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転生少女は愛されている  作者: 海雪
第3章 交流戦
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悪癖



 かざねが向ける視線の先に居たのは、エリスと同様にウェイトレスの格好をした闇森人族(ダークエルフ)のお姉さんと、いかにも料理人という雰囲気を漂わせる服装を身に纏った森人族(エルフ)のお兄さん、という組み合わせの二人がそこに居た。



 その二人には既に見覚えがある。何度か喫茶店に通う内にエリスから紹介されていたのだ。喫茶店"リブラ"で働く店員にして私達の先輩に当たる人物である二人がこちらの方へと近づいて来る。




「いらっしゃい! 二人共!」



「よく来てくれたな。待ってたぞ」



「こんにちは。リエナ先輩、ベル先輩」




 満面の笑みを溢れさせて歓迎してくれる先輩達、もう一人の店員であるエリスとは大違いだ。彼女は来店した客が私達だと知ると、つまらなそうな表情をするので最低でも笑顔で出迎えて欲しいと私は思っている。



 確かに、エリスがバイトとして働く店に何度も来られると揶揄(からか)われないかと危惧してしまうのは納得だが、ただ単に料理が美味しくて来ているだけなのでそこまで警戒しないで欲しい。



 既に知っている闇森人族(ダークエルフ)のリエナ先輩と森人族(エルフ)のベル先輩がこちらに近づいて来たという事は………



「まさか、リエナ先輩とベル先輩は生徒会に所属していたんですか?」




 私と同様に気が付いた詩音も先輩達に尋ねる。その返事として二人は肯定するかのように頷いた。アルバイトをしているだけでなく、生徒会に所属していたとは初耳だ。だからこそ学園内にある部屋ではなく、バイト先の喫茶店に呼んだのだろう。




「お二人は優秀なんですよ。生徒会での仕事も早くて助かっているんです」



「へ〜、そうなんですね」



「えぇ、それに、バイトをしているのは知り合いから手伝って欲しいと言われて手伝っているらしいです。ほんと優秀なお二人なんですよ。アルバイトに生徒会を掛け持ちしているんですから」




 ミュレット先輩から、二人はバイトと生徒会を掛け持ちしていると聞かされた。やることが多くて大変だろうに、生徒会の仕事まで行うとなれば負荷は相当なものだろう。




「これで顔合わせは終わったな。ところでベル、私が前々から頼んでいた物は出来たか? 今日が完成予定だと聞いたが………」



「ああ! やっと完成したんだ! 少し待っていてくれ」



「「「ん?」」」




 すぐさま店の奥へと戻っていくベル先輩、一体何を頼んだのかはかざねが詳しく知っている。だが、ある程度であれば予想は出来た。それは考えずとも彼の服装ですぐに分かる。



 喫茶店で今も出されている料理は全て、ベル先輩により調理された品々だ。凝り性だとエリスから聞いたのだが、納得出来てしまう程の美味しさである。自ら食材を仕入れているらしく、日々の料理研究は欠かさないのだとか聞いたことがあった。



 かざねが頼んでいたのは新たな料理だろう。ベル先輩の事を知っているなら料理上手であることを知っていてもおかしくない。彼女の表情を綻ばせるところを見ると、そうとう楽しみだということが伝わってくる。



 それから数分もせずに戻って来たベル先輩の手元には、料理が載せられていると思われる皿があった。どんな料理を作ってきたのか気になった私達は身体を前のめりにして覗き込んだ。




「あっ………」




 皿の上に載せられていたのは、プロが作成した洋菓子に負けず劣らずの精巧なチョコケーキだった。しかもかざねが直々に頼んでいたので、すぐに私はこの後の展開を想像してしまった。




「思った以上の出来だな。どうだ? 食べてみないか?」



「えっ⁉︎ 良いんですか⁉︎」




 チョコケーキの出来栄えに満足したかざねは、今まで以上の笑顔でミュレット先輩に食べないか?と、問いかける。もちろんそれに対する彼女の反応は早かった。目が釘付けになっていた影響もあるが、先程の出来事で特別な雰囲気が漂っていたおかげもあり、味見してみないかと問われれば更に興味を持ってしまうのも仕方ない。



 かざねには悪い癖がある。自分ではなく他人に味見をさせて様子を伺うというタチの悪い癖、それによって詩音の味覚が分かった。ミュレット先輩も簡単に釣り上げられてしまっては、もう止めることは不可能に近いだろう。



 事情を知るのは私とベル先輩だけ、リエナ先輩と近場で聞き耳を立てていたエリスの表情は全くと言っていいほど変わっていなかった。それに加えて隣に居る詩音は使い物にならない。




「私が直々に食べさせてやろう。ほら、口を開けろ」




 ニヤニヤしながらスプーンでチョコケーキの端を削って、ミュレット先輩の口元へと持っていく。彼女の表情は見ているだけで分かる。内心では、ドキドキと鼓動を早くさせているのだろう。なにせ、ほんのりと頬を桃色に染めて嬉しそうだったから、考えていることが伝わってきてしまう。



 小さな口を限界まで開けて、かざねの手によって切り分けられ運ばれるチョコケーキの欠片を今か今かと待ち望んでいる。そのまま吸い込まれるようにして口内へと入った瞬間………




「ッ⁉︎ ゲホッ⁉︎ ゲホッ⁉︎ ………えっ?」




 咳き込み、驚愕の表情で訳も分からず困惑するミュレット先輩、そのチョコケーキのあまりの苦さに頭が混乱してしまったのだろう。ただ一人を除いて全員は苦笑い。




「面白いものも見れたし、次に行くか………」



「かざねさん⁉︎ 少しは心配して下さい⁉︎」




 淡白な表情でかざねは次に行くように促した。それに対し、ミュレット先輩は猛抗議で反撃に出るが意味がない。どこ吹く風とばかりに聞き流し、交流戦について話し始める。




「ある程度は知っていると思うが、本戦の方でお嬢は優勝する予定だ」



「なら大変だな、第二魔法学園にはアイツがいる。優勝するのは一筋縄ではいかないからな」




 優勝候補が居るとは大会らしい。"第二魔法学園"は海人国に位置する魔法学園、特徴としては魔法を使った戦闘を主に学ばせていた。第二とは違いこの学園都市にある第一魔法学園は、それぞれの分野に特化している為に戦闘をこなせない者も多い。



 かと言って弱い訳ではないが、戦闘が得意な者達と比べると優勝することは難しくなるだろう。




「そうよ。優勝候補筆頭である彼は、最低でも三桁の実力を持っていると言われているわ。それに今年は………」




 リエナ先輩とベル先輩は、お互いの顔を見合わせた後に興奮した様子で口を開いた。




「「あの! 正体不明の存在"双剋の魔王"様が交流戦に出るんだ(ですって)!!」」



 





 




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