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『残響の夜に、断れなかった』  作者: こうた
第2章「朝が裁かれる」

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第15話「線引きの会議」

会社の会議室は、すでに別の案件で使われていた。



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そのため今回は、より小さな応接スペースに集められている。



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机の配置が近い分、距離感が妙に生々しい。



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相沢の名前は、もうそこにない。



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代わりに資料のタイトルだけがある。



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> 元従業員・事故関連報告





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「では、社内対応の最終整理に入ります」



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総務が淡々と始める。



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誰も相沢のことを“本人”として扱わない。



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「すでに懲戒解雇は確定しています」



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その確認は、儀式のように繰り返される。



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次に安全管理責任者が言う。



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「再発防止策として、飲酒関連の注意喚起を強化します」



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誰かが小さく頷く。



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それは“組織の問題”へ変換する作業だ。



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上司は黙っている。



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だが資料を見ている視線だけは、わずかに重い。



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「現場での指導記録は残っていますか?」



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誰かが聞く。



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「はい。ただし最終的には本人判断の領域です」



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その言葉で、


線引きが確定する。



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会社は“関与したが責任はない”という位置に立つ。



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そのために必要なのは、


個人の側に線を引くことだった。



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「今後の対応ですが」



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広報担当が言う。



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「会社名の公表は限定的にします」



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「ただし事実関係については、否定しません」



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つまり、


切り離すが隠さない。



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それは防御でもあり、


責任の分散でもある。



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上司が一度だけ口を開く。



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「……彼は、現場では真面目でした」



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その言葉は評価ではなく、


整理のための過去形だった。



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誰もそれ以上は続けない。



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会議は終わる。



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椅子が引かれる音。



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書類が閉じられる音。



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そこにはもう、


相沢という“人間”は存在していない。



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ただのリスク事例として、


処理された後の空白が残るだけだった。



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廊下に出ると、


窓から光が差している。



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普通の昼。



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何も壊れていない世界。



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だが会議室の中だけは、


確実に何かが切り離されていた。



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相沢はまだ拘束されていない。



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それでもすでに、


社会的には“切断済み”だった。

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