第7話「空席になる関係」
ニュースが出てから、世界の反応は早かった。
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しかし一番早かったのは、人ではなく“関係の消失”だった。
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スマホが鳴る。
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着信は、健からだった。
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一瞬止まる。
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出るかどうか迷う時間すら短く感じる。
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通話ボタンを押す。
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「……おう」
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健の声は、いつもより少し軽い。
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だがその軽さは、意図的なものだった。
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「見たわ、ニュース」
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相沢は何も言えない。
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「まぁ……大変やな」
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少し間が空く。
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その“間”がすべてを変える。
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「でさ」
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健が続ける。
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「俺らも、ちょっとまずいことなっててさ」
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その言葉で空気が変わる。
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「警察から連絡来たわ」
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相沢の手が少し止まる。
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「“同席者”としてな」
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それは予想していたはずの言葉なのに、
現実になると重さが違う。
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「別に俺は普通に話しただけやで」
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健は笑うように言う。
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だがその笑いは弱い。
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「ただな」
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少し声が落ちる。
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「もう今までみたいには無理やと思うわ」
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その一言で分かる。
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関係が切られている。
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でも直接切るのではない。
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“距離を取る形で切る”。
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「また落ち着いたらな」
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健はそう言って通話を切る。
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次に鳴るのは隆だった。
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短い。
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「すまん」
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それだけ。
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そして直樹。
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「必要なら証言は協力する」
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ただそれだけ。
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翔は電話に出ない。
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優斗はメッセージだけ。
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> 「ごめん。今は何も言えない」
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相沢はスマホを置く。
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部屋が静かになる。
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たった一晩で、
“いつものメンバー”は消えた。
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正確には消えていない。
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だがもう、
同じ場所にはいない。
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相沢は理解する。
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これは裏切りではない。
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防衛だ。
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人は責任が現れると、
関係を“薄くする”ことで生き残る。
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机の上に、
昔の写真がある。
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笑っている5人。
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もう戻らない構図。
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相沢はその写真を見て、
何も感じなくなる。
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感情ではなく、
記録だけが残る。
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そして初めて気づく。
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自分は事故を起こしたのではない。
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“関係の維持構造”ごと壊したのだと。
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