第13話「友の消え方」
スマホは、もう鳴らなかった。
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鳴らなくなったことに気づいた時、相沢は少しだけ遅れて理解する。
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“止まった”のではない。
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“止められた”のでもない。
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“必要がなくなった”だけだ。
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部屋の中は静かだった。
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外の音だけが遠くにある。
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時間が、薄く伸びている。
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そのとき、画面が一度だけ光る。
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知らない番号ではない。
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直樹からだった。
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通話を開く。
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「……もしもし」
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少し間が空く。
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直樹の声は以前よりさらに淡い。
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「警察、また来た」
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相沢は黙る。
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「俺らのことも、結構細かく聞いてる」
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その言葉で理解する。
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関係はもう“参考情報”になっている。
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「俺はさ」
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直樹が続ける。
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「正直に出しただけなんだよ」
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言い訳ではない。
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整理だ。
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「でも、結果的にさ」
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少し間が空く。
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「お前だけが、はっきり残る形になってる」
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その言葉は優しさではない。
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事実の説明だった。
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相沢は少しだけ目を閉じる。
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「……そうか」
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直樹はそれ以上言わない。
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そして静かに付け加える。
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「もう、普通には戻れないと思う」
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通話が切れる。
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次に鳴ることはない気がした。
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その夜、相沢はふと昔の飲み会を思い出す。
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笑っていた。
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声が大きかった。
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誰かがいつも隣にいた。
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でも今思うと、
誰も“隣にい続けたわけではない”。
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ただ“その場にいた”だけだ。
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責任が発生した瞬間、
人は順番にいなくなる。
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翌日。
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メッセージはもう増えない。
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通知も減っていく。
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代わりに残るのは、
静かな既読の履歴だけだ。
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相沢は理解する。
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これは裏切りではない。
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社会的な自然現象だ。
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関係は壊れたのではない。
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“維持できなくなった”だけ。
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そして最後に残るのは、
一人の名前だけになる。




