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転生少女は愛されている  作者: 海雪
第3章 交流戦
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消失



「冗談です。他人の召喚獣と交換なんてしませんよ………こいつは要らないけど」




 性格さえどうにかしてしまえば後は問題ないのだが、それを変えること自体が一番難しい。家事や料理は完璧で、欠点らしい点は一切見当たらないのだ。例え彼女が悪魔だとしても手放すには惜しい人材に思えるが、いちいち面倒な要求をして来るので頭を抱えることになる。



 チラリと視線を他の生徒に向けると、私の視線に気が付いた全員がそっぽを向く。幾ら美人な万能メイドだとしても、自身の大切な召喚獣と交換は嫌なんだろう。心なしか私と生徒の距離が先程よりも空いた気がする………きっと私の気のせいだ。




「………」



「玲夏さんの頼みでも無理です!」



「まだ何も言ってない………」




 詩音の召喚獣であるカーバンクルをジッと見ていたせいか、私の視界から外れるように彼女は隠した。まだ一言も言ってないのだが、それは仕方ない。とりあえず話題を変えることにする。



 近場に居たエリス、彼女が大事そうに抱えている子猫はどんな種類の魔物か気になった。一見しただけでは分からないので聞くことにする。




「エリスの召喚獣はどんな魔物?」



「やらねーぞ?」



「もうそれは良いから、エリスの召喚獣はルビーキャット?」



「いや、セイヴァートゥースの幼体だが?」



「「………………」」




 私と同様に詩音も、子猫の種族名を聞いて唖然としてしまった。確かにセイヴァートゥースの幼体らしく、その特徴として口から剣のような歯が覗いている。まさかエリスの召喚獣が王獣だったとは思わなかった。彼女の持つ魔力と戦力から考えて見れば不思議ではないと言える。



 愛玩系の魔物に分類されるルビーキャットと変わらない姿を持つセイヴァートゥースの幼体、瞳と歯以外はそっくりで見間違えた。とは言っても、セイヴァートゥースの幼体自体が珍しいので見間違えることはないはないんだが………



 詩音に続いてエリスも、とんでもない魔物を召喚して契約したと私は思う。それに委員長も大量の魔力を身体に宿しているので、規格外の魔物と召喚契約してそうだ。



 彼女は前日に休んでいたが、今日は何事もなく登校して来ている。もちろん委員長はこの授業に出席しているはずなのに、先程から彼女の姿が見当たらない。



 少しばかり辺りを見回してみると、友達らしき二人と一緒になって何かを探していた。




「ところで………委員長は何を探しているの?」



「さあ? 分かりませんが、召喚獣が遊んでいる最中に消えたのでは?」



「ハハッ、まさか………」




 召喚獣が消えたのならば、魔法を行使すれば良い話だ。召喚魔法はその為の魔法でもあるのだから、委員長がその効果を忘れるなんてあり得ない。きっと別のモノを探しているんだろうと思い直す。




「玲夏さん。思ったんですが、リヴィアさんが駄目なら別の召喚獣を呼び出せば良かったのでは?」



「私も最初はそう思った。けど、アトラは性格に問題があるし、ミューダはデカ過ぎて入りきれないし………」




 別の召喚獣を呼び出せば、こんなことにはならなかっただろう。だが、私が契約している召喚獣はリヴィアよりも問題があり過ぎて呼び出せない。



 アトラは性格に難があり人には懐かないのだ。ミューダも同様に懐くことはなく、姿を変えることが出来ても人の姿にはならない。そのせいで、この場に召喚しても収まりきらない大きさで呼び出される。二体の召喚獣よりも、リヴィアならば問題を起こすことはないと思いこの場に呼んだのが間違いだった。




「あれ? 玲夏さんはあと一体、召喚獣を所有していませんでした? リヴィアさんと契約する前は三体でしたよね?」



「問題がなかったらリヴィアを呼んでない」



「ですよねー」



「そう言えば、今日の放課後に交流戦の出場生徒が出るか分かるよな?」



「そうだね。職員会議の予定もないらしいから、問題なく行えるかもね」




 本日の放課後に、ようやく交流戦についての知らせが出る予定だ。去年よりも遅い為に上級生らしき生徒が数人ほど、交流戦は中止になるかもしれないと騒いでいるのを見た。



 確かに、交流戦に出場する生徒が居るなら早めに知らせた方が良いだろう。既に二週間あるかないかぐらいで準備も必要なはず。



 だが最近の事情を考えると、交流戦が中止になるかもしれないのは満更ではない。なにせ多くの生徒が休んでいる為に、出場する生徒を決めても出られないのでは学園側としても困る。



 学園で問題が起こり、中止にしなかったのはギリギリまで見定めた結果であると思う。エリー先生から交流戦についての話しが出た時、教室内に居た生徒は浮き足立っていた。よほど楽しみにしていただろうことが分かる。




「授業が終わったら見に行くか?」



「私は用事があるから無理、放課後は委員長と一緒に見に行って」



「そうか?………あっ!、委員長についてなんだが、交流戦には出場しないらしいぞ!」



「出場しない?」



「本人が言ってた。既に学園長達に伝えてあるみたいだ」



「そうなんだ………」




 委員長は交流戦には出ない予定、何かあるのかもしれないと思うが本人に出場する気がないなら追求しない方が良いだろう。



 それよりも先程から、思っているよりもリヴィアがおとなしい。確認して見ると何故か口を半分ほど開けて私の頭上を見ている。



 それに続く形で、詩音とエリスも何かに気が付くと同時に口を半開きにしていた。どんな状況なのかを知るには頭に手を伸ばすことだけ、恐る恐る私は自身の頭に手を伸ばす。




「………何………コレ?」




 硬い感触の何かを手に取り、目の前に持ってきて正体を確かめる。その正体は手の平サイズの小さな子亀だった。硬い感触がしたのは甲羅のせいであったが、どうして私の頭上に居たのかは分からない。



 手足をジタバタしてもいない子亀は首を伸ばし、私の事をジッと見てくる。どうすれば良いのか私が戸惑っていると、事態に気付いた委員長の友達が声を上げた。




「あっ! 滴、あの亀!」



「えっ? あっ! ………小鳥遊さん、見つけてくれたんですね!」



「………えっ、いや、見つけたと言うか、ずっと頭の上に居たみたいなんだけど………」



「困ってたんですよ。この子、ステルス能力があるみたいで、召喚してもすぐに消えるんです」




 委員長は私に対してそうとう謝っていたが、その数秒後には小亀は姿を消していた。やはり委員長の召喚獣はとんでもない能力を秘めていたのだ。私でも見つけられる事は出来なかったのだから。



 そして授業終わり、山下君はずっと私のことを見ていて戸惑っていた。何故だろうか………

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