家族が座っている。



---



---


表情は変わらない。



---



---



---


裁判官が入る。



---



---



---


静かに開廷が告げられる。



---



---



---


検察も弁護人も立たない。



---



---



---


すべては終わっている状態だった。



---



---



---


裁判官が書類をめくる音だけが響く。



---



---



---


相沢は被告席に座る。



---



---



---


もう何も起こらない気がするのに、


心臓だけが少し早い。



---



---



---


「判決を言い渡します」



---



---



---


その瞬間、


空気が完全に固定される。



---



---



---


裁判官の声は淡々としている。



---



---



---


事実が読み上げられる。



---



---


飲酒。



---


運転。



---


事故。



---



---



---


そして最後に、


少し間が空く。



---



---



---


「被告人を……」



---



---



---


その先の言葉だけが、


世界から切り離される。



---



---



---


相沢はその瞬間、


初めて“結果”というものの重さを知る。



---



---



---


それは痛みではなく、


確定だった。



---



---



---


判決の言葉が落ちる。



---



---



---


法廷の中で、


誰も動かない。



---



---



---


被害者家族も、


弁護士も、


検察も。



---



---



---


ただ一つの時間だけが、


そこに残る。



---



---



---


相沢はゆっくりと目を閉じる。



---



---



---


終わったのではない。



---



---



---


“始まりが固定された”だけだと理解する。



---



---



---


そして次に来るのは、


人生ではなく“期間”だということも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ