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盲目少女は転生者  作者: シルクティー


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第八話

「こうして入学式という素敵な日を迎えられたことを嬉しく思う。」


ヴィは今、ステージ上で新入生の代表挨拶をしている。


ついに今日、ゲームが始まってしまった。


ただ困ったことは一つだけ。


目が見えないので、ヒロインがいるのかいないのかわからない。

ヒロイン視点で進んでいく物語、ヒロインには当たり前に声優はついていなかったから、声で認識することが難しい。


どうヒロインを認識してやろうか、頭の中で悶々と考えていると突然右隣から手を握られた。

入学式で私の右隣にすわっているのはヴィ。


「エレ。何か考え事?」


考えすぎていて殿下の挨拶が終わったことに気づけなかった。


「いえ。何でもありません。それに、式もまだ終わってませんよ。」


式が粛々と進んでいく中、小声で殿下に私語は抑えるように嗜める。

理解したのかはわからないが、殿下がそれ以上話しかけてくることはなかった。


手だけは離してくれなかったけど。

私語を嗜めた手前、私もさらに諌めることができないので受け入れていた。

今ここで諌めたところで、「式の最中だよ。」と同じことを言われる未来が見えている。


「以上を持ちまして、王立学園の入学式を閉会いたします。」


式が終わると、新入生に案内が入る。


「さ、エレ。教室に行こうか。」


私たちのクラスはAクラス。

クラスメイトには側近たちとその婚約者たちもいるため、とても楽しみ。


「リリアナ様たちも同じクラスですし、楽しみですわ。ほかにもお友達ができると嬉しいのですが・・・」

「これ以上必要かい?エレが楽しそうなのは嬉しいが、私以外と仲良くしているところを見るのは面白くない。」


いつまで経ってもわたしの交友関係が広がることはなかなか許容し難いらしい。


「エレオノーラ様、こちらですわ。」

「リリアナ様の声ですね。」


教室に入った途端に私を呼ぶ声。


「エレオノーラ様、わたくしたち、みんな席も近いんですよ。」

「まあ、本当ですか。楽しい学園生活になりそうで、楽しみですわ。」


私たちの席は教室の中央前方に固められているらしい。


教壇の目の前には殿下、そして、その左横には私。

私たちの左右にはリリアナとアレク。

そして、後ろにはそのほかの側近の方達と婚約者のみんなが固まっている。


「エレオノーラ様、後ろには私とドリウス様がいらっしゃいますので、どうぞご安心ください。」

「ああ、お任せください!お二人を守るのが我らの役目です!」


ここは学園だ。


「そんな危険なことは起きませんよ。」

「いえ、何があるかわからないのです。エレオノーラ様を守るのは私の役目です。」


騎士道を極める2人には何を言っても無駄みたい。


「エレ、諦めて。この2人には何を言っても無駄だよ。」


殿下はもうすでに諦めて悟りを開いていた。

一体どんな攻防戦があったのやら。


「ドリウス、うるさい。」


私は聞こえた声にびっくりして振り返った。


声の主はシド。彼はゲームの中でもなかなか声を発しなかった。


これまで、彼の声を聞くタイミングはほとんどなかった。


「ふふ、エレオノーラ様は、シドの声を聞くのは初めてかもしれませんね。」

「ええ、少々驚きました。」

「シドは、屋敷の中では案外おしゃべりなんですよ。」


何やら、婚約者のエリスとはよく会話をされるらしい。


この2人は領地が隣同士で昔から交流があるいわば幼馴染。

シドはエリスに随分心を開いて懐いているらしい。


「さ、そろそろ先生が来るよ。シドなんか見てないでこっちを見てて。」

「なんか、なんて言わないでくださいな。それに、先生が来るならヴィのことも見ませんよ。前を向きましょう。」


ヴィに前を向かせて私も席に座り直す。


「みんな席についてください。HRを始めます」


そう言って入ってきたのは、担任のシルディ先生。

ちなみに、シルディ先生はシリウスの3人いる姉の長女でもある。


「最悪だぁ・・・」


後ろの方からシリウスの項垂れる声が聞こえてきて、クスッと笑ってしまう。


「では、今日はクラスメイトのことを知るために、自己紹介といきましょうか。」


学園初日は典型的なものからスタートした。


でも、おかげでクラスメイトのことを把握することができる。


無闇矢鱈にクラスメイト全員に話しかけに行ってもヴィが面倒くさくなるためだし、何より、ヴィは私から基本的に離れないため、話しかけにいくタイミングもあるかわからない。


王立学園ではあるが、クラス分けは爵位ではなく、入学テストの点数で決まる。

だから、自己紹介を聞いているとちらほらと男爵家と子爵家の方達もいる。


高位貴族であってもAクラスに入るのは簡単ではなく、BクラスやCクラスに入学が決まる貴族もいる。


そんな中、学ぶ機会の少ない男爵家や子爵家がAクラスに入るのは相当努力してるか、真の天才かの二択だ。


「ミア・シュリードです。どうぞ、よろしくお願いいたします。」


可愛らしい、女の子らしい声。

たくさんの人を虜にするであろう声。


シュリード。

王国の南側に小さな領地を持つ男爵家の名前だ。


そして、ゲームのヒロインを養子として迎え入れた家でもある。


ということは、ミアと名乗る彼女が、ヒロインということになる。


何かのイレギュラーでヒロインがクラスにいないことを願っていたんだが、私以外のイレギュラーは今のところないらしい。


「どうしたの?エレ。表情が暗いけど、体調悪い?」

「あ、いえ。何の問題もございませんわ。」


殿下は、ヒロインを見ても何も感じないのだろうか。

声にいつもと違うところは見つからない。


「じゃあ、次はエレオノーラさん。」

「はい。エレオノーラ・ヴォルフルックです。目が見えず、迷惑をかけることがあるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。」


社交の場に出ているものなら、私の目が見えていないことを知っているものがほとんどだ。


「ヴィアノルド・エスペランサだ。あまりエレオノーラにちょっかいは出さないように頼むよ。」


公衆の面前で一体どんなことを言うのかと思えば、これまた爆弾発言を落としてくれたものだ。


「じゃあ、本日はこれで終わりです。気をつけて帰ってくださいね。」


そう言って、シルディ先生は教室を後にした。


「エレ、帰ろうか。アレクたちには王城に来るように言っているから、リリアナ嬢たちとお茶をして待っていてくれるかい?」

「かしこまりました。この間いただいたお茶を皆様に振舞っても?」

「もちろん。好きに出していいよ。」

「ありがとうございます。」


殿下と話ながら席を立つと、クラスメイトたちが挨拶をしてくれるので、それに返事をしながら教室を後にする。


その後、王城についてお茶の準備をメイドたちに頼み、リリアナ様たちが来るのを待つ。


楽しいお茶の時間を終え、王城をあとにして自宅に帰る。



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