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転生少女は愛されている  作者: 海雪
第3章 交流戦
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調合



 学園内にある庭園に聳え立つ建物、そこで魔草薬学の授業を私達は行なっているのだが今日は何故かいつもとは違う。それは、魔草薬学担当のサナーレ先生が授業中なのにも関わらず欠席している。



 とは言っても、先生は学園に居ない訳ではないのだ。一度教室へと入って来たサナーレ先生が「皆さん、ポーション作りの素材は用意してあります。自力で調合してみて下さい」などと言ってその場を去っていく後ろ姿を、私達は見ていることしか出来なかった。



 突然のことにほぼ全員は思考を放棄し、残りの者達もどうすれば良いのか戸惑っている。急に実習同然の授業になるのは仕方ないと言えるだろう。最近の先生達の忙しさが、普段よりも増しているのが手に取るように分かる。



 更に教室内をぐるりと見渡して見ると、何人か休んでいるみたいで空席が目立つのだ。今までよりも大変な状況になっている事が嫌でも分かる。特に休みなさそうな委員長が欠席しているので、皆んなが気になってそのことを話題に朝から話し合っていた。



 彼女が休みを取るのは珍しい。前日まで何事もなさそうだったのにも関わらず。とりあえず私は端末で連絡してみたが、本人は問題ないとの一点張りで詳しく聞き出せなかった。




「玲夏さん………大変な状況になりましたね」



「ん、そうだね。まさか委員長が休むなんて………」



「えっ? あ、いや、それもあるんですけど、私………ポーションなんて作ったことありません。どうしましょう………」



「あぁ、それか………」




 ポーションと呼ばれる薬品、大まかに分けられているだけでも数種類以上も存在している。魔力や体力の回復、特殊な毒消しなどがまとめて、ポーションと一括りにされていた。



 大抵の場合には、回復役となる後衛が身体を癒やす魔法を使い、減った魔力を補う為に数本だけ常備している。"毒消し(アンチドーテ)"などの魔法でも、自身にとってデメリットになる効果は打ち消せるのだが、それがもしも厄介な毒の際には治療する必要があるのだ。



 回復魔法は万能ではないし、魔力が尽きれば意味がない。事前に様々な情報などを知っておくことが最善となり、無駄な魔力を消費することを避けられる。



 毒を戦闘で使う魔物が出現する迷宮や地域では、必ずと言っていいほど攻略前に毒消しのポーションを買いに行く。一人(はぐ)れて魔物から毒を貰っても問題ないように、下準備は入念にしておくのが常識となっていた。



 かと言って、ポーションの売っている店に買い付けに行く者がいても、態々(わざわざ)自分自身で素材を集めて調合する人はいないだろう。素材を集めるには時間がかかるし、調合して失敗すれば目も当てられないからだ。



 飲んでも効果が現れないと非常に困る。せっかく調合したのに、何かの間違いで調合し終えて余ったポーション、処分するのも使うにも困ってしまうはず。



 そういうことなら、安心安全を保証してくれる企業が売るポーション、それならば買った方が良いと思うだろう。使用してみて効果が無ければ、返品や交換に対応してくれたはず。出来ることなら、最も信頼できる行き付けの店が良いのは言うまでもない。




「サナーレ先生はポーションを作れば良いって言ったっけ? なら惚れ薬でも調合しようか?」



「えっ⁉︎ 作れるんですか、玲夏さん⁉︎ 惚れ薬はともかくとして………」




 ポーションを調合出来ると聞いたのか、全員の視線が私に集まる。困っている表情から察していたが、薬の調合をしたことがないのだろう。素材や器具が必要になる上に、薬学の知識も無ければ手がつけられない。



 だからこそ、この場に居る生徒全員は困っていたのだ。いきなり先生からの試練が降り掛かってきたせいで、困惑してどうすれば良いのか分からない。素材は用意され、課題についてもポーションの調合だと分かっても、その手の知識がないから行動を起こせず固まっていたのだ。



 クラスの中から真っ先に立ち上がった生徒が「小鳥遊さん、調合の仕方を教えて欲しいんだけど………」と、申し訳なさそうに言ってきた。




「ちょっと待って、えっと、確か………このページなら………」




 とりあえず教室内にある本棚から、一冊の本を取り出してページを捲っていく。一番簡単な調合であれば、教本の通りに行うだけで効果が発動するはずだ。



 もちろん変な物を調合中に混ぜなければ話しになるが、レシピ通りに調合すれば問題は起こらない。科学の実験の様に難しい調合さえしなければ、大爆発とかにはならないだろう。




「分からない人は、この通りに調合すれば良いよ。一番簡単なポーションだから………」



「ありがとうございます! 小鳥遊さん!」




 ページを開いたまま、教卓の上に本を置いた。私にお礼を述べた生徒は確認した後、自身の席へと戻っていく。何人かの生徒が私のところに来て、先程の生徒と同様にお礼を述べて言った。



 落ち着いたようなので、私も調合に入る為に素材を確認していく。どの素材もすぐに使えるくらいに状態が良い。しっかりと洗浄してあるみたいで、土や埃は取り除かれて作製後の問題は出なさそうだった。




「小鳥遊、あたしも教えて欲しいんだが………」



「私もお願いします!」



「良いよ。私も簡単なポーションを作る予定だったし」




 詩音とエリスの二人と共にポーションを調合することになった。どの薬品も調合の際には時間がかかり過ぎて暇になるのだ。その結果、集中を切らして失敗する事もしばしばある。



 一人で行う者も居れば、複数人で集まり調合を始める者達もいた。集中したいならば一人で、複数人ならば間違いを指摘しあえるのでどっちが良いとは言い切れない。



 本来であれば素材を刻む前に洗い、汚れを落とすのだが、既に綺麗になっているので切り刻んでいく。すり鉢で擦り潰して、鍋で煮込む作業へと移る。




「なぁ、小鳥遊………煮込んでいくなら、すり鉢で擦り潰さなくても良いんじゃ………」



「それだと時間がかかるからね。素材を擦り潰した方が調合の時間を短縮出来るからそっちの方が良いんだよ。ちなみに鍋で煮込んでいるのは、素材にある魔力を抽出して凝縮させる。そうすることで効果を発揮させるんだよ」



「玲夏さんは物知りですよね。いなかったらポーションは作れませんでしたよ」



「まさか、先生は調合出来ても出来なくても良かったんじゃない? これは実習だから………」




 サナーレ先生は、調合出来る人が居なくても良かったんじゃないかと思ってそうだ。調合のレシピや素材等を用意しても、失敗する可能性がある。



 大人しく読書をしていても、サナーレ先生は怒らないだろう。優しい性格だからという訳ではなく。課題となったポーションを調合してみて下さいと言ったが、調合した物を必ず提出しろとは言ってないのだから。



 


 










 



 

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