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盲目少女は転生者  作者: シルクティー


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第四話

「いいこと?本日のお茶会で婚約者を選ぶのです。わかりましたね?」


庭に続く扉の前で王妃である母から今日の目的を口すっぱく告げられる。


「わかっていますよ。お母様。」


そう返事すれば、満足したようで、扉が開けられる。


扉の向こうには、僕と同年代の子息令嬢がいた。

子息の中からは側近候補を、そして、令嬢の中からは婚約者を選ばないといけない。


誰を選んでも特に問題のない家ばかりが集められているので、最悪の場合は、記憶に残っている令嬢でいいかなどと、最低なことを考えていた。




僕は生まれた時からなんでもできる子供だった。1を教えれば10どころか100まで理解する。

だからこそ、僕には生きるの楽しさがわからなかった。

どうしてこんなに簡単なことがわからないのか。どうしてこのやり方が思いつかないのか。さっぱりわからず、人生に飽き飽きしていた時に彼女に出会った。


こちらには目もくれず、美味しそうにお菓子を食べる彼女に。


「そんなに笑顔を作っていて疲れないのですか?」


モノクロの世界に初めて色がついて瞬間だった。


「そんなに嘘の笑顔で塗り固めなくても、いつか必ず心から愛する人が見つかりますよ。」


そう言った彼女は、宝石のような青い瞳に、キラキラと輝く銀髪がとても綺麗だった。

その時に、初めて、僕は恋を知った。


その後も、他の令嬢と話をしたが、頭では彼女のことを考え、目も彼女をおっていた。



「どう?婚約者は決まった?」


その日の夜、食事の席で母上に聞かれ、頭には一瞬で彼女が浮かんだ。


「エレオノーラ嬢を。婚約者に望みます」


母の目をまっすぐに見つめ、そう告げると、母は少し驚いたように目を開いた。


「まさか、あなたがそんな目をするようになるとはね。」

「そんな目とは?」

「獲物を狙っている目よ」


からかったように笑いながら見てくる母上に少し居心地の悪さを感じるが、今はそんなことどうでもいい。


「私の婚約者に、エレオノーラ・ヴォルフルック嬢を望みます。」


最終決定権を持つのは父上なので、父上にも同じように告げる。


「ふむ。ヴォルフルックのお嬢さんか。問題はないだろう。わかった。書状を送っておこう。」

「いえ、ちゃんと面と向かって伝えたいので、書状は僕が持っていきます。」


書状で終わらせることもできるが、エレオノーラ本人にしっかりと申し込みをしたかったから、父上の提案を断った。



そうして、数日後、エレオノーラの領地に赴き、婚約の申し込みをした。

エレオノーラは戸惑った様子だったが、受けてもらえることになり、公爵に父からの書状を手渡す。


何やら葛藤をしている様子の公爵は、王城ではなかなかみることができないので、少し面白かった。

その後は、公爵家で軽くお茶をしながらエレオノーラと談笑をして、城に戻った。


ベッドに寝そべった時にとても有意義な1日だったと実感する。


もう、エレオノーラを手放せる未来が見えない。



それからは、エレオノーラの王太子妃教育が始まったので、エレオノーラは領地から王都に居住を移し、以前よりも会う時間を作りやすくなった。

想定外だったのは、母が想像以上にエレオノーラを気に入っていることだ。

何度かエレオノーラとのお茶の時間を邪魔された。


本人はなぜこんなに気に入られているのかわからない様子だったが、母の好みを知っている僕はよく理解している。


エレオノーラは可愛い。

少し垂れ目気味のパッチリとした瞳に、くっきりとした目鼻立ち。真っ白で陶器のような肌は穢れを知らない。

そして何より、本人は無意識だろうが、テンパると見せるオロオロとした姿や、きょとんとした顔で首を傾げる仕草は男女問わず虜にする魅力がある。


外見が母上の好みにドンピシャな上に、謙虚で穏やかな性格が母上の好みに拍車をかけてしまっている。


エレオノーラをあまり社交の場に出したくなくて、必要最低限の招待状だけを渡しているが、元々社交を苦手としているエレオノーラは有り難そうにしてくれているのが逆にありがたい。


王太子妃教育がある日は王城で、教育が休みの日はエレオノーラの屋敷に出向いて何かと理由をつけて一緒に過ごしていた。

その間、エレオノーラとの間に感じる一枚の壁を破ろうと試みてみたが、どうしてかうまくいかなかった。


そして、エレオノーラは婚約に前向きではない。それがなぜなのかは教えてくれないが、何度か「気になる人ができたら教えてくださいね。お邪魔は致しませんので」と言われた。

僕は、いつか目移りするような男だと思われているのか。


まあ、目移りすることなんてないから、諦めてくれるように行動するのみだ。


そんなこんなで楽しく過ごしていたが、問題が起きたのは僕たちが10歳の時だった。


その日は、ヴォルフルック公爵夫人のご友人のガーデンパーティーに招待され、エレオノーラには会えていなかった。


つまらないと感じながら時間が過ぎるのを待っていると、慌ただしく伝達係が入ってきた。


「殿下、エレオノーラ様が誘拐され、傷を負ったと報告が!」


頭を殴られたような衝撃を受けた。


「エレオノーラは、無事なのか!?」

「はい、現在は保護され、魔法師団の屯所にて手当を受けているそうです。」

「今すぐ向かう。馬を用意してくれ。」


とにかく上着だけを手に取って外に出る。

そこには、騎士たちが数名すでに待機していた。

そこにはヴォルフルック公爵もいて、話しかけると、夫人はすでに馬車で先に向かっているとのことだった。


さっさと馬に乗り、全速力で走らせる。


ようやく屯所につき、エレオノーラの元へ向かえば、見えるところに小さな傷が多くがあり、目元も包帯で覆われていた。


駆け寄って彼女の頬に手を添える。


「なんで、こんなことに・・・。首謀者は誰だ。今すぐ突き止めろ。」


後ろについてきていた騎士にそう命令すれば、エレオノーラは自身が知っていることを伝えてくれる。

騎士はすぐに席を外し、部屋を出た。

先に誘拐犯たちのところに向かっている公爵と合流するように伝えているので、さっきの話は公爵まで伝わるはずだ。


そうして、時差で公爵夫人も到着し、医師からの説明を受ける。


エレオノーラの目元にあった包帯が解かれ、目があらわになる。

そこには、元のキラキラと輝いていた瞳はなく、光がなく、焦点が合っていなかった。

エレオノーラの反応を見る限り、見えていないのだろう。


エレオノーラがどこかに行ってしまいそうで離れて行かないように手を握った。

彼女の目が見えない現実を受け止めきれず、言葉も出なかった。


やっぱり目の届かないところに行かせるんじゃなかった。

無理を言ってでも、ついていけばよかった。

そんな後悔ばかりが頭の中を支配していた。




それからは、常にエレオノーラのそばにいるようにした。

幸い、王太子妃教育は完了していたので、特に問題もなかった。


公爵家からは目が見えないことを理由に婚約解消の打診をされたが、断固として拒否の姿勢を示した。

エレオノーラが僕以外のやつと婚約するのなんてみたくない。

エレオノーラは僕の婚約者だ。


ほぼ毎日のようにエレオノーラの下に行き、他愛もない話をしながら過ごす。


「エレオノーラ。庭に散歩に出ようか。」


引き留める侍従の声を無視してエレオノーラのもとによる。

応接室で待っているなどできるか。


「殿下、きてくださるのは嬉しいですが、うちの侍従を困らせるのはお辞めくださいね。」

「エレオノーラに早く会いたくてね。気をつけるよ。」


彼女に言われて仕舞えば、こう返すしかないが、辞めるつもりはさらさらなかった。


彼女の手をひいて、慣れたように公爵家の庭に出る。

公爵家の庭は実に素晴らしく、バラやガーベラ、ネモフィラも満開に咲き、そんな中に立つ彼女の美しさに目を奪われる。

そうして、庭師のジルから鋏を借り、近くにあった赤い薔薇を一本切ってエレオノーラの髪にさす。


彼女の銀髪に赤がよく映えるが、やっぱり彼女には青の方が似合うだろう。

青の薔薇があれば花束にしてプレゼントするのに。


彼女の持つ青が見たくて、頼んでみる。


閉じ切られていた瞳が開かれ、彼女の青が顔おだす。


やはり、光はなかったが、それでも、彼女の持つ美しさは失われない。


「綺麗だ。」

「ありがとうございます。」


彼女は自分自身の目があまり好きではないようだが、私は本当に綺麗だと思っている。

率直に思ったことを伝えれば、ほんのり頬を赤ながら、礼を告げる彼女。


人前では閉じててもいいが、僕の前でだけは開けていてほしい。


物好きだと言われるが、僕が物好きなら、この世の中はきっと物好きで溢れているね。

彼女と関わっているもので、虜にならないものはいないんだ。

関われば関わるほど、虜にされ、どうしたらいいのかわからなくなる時がある。


絶対に手放したりするものか。


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