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『残響の夜に、断れなかった』  作者: こうた
第2章「朝が裁かれる」

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第10話「証拠の重さ」

警察署からの呼び出しは、事務的だった。



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「補足確認があります」



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それだけ。



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相沢は再び同じ部屋に入る。



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もう驚きはない。



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机の上には、追加の資料が置かれていた。



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「新しく入手した映像です」



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警察官の声は淡々としている。



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モニターがつく。



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そこに映っていたのは、


交差点の少し前の映像だった。



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車内。



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相沢の車。



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画面の中の自分は、


ぼんやりしている。



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助手席には誰かがいる。



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後部座席にも人がいる。



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笑っている。



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音声はない。



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だが雰囲気は分かる。



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“普通の夜”だ。



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警察官が言う。



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「この時点で、すでに相当量の飲酒状態と判断されています」



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相沢は画面を見続ける。



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自分の顔がそこにあるのに、


他人のように見える。



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「この後、運転に至った経緯を説明してください」



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相沢は少し黙る。



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経緯。



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その言葉が重い。



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経緯はない。



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ただ流れがあった。



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「……気づいたら、運転していました」



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警察官はメモを取る。



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「その“気づいたら”は、誰の意思ですか?」



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相沢は答えられない。



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沈黙。



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その間に、


映像の中の車は進んでいく。



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ゆっくりと、


確実に。



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「同席者は止めましたか?」



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その質問に、


相沢は少しだけ視線を落とす。



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“止めたか”



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思い出そうとする。



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でも浮かぶのは曖昧な声だけだ。



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「やめとけよ」



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「まあ大丈夫だろ」



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笑い。



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どれが本気だったのか分からない。



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「……覚えていません」



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また同じ答え。



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警察官は一度だけ息を吐く。



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そして言う。



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「重要なのは記憶ではありません」



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「行動です」



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その言葉で、


空気が少し固くなる。



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相沢は理解する。



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ここでは、


“曖昧な人間”は存在できない。



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曖昧さはすべて、


責任の隙間になる。



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そしてその隙間は、


埋められていく。



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映像が止まる。



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画面が暗くなる。



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静か。



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「これで、あなたの行動は時系列として確定します」



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その言葉は、


宣告ではない。



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整理だった。



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相沢は椅子に座ったまま動かない。



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自分の中の“夜”が、


完全に外に取り出された気がした。



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もう自分の記憶ではない。



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社会の記録だ。



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そしてその記録は、


もう修正できない形になっている。

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