再会
「久しぶりだな! お嬢!」
「かざね………」
満面の笑みを浮かべた彼女はいきなり両手を広げて抱きしめてきた。離すまいとぎゅっと強く締め付けてくるがそれは一瞬で終わり、彼女が少し離れるのを見越した残りの二人も近付いてくる。
「久しぶりだな、当主。元気にしてたか?」
「本当に久しぶりですわね。玲ちゃん」
「二人とも、久しぶり」
久しぶりの再会に私達は喜びあう。だが事情を知らない詩音はどうしたら良いのか、目を丸くして立ち尽くしている。意識がある程度戻ってきた為か、彼女はようやく口を開くことが出来た。
「あの〜、玲夏さん。こちらは………」
「あっ、ごめん」
「ん? そういえば自己紹介がまだだったな? 竜胆かざねだ。それと私は風紀委員長を務めている」
「「えっ?」」
風紀委員長という言葉が出た瞬間、私と詩音は一瞬の間に視線を下ろす。制服の上からでも分かるほどに大きい双丘、これは滅多にお目にかかれるものではない。横からならまだしも、真正面でも相当にデカいと言わせるほどの大きさだ。
しかも彼女のスカートは短く、中が見えてしまいそうだった。健康的な美脚さえも持っている為、男子生徒からして見れば目の毒だろう。そんな彼女が風紀委員長を務めているとは素直に驚きだった。
彼女が廊下を歩けば自分自身で風紀を乱すようなものだろう。風紀委員会に入るならまだしも、委員長を務めあげるとまで思わなかった。
「おい、一体何処を見てる………」
「見てないけど?」
「私も見てません」
「………そうか、まぁいいだろう」
「じゃあ次は私達の番ですね。私は蓬莱葵、それでこっちが………」
「白沢戒だ。よろしく!」
「よ、よろしくお願いします。雨宮詩音です。それで玲夏さん、御三方との関係は………」
「ん? あぁ、お嬢と私達は親族同士、子供の頃からの付き合いだ」
かざねが言った通り私達の関係は親族同士、幼馴染みと言える間柄だ。三人が魔法学園に入学していると聞いたことがあったが、学園内は想像以上に広い。なので、近いうちに再会できると思っていた。まさか、こうして会えるとは思っていなかったが………
事情を聞いた詩音は驚きの表情で固まっている。いきなり親族同士だと言われてもしっくりとこないだろう。このまま再会を喜びあうのも良いが、この場所に呼んだ訳を聞く為にも一通の手紙を取り出す。
「それで、この手紙は何? まさか、むかし言ってたことを実践してくるとは」
「おぉ! 暗号の件を覚えていてくれたのか、当主!」
「当たり前だよ!! 暗号だと言われて一日中、ずっと暗記させられたのは忘れられないよ!」
いつだったかは忘れてしまったが、子供の頃に暗号を覚えさせられた記憶は今もはっきりと残っている。
見た目通りの狼の獣人だからか、彼はわんばくな性格で動かずにはいられない性質だった。それが災いしたせいで暗号を使ってやり取りをする行為が格好良く見えたらしく。独自の暗号を作ってしまう程だった。
とは言っても魔眼を持っている私からして見れば、特殊な魔法インクを使ってしたためた手紙を寄越される方がマシだった。当時、暗号の件については辟易していたので、自分自身が持つ魔眼の能力を提案したことがあったのだ。
「まずは座って話しをしよう」
「そうですわね。お茶菓子を用意しますので少々お待ちくださいませ」
座るように促され、近くにある椅子へと腰を落ち着ける。すぐさま葵はお茶を用意する為に魔道具を作動させていた。
「玲夏さん。蓬莱先輩って、もしかして………」
「気付いた?そうだよ、葵はセイラさんとは姪と叔母の関係なんだよ」
「えっ⁉︎ てっきり私は、親娘かと思いました」
親娘だと思っていたからか、姪と叔母の関係だと知ってそうとう詩音は驚いている。セイラさんと、姪である葵は親娘同士だと言われても納得してしまう程に似ているので無理もない。
「セイラさんのことを知っているなら大抵の反応だな。中には未だに親娘同士だと思っている者がいるからな」
「そうなんですね。あと一つ、当主とかお嬢って?」
「セイラさんのことについて知っているなら、学園長とお嬢の関係については?」
「玲夏さんの祖父ですよね? 教えてもらいました」
「ならば想像出来るだろ?」
かざねの一言で理解したのか、またもや詩音の表情は驚きで染まる。学園長が有名人であるのは誰もが知っていること、それに加えて由緒ある家柄だったと聞いた。その為、先祖代々の家柄を守るには次期当主が必要であるおかげで、私が任されることに………
だが、実際のところ学園長は私に対して次期当主を任命しても、家柄を守る必要はないと言ってきた。時が来れば全て話すと言ってはぐらかしたまま、家柄については秘密になっている。
「玲夏さんの家柄は相当凄いみたいですね」
「大したことじゃないよ。管理出来ないほどの土地を持っている訳じゃないし、名家として知られている訳じゃないから………それより本題に入ろう。わざわざ此処に呼んだ理由を聞かせて」
「ふむ、そうだな………まずは………」
本題に入るようにかざねに要求する。彼女は少しの間、考えごとに集中しているのか困った表情を浮かべた。呼んだ理由を整理しているのか、それともどのように説明するのが良いか分からないのだろう。
考えがまとまったのか表情を引き締め、真面目な印象を思わせる態度で彼女は口を開く。
「学園長と聖女が交流戦に行けなくなった」




