第三話 服部兄妹
第三話 服部兄妹
俺はドラゴンを倒した後、家に帰ろうと歩いていた。
俺がドラゴンを倒す前にはあんなにいたはずのゴブリンは今となっては一匹も見当たらない。
一分後、やっと一匹見つけた。
ゴブリンはこちらを見つけると怯えた様子で逃げて行った。
多分、自分たちのボスを倒されて近くにはそれ以上の強さを持っている者がいる事に気が付いたのだろう。
やがて、あるビルに着いた。ここら辺はあまり被害が出てないようだ。
そして地下一階に続く階段を降りた。
その先には喫茶店があった。ドアを開けて中に入る。
中は綺麗だ。マスターは何事もなかったようにコップを拭いている。
「マスター、いつもの。」
俺がマスターに向かってそう言うとマスターは無言でコップを置き、近くの小さいボタンを押した。
俺は奥の方のトイレになっていたドアを開ける。
中はエレベーターになっていて、喫茶店と雰囲気が結構合っている。
俺は三つある内の一番下のボタンを押すとエレベーターは動き出した。
チーンと音が鳴りドアが開く。
そこには広い空間があった。地下なのに青空が広がり地面には草が生えている。
そして奥に立派な屋敷が建っていた。
「おかえりなさいませ悪魔様。」
「ああ。ただいま。」
従者達は道を作りながら俺を出迎えた。
そして二人の従者はここへ残り、他の従者達は持ち場へ戻って行った。
「申し訳ございません。悪魔様お迎えに来ることができず、」
「それはいいけど、いつも言っているだろ?こう言う出迎えはいらないって。」
「しかし、こういうのも従者の勤めなので。」
服部輝利哉と服部凪沙、名前の通りこいつらは服部半蔵の子孫だ。輝利哉は性格は真面目な委員長って感じで、凪沙は普段は大人しいが兄の輝利哉と話している時だけ少しうるさい。ちなみに二人は兄妹だ。
「はぁ。で、何の用だ?」
「悪魔様。すみませんが、ボスモンスターのサンダードラゴンを倒しましたか?」
凪沙が不安そうに聞いてきた。
「ああ。それがどうした?」
「良いですか?悪魔様はまだ優秀さなどは認められているかもしれませんが、いきなり民衆の上に立つ事は必ず怒りや妬みを買うことになります。モンスター達から人々を助けたりして英雄扱いされるくらいの事をなされたのならまだしも、悪魔様はあまり周りの人のことなんて気にしてませんよね?」
「要するに、民衆から信頼を受けているかと言うことか?」
「……はい。」
「……よく聞けお前ら、俺は民衆に#あの事__・__#を伝える。」
「!‼︎本気ですか⁉︎そんなの信じてもらえるわけがありません!仮に信じられても今まで隠してきた事で裏があると思われて信頼を逆に失うかもしれませんよ!まさか隠す理由まで教える気ですか⁉︎」
凪沙が慌てた声で言っている。
「おい、凪沙。今まで悪魔様の判断に間違えがあったか?」
「……お兄様、ですが。」
「主人を信じてついていく事が従者の勤めだろ?」
輝利哉が眼鏡を中指で持ち上げてそう言った。
「ふふ、そうですね。」
「うん?どうかしたか?」
「いやその、何ですかこれは?かっこつけているんですか?」
凪沙はニヤニヤしながら中指で鼻筋を擦って眼鏡を中指で持ち上げていることを指摘している。
「あー、何だろう。お兄ちゃんムカついてきたなぁ。」
そう言って輝利哉は凪沙の頭をグリグリした。
「痛いです!やめてくださいよぉ~!お兄様ぁ~!」
(はぁ。こいつらは仲がいいんだか悪いんだか。)
俺は呆れてそう思った。
次の日。
俺はパチ端で集団のボスが使える機能の全員集合を近くにあるグラウンドが大きい中学校で使った。
数分後、民衆がゾロゾロと校門から入ってくる。
そして俺は朝礼台にのぼり準備していたマイクを使って言った。
「よぉ、お前ら、俺は一ノ瀬悪魔。元々、一ノ瀬財閥で御曹司をやってた者だ。知ってると思うが俺は昨日サンダードラゴンを倒して東京のボスになった。」
民衆はザワザワと騒ぎ立て俺にこう言った。
「ふざけんな!いきなり俺たちの上に立ったことを調子乗っていちいち発表すんじゃねぇ!」
「おいお前!一ノ瀬様になんてことを言ってやがる!」
「は?そんなの知らねぇよ!」
予想通り、通っていた学校の生徒は俺に味方しそれ以外は敵対するか。
「黙りなさい!」
突然、横にいた凪沙が大声を上げた。
(おお、俺や輝利哉に対してにしかこんなに大声出したことなかった気がするが。珍しいな。)
「悪魔様のお話を遮らないでください。それともみなさんみなさん氷漬けにされたいですか?」
いつの間にか凪沙の目は『氷結』という文字が描かれていた。
それを聞いた民衆達はビビったようで黙り込んだ。
「あー、えっと、まぁ突然で申し訳ないが心配しなくてもいい。今まで日本の政治は政治家が国民の意見や投票によって決めたりしていたと伝わっていると思うがそれはほとんどが嘘だ。政治家は俺が考えた案を発表していたりしてただけでありただの役者だ。つまり今まだとあまり変わらないと思ってくれても構わない。信じられないと思うが信じてくれ。」
「おいおい、流石にそれは嘘がすぎてる。」
「そうだ!俺たちを馬鹿にしているのか!」
流石に民衆は一行に信じてくれない。俺が直接政治家を呼んで今のは本当だと言わせる手もあるが、それでは政治家がただ脅されているだけだと思われる。ここで頭を使うのも面倒だ。仕方ない、前の選挙の裏での出来事を撮影した動画でも流そうか。
そう思った瞬間、
「待ってみんな、さっきの話は本当だわ。私のお父さん、政治家だから知ってるの。」
一人の金髪でツインテールの髪型をした少女が現れた。
「英雄様だ。」
「英雄様がお通りになられるぞ。」
英雄と呼ばれた少女には見覚えがある。ゴブリン達を炎を使って炭消しにしていた奴だ。
「それより、私はアンタが本当にこの東京の人たちを守れるくらい強いかを証明して欲しいの。」
少女は俺を見てそういった。
「具体的に何をすればいいんだ?」
「そうね。じゃあ、私と模擬戦して勝ったら東京のボスと認めてあげる。そのかわり負けたらボスの権限を私に渡して。」
少女はそう言うとパチ端を使って模擬戦の申請を送りつけてきた。
「そりゃ手取り早くて助かる。お前名前は?」
「玖珂咲カエラ。言っとくけど、私強いから。」
「そうか。期待してるぞ。」
俺はそう言って申請を承認した。




