第14話「残る側の論理」
呼び出しは、また警察からだった。
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今度は取り調べというより、「整理確認」に近い。
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部屋に入ると、机の上には新しい束が置かれている。
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相沢はそれを見て、もう驚かない。
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「これは同席者の追加供述です」
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警察官は淡々と言う。
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紙が一枚ずつめくられる。
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そこには同じ夜が、少しずつ別の形で並んでいる。
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「止めた記憶はあるが強くは言っていない」
「止める流れではなかった」
「帰る判断は本人にあった」
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相沢はそれを見て、少しだけ目を閉じる。
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“本人にあった”
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その言葉だけが妙に浮く。
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警察官が言う。
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「供述は概ね一致しています」
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相沢は小さく息を吐く。
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一致。
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それは事実の一致ではない。
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“責任の整合”だ。
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「結果として、あなたの単独行動の側面が強くなります」
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その言葉で、静かに確定していく。
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誰も嘘をついていない。
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ただ、
誰も“全部は言っていない”。
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その積み重ねが、
相沢だけを残していく。
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「他の方々は、協力的です」
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警察官は続ける。
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その言葉は事務的だが意味は重い。
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“協力的”
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それは、
自分を守るために距離を取ることだ。
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相沢は理解する。
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友人たちは消えたのではない。
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立場を変えただけだ。
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「あなたはどうしますか?」
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その問いが来る。
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どうする。
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今さら何ができるのか分からない。
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沈黙。
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警察官はそれ以上聞かない。
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ただ資料を閉じる。
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「次回は検察に移ります」
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その一言で、この段階が終わる。
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廊下に出る。
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空気が少し軽い。
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しかしそれは、
終わったからではない。
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“次へ進むための空白”だ。
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相沢は歩きながら思う。
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人は悪意がなくても、
距離を取ることで生き残る。
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その結果、
一番明確な人間だけが残る。
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それが今の自分だ。




