第十六話
「ありがとうこざいました。とっても美味しかったです。」
「またお越しくださいませ」
カフェを後にして次に向かったのは平民向けの雑貨屋さんだった。
「ここは、店主が一つ一つ丁寧に作っていて、一点物ばかりのお店です。平民向けのお店ではありますが、店主のセンスは抜群なので、すごく可愛いデザインも多いんですよ。」
ミアの紹介を聞きながら、店内に足を踏み入れれば、奥の方から「いらっしゃいませ」と大人の女性の声が聞こえる。
通路は少し狭めで、サイドに置いてある棚にゆっくりと手を伸ばせば、すぐに商品が手に当たった。
少し探るように手を動かせば、商品が棚の上に所狭しと並んでいることがわかり、一層気をつけなければいけないことがわかる。
「これ、可愛いですわね。」
「わぁあ、本当ですね」
「みんなでお揃いにしてもいい感じじゃないですか?」
リリアナから手渡されはそれは、小さな毛糸でできたウサギのキーホルダーのようなものだった。
話を聞いてみれば、10色ほどカラーバリエーションがあるらしい。
前世から数えても、友達とのお揃いなんてしたことは一度もなく、気づけば「お揃いしたいな」と声に出ていた。
「エレオノーラ様は白ですね。」
私は、白。
リリアナは黄色。レイナは赤。エリスは黄緑。シーナは水色。ミアはブラウン。
それぞれの髪色をもとに色分けをし、それぞれ購入していく。
「本当に私までお揃いにしてもいいんですか?」
ミアが不安そうな声で尋ねる
「一緒にお出かけしてくれるお友達でしょう?」
「友達・・・?」
「あら、私たちはそう思ってたけど、違った?」
今日一日、彼女と関わってわかった。
この子の立場はゲームの中では確かにヒロインだが、目の前にいるミアはただの仲良くなった女の子。
すでに想い人がいて、その人を一途に思い続けている健気な女の子だ。
それに、彼女を含めたみんなでお話しする時間が楽しかった。
「嬉しいです!ありがとうございます!」
涙を含んだような声に、笑顔を向ければ、みんなも優しく言葉をかけていく。
私は、ゲームに囚われ過ぎてしまっていたのかもしれない。
ここはゲームの世界ではあるのかもしれないが、私たちは確かにこの世界で生きている。
もっと自由に新しい自分の生を楽しんでみてもいいのかもしれない。
「さあ、もっと街のことを教えてください。ミアが生まれ育った街のこと、もっと知りたいです。」
それからは日が傾き始めるまで、みんなで街を存分に楽しんだ。
行商の日では通ることのない道を通り、町に住む人たちの実際の声や、楽しそうに駆け回る子供達の声と足音を聞き、楽しい時間を過ごせた。
今日ほど、目が見えないことを悔やんだことは今までなかったかもしれない。




