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冷徹営業トップは私の限界オタクでした  作者: アル


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第9話「営業部担当が来週も続くことになりました。 」

営業部担当四日目の金曜日。週末を前にしても、営業部では電話の音が絶えず、社員たちは慌ただしく動き回っていた。

神崎は昨日のランチが夢のように思えて、夜遅くまでなかなか寝付けなかった。


「神崎さん、目の下にクマができてますが、大丈夫ですか?」


神崎の隣のデスクに座る陽菜子は心配そうに神崎を見た。


「大丈夫ですよ!むしろいつもより元気です!」

(陽菜子さんに心配させてしまった……。)


陽菜子はデスクの引き出しを開け、アメを一つ取り出した。


「これ、元気出ますよ。」


神崎の手のひらに、いちごみるくのアメが一つ載せられた。


挿絵(By みてみん)


「あ、ありがとうございます!」

(陽菜子さんからもらった!家宝にします!!)


食べずに引き出しにしまおうとする神崎。


「食べないんですか?」


「…食べさせていただきます。」


ずいぶん丁寧な言い方だと思いながら、陽菜子は小さく笑った。

神崎は包装紙を丁寧に開き、いちごみるくのアメを口へ運んだ。

その後、包装紙のしわを丁寧に伸ばし、デスクの引き出しへしまった。

陽菜子はそれを見て、不思議そうに首をかしげた。


「春宮ちゃん、俺にもちょーだい」


外回りへ出る準備をしていた寺内が、いつの間にか二人の背後に立っていた。


「……寺内さん、図々しいですよ。」


「えー!いいじゃん!」


陽菜子は寺内にもアメをあげた 。

神崎は口の中のアメを噛み砕きそうになり、慌てて奥歯の力を抜いた。


「ふふっ。お二人のこのやり取りを見られるのも、あと少しなんですね。」



夕方、陽菜子が今日の分の領収書をまとめていると、営業部長が申し訳なさそうにデスクへ近づいてきた。


「春宮さん、悪いんだけど、来週の金曜日まで営業部をお願いできないかな。」


「来週の金曜日、までですか?」


「月末も近いし、まだ領収書の不備が多くてね。このまま経理部へ戻ってもらうのは不安なんだ。」


「…わかりました。」


陽菜子が了承した瞬間、隣の席で聞いていた神崎の手がぴたりと止まった。


(来週も陽菜子さんと一緒に働ける……!)


「神崎くんもよろしくね!」


それだけ言い残すと、営業部長は鳴り始めた電話に対応するため、慌ただしく自席へ戻っていった。


「神崎さん、また来週よろしくお願いします。」


陽菜子は深々と頭を下げた。


(来週も毎日会えるなんて、これはもう夢ですか? )

「こ、こちらこそよろしくお願いします。」


神崎も深々と頭を下げた。

向かいのデスクからその様子を見ていた寺内が、吹き出すように顔をそらした。

神崎は気づかないふりをして、さらに深く頭を下げた。


挿絵(By みてみん)


退勤時間になり、陽菜子は荷物をまとめ始めた 。


「今週もお疲れさまでした。神崎さん、週末はゆっくり休んでくださいね。」


陽菜子はそう笑って、営業部を後にした。

神崎はその背中を見送りながら、そっと目の下のクマに触れる。


(今夜こそ、ちゃんと寝よう)


神崎は引き出しを開け、丁寧に伸ばした包装紙をもう一度眺めた。

来週も陽菜子が隣にいる。そう思うだけで、胸が高鳴る。

今夜も眠れそうになかった。


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