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『残響の夜に、断れなかった』  作者: こうた
第2章「朝が裁かれる」

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第14話「残る側の論理」

呼び出しは、また警察からだった。



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今度は取り調べというより、「整理確認」に近い。



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部屋に入ると、机の上には新しい束が置かれている。



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相沢はそれを見て、もう驚かない。



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「これは同席者の追加供述です」



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警察官は淡々と言う。



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紙が一枚ずつめくられる。



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そこには同じ夜が、少しずつ別の形で並んでいる。



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「止めた記憶はあるが強くは言っていない」


「止める流れではなかった」


「帰る判断は本人にあった」




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相沢はそれを見て、少しだけ目を閉じる。



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“本人にあった”



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その言葉だけが妙に浮く。



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警察官が言う。



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「供述は概ね一致しています」



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相沢は小さく息を吐く。



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一致。



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それは事実の一致ではない。



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“責任の整合”だ。



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「結果として、あなたの単独行動の側面が強くなります」



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その言葉で、静かに確定していく。



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誰も嘘をついていない。



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ただ、


誰も“全部は言っていない”。



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その積み重ねが、


相沢だけを残していく。



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「他の方々は、協力的です」



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警察官は続ける。



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その言葉は事務的だが意味は重い。



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“協力的”



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それは、


自分を守るために距離を取ることだ。



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相沢は理解する。



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友人たちは消えたのではない。



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立場を変えただけだ。



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「あなたはどうしますか?」



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その問いが来る。



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どうする。



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今さら何ができるのか分からない。



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沈黙。



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警察官はそれ以上聞かない。



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ただ資料を閉じる。



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「次回は検察に移ります」



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その一言で、この段階が終わる。



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廊下に出る。



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空気が少し軽い。



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しかしそれは、


終わったからではない。



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“次へ進むための空白”だ。



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相沢は歩きながら思う。



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人は悪意がなくても、


距離を取ることで生き残る。



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その結果、


一番明確な人間だけが残る。



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それが今の自分だ。

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