第七話
夜会以降、殿下と殿下の側近の方達、そして、婚約者の方達を含めて交流を持つことが多くなった。
私も、少しずつ殿下のお仕事を一緒にやり始めている。
といっても、書類仕事はこなせないので、他部署の人たちの橋渡しの役目がメインだ。
殿下に言うよりも私に言う方が要望を口にしやすいらしい。
「あと3ヶ月後には学園に入学ですね。みなさんと一緒に学園に通えるのが楽しみです。」
今は婚約者の皆さんと王城でお茶会中。
殿下や側近の方達の用事が終わるのをここで待っている。
「あら、そういっていただけるのは嬉しいですが、殿下に睨まれそうですわ。」
「そうですね。でも、私も、エレオノーラ様と学園に通うのが楽しみです!!」
「女子のみの授業もありますし、エレオノーラ様を独り占めする殿下に対抗できるチャンスです!!」
「羨ましいです・・・!どうして私だけ年下なんでしょう!」
リリアナ様、レイナ様、エリス様は同い年だが、シーナ様だけは私たちの一つ年下のため、学年が被らない。
ちなみに、側近の方達はみんな殿下と私と同い年なので、本当にシーナ様だけがあぶれてしまう。
「学園で会えない分、休みの日にはたくさんお茶をしましょう。なんなら、みんなでピクニックなんかに行ってみるのもアリじゃないですか?」
本当に落ち込んでしまっているシーナ様を元気づけるためにいろいろ提案してみる。
「わぁ、楽しそうです!絶対に行きましょう!」
落ち込んでいた顔をぱっと明るく輝かせているシーナ様は本当に妹みたいで可愛い。
「楽しそうだね。なんの話をしてるの?」
「殿下!」
突然背後から聞こえた殿下の声に肩をびくつかせる。
「エレ、何度言ったらわかるの?殿下じゃなくて、ヴィって呼んで。」
「ですが、皆様の前ですし。」
「関係ない。ここは公式の場じゃないよ。」
そう。いつまでも殿下と呼ぶ私に、殿下が痺れを切らした。
今までは、お忍びの時以外は殿下呼びでいたせいで、癖が抜けない。
いつまで経っても愛称で呼ばないくせに、お友達や側近の形はファーストネームで呼んでいるのが気に食わないのだろう。
殿下と呼べば、これみよがしに激し目のスキンシップをしてくるようになった。
急に腰抱き寄せたり、私の唇に指を置いてきたり、本当に人様の前ですることじゃないので困っている。
「わかりました、ヴィ。」
「わかればいいんだよ。エレ。」
愛称で呼べば、機嫌が良くなり、普通に隣の椅子に腰掛ける。
「で、すっごく楽しそうに話してたよね。なんの話してたの?」
ああ、わかりやすい。
自分じゃない誰かと私が楽しそうにしていることに嫉妬している。
「学園に入学したら、シーナ様が寂しいって言ってたから、学園に入学しても、お茶会は続けるし、みんなでピクニックにも行きましょうって話してただけよ。」
「そうか。確かにシーナ嬢だけ1学年下だったな。うん。みんなでピクニックもいいんじゃないか。」
2人がいいと文句を言いそうなところではあるが、思ったよりスッと賛成してくれた。
「じゃあ、どこがいいか、下見に行こうか、エレ。」
あ、なるほど。
「本当、殿下はぶれませんね。」
「エレオノーラ様が絡むと人が変わるな!」
「でも、そんな殿下の方が関わりやすくていいです!」
アレク様、ドリウス様、シリウス様が口々にいう。
シド様も頷いているので、同意見なのだろう。
王城で働いている人からヴィの印象について聞くことがあるが、私の前で見せている顔とは真逆。
声からは感情の起伏は読み取れず、基本表情も変わらないらしい。
でも、仕事ぶりは正確で完璧。わからないところ、困っているところを聞けば、わかりやすく教えてくれるとみんなが言っていた。
見た目は冷酷無慈悲な感じだが、話してみれば、冷たいのは変わらないが、思ったよりは関われるらしい。
私と一緒の時は感情を隠すこともせず声に出すため、とてもわかりやすいので、全く想像がついていない。
数少ない魔術の使い手で、騎士としての腕も立つ、王としての政治手腕も今の時点で頭角を表し始めている。
そんな完璧な王太子殿下として国民の前に立っているが、私からしてみれば、ちょっと嫉妬深い婚約者のヴィでしかない。
「ヴィたちの話し合いは終わったんですか?」
「ああ、終わったよ。」
私を遠ざけてまでしてた話が少し気にならないわけではないが、聞くのも野暮だろう。
3ヶ月後にはゲームのストーリーが始まってしまう。
ヒロインがどうくるのかはわからない。
だが、ヴィに恋心を抱き始めている自分を自覚してどうすればいいのかわからなくなっている。
私とヴィが結ばれるエンドはどのルートにもなかった。
私とヴィの今の関係はイレギュラーだが、それがどれだけ未来に影響するかはわからないので、学園でできることはしておこうと思う。
一抹の不安を抱えながらも、今のお茶会を楽しんで過ごす。




