表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『残響の夜に、断れなかった』  作者: こうた
第1章 「いつもの席」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/46

第3話「飲まない理由が消えていく夜」

店の空気は、少しずつ熱を帯びていく。


最初の「一杯だけ」という言葉は、もう誰の記憶にも残っていない。


テーブルの上には空き瓶が増え、灰皿には吸い殻が山のように積まれていた。



---


「相沢さ、最近ちょっと弱くなってない?」


健が笑いながら言う。


「昔はもっといけてたよな?」



---


相沢はグラスを見たまま答えない。


喉の奥が重い。体はもう十分に酒を受け付けていない。


それでも、止める理由が言葉にならない。



---


「ほら、飲めば戻るって」


隆が当然のように言う。


「弱くなってるだけだろ」



---


その言葉が、妙に刺さる。



---


翔が笑いながら続ける。


「お前さ、会社行ってると真面目ぶるけど、ここでは違うだろ?」



---


直樹が頷く。


「社会人ならこれくらい普通だぞ」



---


“普通”


その言葉が、この場ではルールになっている。



---


相沢はふと気づく。


飲まない理由は、もういくつもあったはずだ。


明日の仕事


体調


会社の注意


母のメッセージ




---


でも、その全部が少しずつ薄れていく。


この場所では、理由は意味を持たない。



---


「なぁ、次どうする?」


誰かが言う。


「まだいけるだろ」


「もう一軒だな」



---


当然のように決まっていく。


誰も疑わない。



---


相沢はスマホを見る。


画面は暗いまま。


返していないメッセージが増えていく。



---


「相沢、行くぞ」


肩を軽く叩かれる。



---


その瞬間、また“断る理由”が消える。



---


「……ああ」


小さくうなずく。



---


それが、今日も流される合図になる。



---


店の外はまだ静かだった。


しかしこの夜は、まだ終わる気配がない。



---

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ