第十三話
マナーの授業が終わり、生徒が自室に戻って行っている中、私たちはガールズトークに花を咲かせていた。
「エレ。迎えにきたよ」
教室の扉が開けられ、ヴィが入ってくる足音が聞こえる。
「ヴィ!お友達が増えました!!」
「友達?これ以上必要かい?」
私がなかなか友達ができなくて悩んでいるのを知っているはずなのに、本当にこの王太子は・・・。言葉も出ない。
「お友達は多いに越したことはないんですよ?多い方が楽しいでしょう?」
「私はエレに友達が増えるのは楽しくないかな。エレが構ってくれなくなるからね。」
私の椅子を引き、立たせてくれたかと思えば、腕を引かれてヴィの腕の中に囚われる。
「あらあら。授業の間エレオノーラ様と離れただけでこれですか。これからが思いやられますわね。」
「本当にエレにあなたを紹介したくなかったよ。」
「ご紹介してくださってありがとうございます。今ではとっても仲良しなお友達になりましたのよ。」
「本当に嫌いだ。」
ヴィとリリアナ様が強かに口論をしているが、生粋の公爵令嬢で、社交界を引っ張ってきた彼女の口には流石のヴィも勝てないらしい。
「それで?新しく友達になったのは彼女かい?」
「はい、ミアさんです。」
「ミア・シュリードです。」
「ああ、シュリード男爵に引き取られたって令嬢か。あまりエレに変なことを教えないように頼むよ。」
前半は抱きしめられている私でもなんとか聞こえたので、周りの人には聞こえていないと思う。
でも、なんで知っているんだろう・・・。
「変なこと・・・とは?」
「エレは何にでも興味を持ってしまうからね。」
これは、どういう意味なんだろうか。私が子供だと言いたいのか。
確かに、街に出るときは一般人だった前世の血が騒いでいるのか、少しはしゃぎ気味でヴィをあちらこちらに連れ回しているかもしれない。
「はあ・・・。」
ミアのわかっているのかいないのかわからない返事に、ヴィは小さくため息をつくが、それ以上言うことはなかった。
「と言うことで、エレはもらっていくね。」
ようやく腕から解放されたかと思えば、手と腰に手を回され、エスコートで連れて行かれた。
抵抗する暇すら与えられなかった・・・。
「ヴィ?このあとはランチでしょう?みんなで食べないのですか?」
「ああ、授業の間ずっとエレを盗られたんだ。これくらいは許してもらわないと困る。」
「盗られたって・・・。授業を受けていただけですよ?」
「授業だとしても、エレが近くにいないのはやっぱり落ち着かない。」
話しながら歩いていれば、ふわっと花の香りが花をくすぐった。
「いい匂いがしますね。バラですか?」
「さすがだね。校舎裏のバラ園だよ。ここは人が少ないからね。エレを独占するにはうってつけの場所だよ。」
座れる場所に案内され、促されるがままに座ってヴィの言葉を待つ。
「エレに友達ができることは嬉しいことなんだろうけどね。僕はそれを素直に喜べないらしい・・・。」
少し申し訳なさそうな声で言うヴィは私の肩口に頭を乗せる。
ヴィが不安な時にする動作だ。
「ヴィは私の大切な婚約者ですよ?」
「ああ。僕にとってもエレは大切な婚約者だ。絶対にもう話さないと決めた、大事な女性なんだよ。」
これからのストーリーがどうなっていくかはわからないが、ここまで言ってくれるヴィを、私も大切にしていきたい。
「ヴィが私を手放さない限り、私がヴィから離れることはございませんよ?」
昔から離れようとすれば拒否されてきていたので、諦めもあるが、今は違う。
ヴィが私を大切に思っているのと同じように、私もヴィを大切に思い始めている。
なら、今の私にヴィから進んで離れる選択肢はない。
「エレは面白いことを言うね。僕がエレを手放すことなんかないのに。でも、今言質はとったからね。離れようとしたら容赦はしないよ?」
「でも、授業は許してくださいね?」
今のことを授業にまで持ち込まれると困るので一応釘を刺しておく。
「わかったよ・・・。でも、これ以上女子生徒のみの授業は取ったらダメだよ。」
「わかりましたわ。」
これ以上わがままを言おうものなら学園にすら通うの難しくなりそうなので大人しく従っておく。
「さ、まだ午後の授業も残っているから、ランチを食べちゃおうか。」
そう言ってヴィがは持ってきていたらしいランチボックスを取り出し、中に入っていたサンドウィッチを手渡してくれた。




