表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『残響の夜に、断れなかった』  作者: こうた
第1章 「いつもの席」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/58

第21話「抜け出す想像ができない」

店の奥では、知らない客たちが笑っていた。



---


その笑い声に混ざるように、


隆たちの声も響いている。



---



---


「相沢、死んでんじゃね?」


健が笑いながら言う。



---


「朝からいるもんな」


翔も笑う。



---


「いや、昨日の夜からだろ」


直樹が訂正する。



---



---


“昨日の夜から”



---


その言葉が、妙に遠く聞こえる。



---



---


相沢はグラスを見つめたまま動かない。



---



---


時間感覚が崩れている。



---



---


もう何時間飲んでいるのか、


正確には分からない。



---



---


体は明らかに限界に近い。



---


それでも帰ろうとしない自分がいる。



---



---


いや。



---


正確には、


“帰る方法が分からない”。



---



---



---


昔はこんなじゃなかった気がする。



---



---


20代の頃は、


もっと軽かった。



---



---


仕事もまだ始まったばかりで、


未来がある気がしていた。



---



---


資格を取れば昇進できると思っていた。



---


結婚も、


家も、


普通に手に入ると思っていた。



---



---


でも気づけば35歳になっていた。



---



---


何も変わっていない。



---



---


変わったのは、


周りだけだった。



---



---


後輩たちは資格を取った。



---


結婚した。



---


家を買った。



---


子どもができた。



---



---


それなのに自分は、


まだ同じメンバーで、


同じ店で、


同じ酒を飲んでいる。



---



---



---


「相沢?」


隆の声。



---



---


「何考えてんだ?」



---



---


相沢は少し笑う。



---



---


「別に」



---



---


嘘だった。



---



---


本当は、


ずっと考えている。



---



---


“このままでいいのか”



---



---


でも答えを出せない。



---



---


出した瞬間、


今の場所を失う気がするから。



---



---



---


「ほら飲めって」


健がグラスを押し出す。



---



---


「まだいけるだろ」



---



---


その言葉に、


また手が伸びる。



---



---


断ればいい。



---



---


でも断ったあとの空気が怖い。



---



---


“ノリ悪い”



---


“最近付き合い悪い”



---



---


その言葉だけで、


ここから外される気がする。



---



---



---


相沢はグラスを持つ。



---



---


少しだけ震えている。



---



---


それを誰も見ていない。



---



---


いや、


見ても気にしない。



---



---



---


外では夕方が近づいていた。



---



---


昼が終わり始めている。



---



---


つまり、


また“夜”が来る。



---



---


相沢はふと思う。



---



---


“また飲むのか”



---



---


でも、


その流れを止める人間は、


ここにはいなかった。



---

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ