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執事オーバーワークス  作者: 双葉
第3章 『春、復縁、突然、そして……』
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第3章9 『まずは形から』

お待たせいたしました、昨日投稿したつもりが寝落ちてしまいました。

















 パーティーから数日後、あの(すめらぎ)と言う男の行動などを調べる事にした(かける)、証拠などはじゅうぶんに揃っているが一つだけ足りない部分があった、それは彼が万緒歌(まおか)以外の女性と一緒に居る現場写真だ。


 他の証拠があっても『それは昔のだ』と言われれば終わってしまう話だ、そこで彼の行動をしっかりと探り何をしているのかを知る必要があった、もちろんこれは翔だけの提案ではなくメイド長や氷華(ひょうか)も同じ事を述べていた。


 ただ彼は万緒歌の秘書であり日中は2人で行動をしている、彼が1人になる時間などを狙ってこちらも動く必要がある、色々と提案を出していくが纏まらないのが現実、会社から出てくるのを待っているにしても時間が掛かりすぎる、会社の出入口は無数の人間が行き来しているため張り込みは難しい、さらには万緒歌に皇の真実を伝えてはいない為、翔達で何とかしなければいけないのも事実。


 そこで氷華は『街に出ましょう、会社がどんなものか気になるの』と、腕を組みながら翔とメイド長に話すと2人も頷き準備をする。


 この一件は美歩佳(みほか)にも知らされ、協力する方向になったのだが特に頼めるようなことが無く、留守番を言いつけられたのは話すまでもない、また後から頼む事があれば連絡をすると告げた翔達はリムジンに乗り込み、街へと繰り出した。


 目立つ格好は良くないとメイド長は考え、氷華は普段よりも動きやすい格好、メイド長はメイド服からスーツへ着替え、翔は自宅から持ってきていた私服へと着替えた。


 何かあれば氷華は社長としても動けるように、メイド長に名刺を渡してあるらしく、翔は『名刺って便利なんだな』と呟く。



























 リムジンを街に入る前に降りて徒歩で駅前まで向かう、3人で横になり歩くのはもしかするとこれが初めてかもしれない、ただ翔だけが少し仲間はずれのような感じになっている、髪が目立つ上に私服とは言えヤンキースタイル、2人と比べても庶民過ぎる部分が大きく表現されていて、何とも言えない疎外感に満ちていた。


 歩くこと数分で天羽デザインと書かれた看板を発見、会社と言っても想像しているビッグサイズビルとは違い、中小規模の建物で構築されている。


 七宝グランドヒルズと比べたらその差は自転車と大型トレーラー、それでも様子を見る限り人の往来は激しく、それだけ目立ち始めた会社だと言うことは翔にもわかった、母が努力し築き上げた証はちゃんとした形になり今では世界に羽ばたこうとしている。


 氷華はデカデカとしたサングラスを通して会社を眺めている、メイド長は持ち運びに便利なタブレットを操作しメモをしている、翔はそんな2人を見ながら『俺やること無くね?』と口ずさむと。




「アンタは周りの視線に威嚇してなさいよ」


「周りの視線?」



 3人が隠れている場所は会社近くにある公園の茂み、もちろん昼前とは言え親子連れのグループが遊具で遊んでいる事がわかる、そしてそれを無視して会社をじっと眺めている3人の姿は怪しいの一言。


 子供達は指を指して『ねーねー、なにやってるのー?』とお母さんと思わしき女性に聞くと『しっ! あっちにいくわよ?』と、近寄らないように距離を開けていく。


 それに対して『威嚇してなさい』とはさすがに鬼すぎる、子供達に睨みつければ親は黙っていないだろうし、何よりその子達の父親が黙ってはいないだろう、そんな事を考えていると氷華は急に立ち上がり茂みから飛び出す、メイド長と翔もそれに合わせて飛び出すと。





「良いこと考えたわマリア」


「あまり気が進みませんが聞くだけは聞きます、なんですか?」




 ニヤリと怪しげな表情を浮かべた氷華、翔だけ何を思いついたのかわからないでいるが、メイド長があまりいい顔をしていない当たりで察しはついていた。


 その思いついた作戦とは、




「仕事を依頼するのよ」


「依頼するですか」


「ええ、天羽デザインは服はもちろん建物のデザインまでやってしまう会社よ? なら建物のデザインをしてもらうことにするわ」




 話はこうだ、七宝グループはこの夏に大きなデパートをオープンさせるようで、その建物の最上階の内装デザインがまだ決まっていないとのこと、業者が見つかっていない上にデザインとなればある程度名のある業者が良いと氷華は話した。


 そこで天羽デザインにその仕事を発注すれば、色々な部分で皇を見ることが出来る上に尾行もできる、一石二鳥だと氷華は話す。


 あまり良い話ではないと感じていたメイド長は目からウロコ、もっと面倒な話をされるんじゃないのかと思っていたようだ、氷華はさっそく初社長仕事をするため、父親であり会長の政宗(まさむね)へと連絡を取る、通話が始まると氷華は直ぐにデザイン業者の事を話し、1分と掛からない位で通話は終了。


 スマホを小さなカバンにしまうとニッコリとしながらピースサイン、当主政宗は『氷華のやれる事をやりなさい』と言っていたようだ、皇の一件を知らない七宝家の両親だが、それをわざわざ言うこともないと氷華はあらかじめ周りに話していた、皇の真実と仕事を両立させながらだが、これが氷華の初めての仕事となった。


 早速仕事を始めるために、メイド長は現在建設中のデパートの図面やそのデザインの内容データをタブレットに表示させる、翔にはさっぱり縁がないことで首をかしげながら、タブレットの画面を覗きみる、数字やら単位やらで見てるだけで頭が痛くなった。


 タブレットからデータを上手く引き出したあと、3人で天羽デザインの扉をくぐり抜けていく、前回のパーティーの時に七宝家に仕えていると知った万緒歌だが、改めてこうして出会うのは翔として少し微妙な気分になる、だが今は皇の素行調査とは言え仕事だ、気を引き締めて2人の背中を見ながら受け付けへとやってきた。






「ようこそ天羽デザインへ、ご要件を伺います」


「私は七宝グループの秘書をしております、こちらは七宝氷華様です」


「七宝氷華です、こちらに天羽万緒歌さんはいらっしゃいますか?」


「し、七宝っ!? あ、あの少々お待ちくださいませ!」






 受付嬢は慌てて受話器を取り社内に連絡を始める、外から見ればそこまで大きく感じない建物だが、中に入ればそれ以上に広く感じる作りをしていた、建造物の作りは閉鎖的な感覚があり、物や壁が多いと狭く見えたり暗く見えてしまう。


 そこにガラスを多めに取り入れたり、無駄に物で溢れてしまわないように収納したりと工夫されていた、この受け付けの場所も壁際では無くあえて中央部に配置することにより、人で溢れてしまっても見つけやすく丸いカウンターになっていることから、どの方向からでもアクセス出来る作りになっている。


 思わずキョロキョロしてしまう翔にチョップをかます氷華、ムッとした顔で『じっとしてなさいよおバカ』と、目で言われる翔。


 しばらくすると受付嬢は3人を社長室まで案内をしてくれる、エレベーターに乗り込み7階に着くと廊下の壁面には色々な図面が飾られていた。





「んー、どっかでみたことあんだよなぁ」


「それは一葉駅じゃないの」


「は!? あのデザインここなのかよ!?」


「そういう事ね」





 一時期駅の簡易工事をしていたと思えばデザインの変更だったり、路面に点字ブロックやらが増えていたことを思い出した翔、万緒歌がやったのかどうかは知らないが施工主は『天羽デザイン会社』と入っていた。


 廊下をしばらく歩いていると『社長室』と書かれたプレートを見つける、受付嬢はノックをし中から声が聞こえたのを確認すると扉を開く。


 メイド長は先に入り扉の横に立ち、氷華が入るのを見届けて翔に『さ、入ってください』と合図される、万緒歌は席を立つと氷華やメイド長を見て翔を見た。




「翔、しっかりやってるようね」


「当たり前だろ、それより」


「天羽社長、お久しぶりです七宝氷華です」


「えぇ、お久しぶりです七宝社長」




 お互いの挨拶を済ませいよいよ商談に入る、3人は黒い高級感のあるソファーに座るよう誘導される、だが部屋にはあの男は居ない、翔はまたキョロキョロとそいつを探すが居ない、氷華とメイド長はタブレットからデータを出すとそれを手渡す。


 やることがない翔はテーブルに置かれてあるお菓子をつまみながら、受付嬢が出してくれたお茶を啜る。


 今は居ないが後からやってくるだろうその男を、どうやって天国から地獄へ突き落とそうか考えながら。














次回は今週中かまた週明けになります、すみませんがお待ちくださいませ。


読了お疲れさまでした。

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