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転生少女は愛されている  作者: 海雪
第3章 交流戦
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苦味



 現在、私達の目の前には美味しそうなケーキと淹れたてのコーヒーが置かれていた。パティシエの手によって創り上げられた、素人では真似できない位の精巧なケーキだ。



 雪の様に白いホイップクリーム、対比の素晴らしい真っ赤に熟れた苺、クリームの合間に見えるふわふわのスポンジ生地、見るからに美味しいと感じさせるショートケーキを私は選んだ。詩音は抹茶ケーキ、かざねはビターなチョコケーキ、葵はモンブランを、そして戒は何層にも重なったミルクレープを選んだ訳だが………




「ふふっ、どうだ? このチョコケーキは美味しいだろう? 」



「はい! 抹茶ケーキも美味しいですが、かざね先輩のチョコケーキも美味しいですね!」



「「「………」」」




 意気投合した詩音とかざねの二人に私達は目を逸らす。仲睦まじい雰囲気の二人から少し離れた私達は、顔を向き合わせてあることについて話し合う。




「玲夏ちゃん。もしかしてだけど………」



「かざねと一緒、玉子焼きを美味しそうに食べてたし………間違いない」



「マジかよ。あの子もだなんて思わなかったぞ?」



「………ん? どうしたんだ? まさか………お前たちも食べたいのか?」



「「「いえ、遠慮しておきます!」」」




 「食べたいのか?」という質問に対して私達は即座に否定する。どうやらかざねは会話の内容までは聞き取れなかったみたいで、その後は少しがっかりした表情で詩音との会話に戻った。



 今もなお、彼女の口へと運ばれていくチョコケーキには秘密がある。とあるパティシエによって作製されたかざねの為のチョコケーキ、オリジナルといえるそのケーキは苦味の濃い味付けにされていた。



 それもブラックコーヒーと同等以上の苦味を感じるように凝縮されたチョコケーキを、かざねから勧められて私は味見したことがある。もちろん葵や戒も勧められるまま口にした。その結果、凝縮されきった苦味とコクが一気に口の中へと広がったのだ。



 あまりの濃さに驚愕してしまい。ブラックコーヒーの苦味を軽く超えているのではないかと思ってしまった程だ。その時の私達はまだ子供で、味見した感想を聞いた大人達はさすがに冗談だと思ったのだろう。



『苦味のある食べ物はまだ子供には早かったんだな』



 などと言って温かい目で見てくる大人達に私は呆れてしまい。信じないのであればそれで良いと、何も言わずにそのまま成り行きを見守った。だが一口だけ、味見をした大人達の表情が見る見るうちに変わっていくのを私は見た。一瞬で笑顔が崩れ去り、微妙そうな表情で目を右往左往させてから、私達に対してこう言ったのだ。



『不味くはないかな。大人に成れば分かるよ』



 舌の感覚が麻痺してしまったのだろう。もう二度とかざねに勧められた食べ物は口にしないと、私たち三人は固く誓い合った。




「この苦味が堪りません! 最高です!」



「そうだろ? お嬢達にも味見してもらったんだが、三人全員が苦過ぎると言ってな、分かってくれないんだ。困ったものだな………」



「どう分かれと?」




 人の好みはそれぞれだが、かざねは思っていた以上に厄介な味覚をしている。苦味を好んでいる彼女は甘味や酸味等の味覚に対して鈍感ではない。むしろ敏感と言える程に味が分かるのだ。



 ブラックコーヒーや苦味のある料理を好むかざねに、私達は味の感想を求めたことがある。砂糖を控えめに入れたり塩は多めになどといった、ちょっとしたアドバイスによって、いつもより料理が美味しく感じた。



 そうとう味覚に敏感なのだろう。その後も味覚については麻痺してないことが分かり、間違って塩が入ったコーヒーを差し出してみたら………飲んだ時の反応は面白かった。




「まさか詩音もだとは思ってなかったよ。美味しそうに玉子焼きを頬張るから、てっきり………」



「これで味覚は正常なんだよな」



「あの時の苦味は思い出したくありませんわね」



「うん………そう言えば、かざね達は交流戦に参加するの?」



「交流戦に私達は参加しないぞ? だが、学園長たちの代わりとして私がついて行くことになった」



「えっ? かざねが?」




 交流戦に行けなくなった学園長と聖女の代わりとして、かざねが同行するみたいだ。彼女が居れば、万が一問題が起こったとしても大丈夫だろう。風紀委員会に所属し、委員長を務め上げる実力者であるのは知っているのだから。



 かざねの実力を知らずにいる者でも、風紀委員会とだけ聞けば、それだけで並大抵の存在ではないと理解出来るはずだ。




「なら大丈夫だね。かざねさえ居てくれれば、どんな相手にも対応できる」



「玲夏さん。かざね先輩の実力ってどれくらい何ですか? 疑う訳じゃないんですけど」



「そうだね………三桁の者達でも、かざねを倒すのは難しいかも知れない」



「三桁の人達を相手取れるって相当な実力者じゃないですか⁉︎」



「かざねの実力を知ってる者なら、闘いを避けるように立ち回るよ。私でも相手にしたくないから………」




 詩音は、最後に言った言葉が信じられないという驚愕の表情でかざねの方を見る。相当な実力者であることは間違いない。この部屋にいる葵や戒の実力も相当だが、かざねを止めるには二人かがりでも厳しいのだ。



 もしも学園長が、かざねを相手に闘いをするというなら普段とは違った戦法で勝負をするはず。それぐらいに彼女を相手取るには厳しい。



 更に、かざねが迷宮攻略に参加するというなら、編成を考えずとも問題ないのだ。彼女であれば前衛、後衛、問わずして戦闘に参加出来る。どんなに編成が偏っていようとも、ほぼ全ての役割を熟せてしまうからだ。



 



 

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