第24話「笑っているだけの夜」
店を出る頃には、街は完全に夜へ戻っていた。
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ネオン。
車のライト。
酔った人間たちの笑い声。
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昼を越えて、また夜。
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相沢はその流れの中を、少し遅れて歩いている。
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「次カラオケ行くか?」
健が笑う。
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「いいな」
隆が即答する。
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翔は眠そうにしながらも笑っている。
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直樹はスマホで店を探す。
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優斗は無言。
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誰も帰る話をしない。
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もうそれが当たり前になっている。
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相沢は歩きながら、ふと周囲を見る。
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楽しそうな若い集団。
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カップル。
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終電へ急ぐ人。
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みんな、
ちゃんと“終わり”へ向かっている。
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でも自分たちは違う。
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終わらせ方が分からない。
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気づけば、
ずっと“続き”だけを繰り返している。
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カラオケ店に入る。
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明るい受付。
安っぽい笑顔。
夜特有の騒がしさ。
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部屋に入ると、
また同じ空気が始まる。
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酒。
大声。
笑い。
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健がマイクを持つ。
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隆が煽る。
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翔が笑う。
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直樹が動画を撮る。
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優斗は隅で酒を飲んでいる。
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相沢はソファに沈み込む。
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もう体力が限界に近い。
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でも帰ると言えない。
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「相沢、歌えよ」
健がマイクを向ける。
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「いや、いいって……」
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「ノリ悪」
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笑い声。
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その言葉だけで、
また断れなくなる。
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相沢はマイクを受け取る。
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曲が始まる。
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でも歌詞が頭に入らない。
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声も少し震えている。
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それでも周りは笑っている。
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“楽しそう”だった。
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でも相沢には、
それがどこか空っぽに見えた。
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笑っているだけ。
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騒いでいるだけ。
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未来の話はない。
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新しい話もない。
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ずっと昔の話。
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ギャンブル。
酒。
地元の知り合い。
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同じ話を、
何年も繰り返している。
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ふと、
店内のモニターにニュース速報が流れる。
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交通事故のニュース。
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飲酒運転の特集。
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一瞬だけ、相沢の視線が止まる。
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『飲酒運転は重大な犯罪です』
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その言葉が妙に耳に残る。
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だが。
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「うわ、説教番組始まった」
健が笑う。
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「こういうの見ると逆に飲みたくなるわ」
隆が続ける。
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笑い声。
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その空気に押されるように、
相沢も小さく笑ってしまう。
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でも心の奥では、
何かが重く沈んでいた。
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“俺もいつか……”
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そこまで考えて、
思考を止める。
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考えたくなかった。
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だからまた酒を飲む。
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考えなくて済むように。
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そして夜は、
まだ終わらない。
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