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『残響の夜に、断れなかった』  作者: こうた
第2章「朝が裁かれる」

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第18話「証人という分岐」

裁判所から届いた通知は、思っていたより簡素だった。



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「証人出廷依頼」



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その一枚で、関係がもう一段階変わる。



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相沢ではない。



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“周囲”が呼ばれ始めている。



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最初に動いたのは健だった。



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電話ではなく、短いメッセージ。



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> 「証人で呼ばれた」





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それだけ。



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次に隆。



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> 「行くけど、何話せばいいんだ」





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直樹は一言。



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> 「事実しか話さない」





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翔は既読だけ。



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優斗は何もない。



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相沢はその画面を見て、


少しだけ理解する。



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“同じ夜”は、


もう存在していない。



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代わりにあるのは、


それぞれの裁判用の記憶だ。



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数日後。



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相沢は弁護士から説明を受ける。



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「証人はそれぞれ別の立場になります」



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「あなたに有利とは限りません」



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その言葉は現実的だった。



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「特に重要なのは健さんです」



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相沢は少しだけ視線を上げる。



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「彼の発言で“空気の強制性”がどう評価されるかが変わります」



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空気。



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あの夜ずっと存在していたもの。



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でも、それは証明しづらい。



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弁護士は続ける。



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「逆に、他の証言はあなたの“主体性”を強める可能性もあります」



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相沢は黙る。



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誰も完全には助けない。



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誰も完全には敵でもない。



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ただ、


それぞれが自分の立場を守るだけだ。



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そしてその結果、


中心に残るのは一人になる。



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裁判の日程が読み上げられる。



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その瞬間、


時間が固定される。



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「その日までは準備期間です」



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弁護士の声が遠い。



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相沢は思う。



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準備とは何をする時間なのか。



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言い訳か。



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記憶か。



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整理か。



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でもどれも違う気がする。



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ただ一つだけ分かる。



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その日から、


自分は“人生を説明する側”になる。

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