第六話 悩み
第六話 悩み
「はぁ、偵察だけって言ったのに、どうして埼玉県のボスと戦うのですか?」
「ご、ごめんなさい。」
「うう、何で僕まで……」
(うわー、やってるな~。)
俺は今、玖珂咲カエラが起きるのを待って、医務室のベットにいるのだが、早々に福メイド長と副執事長である飛鳥と和也がメイド長の凪沙に怒られている。コイツらは従兄弟同士なのだ。
「ううーん、ここ何処。」
と言う間に玖珂咲カエラが起きてしまった。
「起きたか。」
「アンタは……一ノ瀬悪魔?」
「名字か名前で呼べ。」
「分かった。じゃあ私も玖珂咲と呼んで。」
「ああ。」
「えっと……ここは?」
「俺の家だ。」
「この内装はもう家じゃなくて屋敷でしょ。もしかしたら城かもしれないわね。」
玖珂咲は周りをキョロキョロして言った。
「何時間くらい寝てたの?」
「五六時間。」
「そう、すまなかったわね。」
「後、一ヶ月後に埼玉の派閥に攻める。と言っても誰かさん達のせいで一週間後くらいになってしまったがな。」
そう言って、俺は飛鳥達の方を見た。和也が「俺は悪く無いですよ~。」とか言っている。
「えっ?戦争っていう意味?ダメよそんな事!最悪民間人に被害が出るし、私は何も悪く無い人達を殺したく無いわ。」
「大丈夫だ。今回は戦争と言える戦争じゃない。それにすぐ終わる。だから安心しろ。まずこっちには伝説級スキル一人、上級スキル二人、中級スキル数人いるんだぞ?」
「確かに。ていうか私以外の上級スキル持ってる人って誰?」
「それは凪沙だ。そう言えば紹介して無かったな。コイツは服部凪沙。服部半蔵の子孫でメイド長だスキルは『氷結』だ。隣にいる眼鏡をかけてるのは服部輝利哉。凪沙の兄で、スキルは中級スキルの『糸操』……。」
俺は近くにいる従者四人の紹介を終えるとこう聞いた。
「で?まだ質問はあるか?」
「無いわ。じゃあそう言う事で私帰るわね。今後の指示はパチ端で連絡しといて。」
「送ろうか?」
「お願いするわ。」
「頼めるか?」
「はい。」
俺はメイドの一人に玖珂咲を家まで送ることをメイドの一人に送らせた。
「んじゃあ、指示していきますか。」
俺は背伸びをして言った。
緑がかった黒い髪に短いポニーテール、そして赤い瞳。一見十四歳くらいの少女に見えるが彼は十六歳の少年だ。いわゆる男の娘と言うやつだ。
名は不知火絢音。名前までも女みたいだ。そのおかげでいじめっ子に目をつけられそうになったのだが、喧嘩は昔から強かったのでいじめなどは自然になくなっていった。しかし、それよりもキツかったのは女子達の着せ替え人形にされる事だった。いつも「かわいい~」と言われながらリボンをつけられ、スカートを履かされ、髪をいじられたりもされた。挙げ句の果てには同性から告白された事もあった。自分は男なのに周りから全く男に見られない事に絢音は不満を抱いていた。世界統合の後でも仲間からの対応は女子とほとんど一緒だった。だが、その仲間の中で唯一絢音を気持ち悪く見る奴がいた。
隣にいる神楽沙月だ。見た目は茶髪で長いポニーテール、そして鋭い目つきを持っている女性なのだが、
「同じ、ポニテ同士仲良くしよう。」
とでも言ったら、
「あなたは男じゃないですか何でポニーテールにしてるんですか?それも本心じゃ無いだろうに。」
気持ち悪そうに沙月は言った。ちなみに理由は仲間達に怒られるからだ。
彼女は男でも女でもOKな人でそう言う系の友達を多く持っているらしい。しかしなぜか絢音にだけは凄く冷たい。当然理由はわからない。とりあえず話を変えることにした。
「そういえば、ムカつくよね。うちのボス。初嶋健太だっけ?中級のくせにボスになってさ。しかも聞いた?東京ともうすぐ戦争するらしいよ。ていうかもう裏切っちゃおうかかな?」
「聞きましたよ。私もそう思います。それよりも敬語を使ってください。私、一応年上なんで。」
(あっ、この人二十三だった。もうすぐおばさんだなぁ。)
ちなみに絢音からしたら二十六歳より上はもうおばさんなのだ。
「無理、ボクは敬語なんて一度でも使ったことがないからね。もう癖付いちゃってるんだ。」
「はぁ、仕方ないですね。」
「あと、裏切るのは敵の方が強いと確信してからね。」
「えっ?本当に裏切るんですか?」
沙月は驚いたように言った。
「逆に裏切らないの?沙月さんってそんなこの派閥に忠誠心高いの?」
「いや別に忠誠心なんて無いですけど。」
「じゃあいいじゃん。」
「仲間を裏切ることはできません。」
「大丈夫、あっちのトップに頼めばいいんだよ。仲間は殺さないでくれってね。」
「……分かりました。」
沙月は少し考え、そう答えた。
「おい!お前らボス裏切るってどういう事だ!」
「あ~聞こえちゃってたか~。」
「お前ら……」
ズシャッ、
沙月が刀を振ると、一人の体が真っ二つに切れて倒れた。
「ヒッ!」
もう一人はそれを見て恐怖で声が出てしまった。
「馬鹿ですね。さっさと密告でもすればいいものを。まぁ、でも気づいていましたが。」
「立場を考えてよ。上級スキル持ちが下級如きに負けるわけがないでしょ。」
「全員殺しますか?」
「うん。殺してもいいでしょ。もうこういう世界になっちゃったんだから。」
絢音はそう答えた。




