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転生少女は愛されている  作者: 海雪
第3章 交流戦
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昼食



 "兎人族"は獣人達の中で、特殊な立ち位置にいる種族とされている。獣人は魔法に頼らないことが前提であり、自分達の暮らしには魔導具が頻繁に使われていた。



 魔力も少ないので、魔法を学ぼうとは普通は考えない。何せ魔法に頼らずとも肉体の強さは想像を超えているからだ。実際に彼女、ミュレット先輩も見た目とは裏腹に、とんでもない戦闘能力を有していたとしても不思議じゃない。



 特に"兎人族"は最強とも言える種族だ。それもかなりの戦闘集団であり、彼らの噂はある程度耳にしたことがあった。数人の獣人に囲まれていたとしても、ものの数分とかからずに全員を地に伏せたと聞いたことがある。



 長所は強靭な足腰、蹴りによる一撃はどんな強敵でも相手にはならないほど強力だと聞く。自分達の数倍もの巨躯を誇る魔物であっても、当たりどころが悪ければ昏睡させてしまう程の威力らしい。



 魔法なしでの跳躍も相当あるらしく、どんなに相手と距離を離されていても一瞬で距離を詰めることが出来る。その為、純粋な魔法師であれば勝ち目がない種族と言えるだろう。



 だが正反対に単純な筋力では、兎人族は他の種族に勝てない。獣人を含めて、戦闘が苦手な鉱人族(ドワーフ)や筋力が低いとされる森人族(エルフ)でさえ、兎人族は簡単に負けてしまう。



 それもそのはず………兎人族や蛇人族(ラミア)は男女の比率が変わっていて女性が多い。つまり部族内だけであれば、既にハーレム状態になっているのだ。人によっては女性だと聞いただけで、舐めて返り討ちにあうこともしばしばあるらしい。




「みーちゃんの母が序列第九位なんですよ」



「驚きましたよ。まさか序列上位の人の親族に会えるとは、思いもよりませんでした」




 正直に言って私も驚いている。ミュレット先輩の尊敬する人物が母であるのは素直に驚きだった。確かに、序列第九位であれば親族であっても尊敬してしまう程だろう。



 数々の伝説を残した彼女は、魔王種を相手に生き残るだけでなく討伐までも成し遂げた偉人だ。軍に所属していて、何度も仲間を救ったことがあるらしく。今では総帥にまで登り詰めた女軍人と聞いている。



 世の女性からも尊敬を集める人物で、ミュレット先輩がカッコイイと思ってしまうのも分かる。美人でスタイルの良い女性、更には圧倒的なカリスマ性を併せ持っているものだから。あの人の様になりたいと思う女性は数多い。




「そろそろ昼食にしませんか? 話しをするのも良いのですが、小鳥遊さんと雨宮さんは食事をしていませんよね? この後の授業に響かせるのは悪いですし……」



「そうでした。お二人はどうしますか? 食堂に移動しますか?」



「いえ、私は弁当なので………」



「私も同じです」




 昼食の時間帯なので、とりあえず弁当を持ってきている。もちろん私のは手作りではない。リヴィアによって調理された、自慢のオカズが詰められた重箱を私はいつもの様に取り出す。




「「………」」




 いきなり三段重ねの弁当らしからぬ重箱が出て来た為か、私の事情を知らない二人は驚きで口を半開きにして固まっている。詩音に関しては既に周知の事実で、驚いてはいなかった。重箱を広げていると、ようやく平静を取り戻したミュレット先輩は言った。




「お、美味しそうですね。ご自分で作られたんですか?」



「いえ、うちのメイド、リヴィアが作ったんです。最初の頃は食堂で昼食をとっていたんですよ。手間が掛かりませんから………」



「ミュレット先輩のお弁当も美味しそうです。もしかして………」




 少食のせいか、ミュレット先輩のお弁当は可愛いらしい小さなピンク色の容器だった。気になる弁当の中身は定番の唐揚げや玉子焼きが詰まっている。他にも、海苔で巻かれたおにぎり、タコさんウインナー、ウサギの形に剥かれたリンゴもあり、これを毎日作るとなるとそうとう大変だろうことが分かる。



 中身を覗いた詩音も美味しそうと言った後、誰が作ったのかを聞いた。予想では母親が作ったと思うだろうが、ミュレット先輩の場合は違う様だ。




「このお弁当は私が作ったんです。母さんは知っての通り忙しい人ですから………それに私は寮住まいなんです。度々何度か小鳥遊さんを見かけて、一度お話ししたいと思っていたんです」



「大変ですね。ところでシア先輩、昼食は?………」



「あっ、私はこれです………」




 戸惑いつつも、シア先輩が机の上に出したのは昼食が入ったらしきビニール袋、少し恥ずかしそうにしていたのも原因はそれらしい。今回、私とミュレット先輩も含めて詩音も同様に弁当だ。この中で一人だけというのもそれに拍車をかけているだろう。



 とりあえず私は自身の弁当、重箱の一つに視線を落とす。中には、リヴィアの自慢である玉子焼きが幾つも入っている。数人に一つずつ配っても大丈夫な数が詰められていた。




「詩音、玉子焼き食べる?」



「ありがとうございます。いつものように筑前煮ですか?」




 恒例行事とかした、おかずの物々交換を私達は行う。私からは玉子焼きを、詩音からは筑前煮を貰った。それを見ていたミュレット先輩も、交換して欲しいと言ってきて唐揚げを渡される。玉子焼きを受け取った二人は早速とばかりに頬張った。




「美味しいです! リヴィアさんの玉子焼きはしっかりと出汁の味が効いているんですよ。本当に料理上手ですよね」



「ッ⁉︎ ………確かにコレは美味しいですね。少しばかり秘訣を教えてもらいたいです」




 詩音は前にも一度口にしたことがあるので予想通りの反応をする。ミュレット先輩もどうやら気に入ったみたいだ。リヴィアの日頃の態度はアレだが、私も認める料理上手である。なんでもそつなくこなす完璧主義と言える彼女、特に玉子焼きは絶品で詩音の好物になった程だった。



 私が貰った筑前煮も美味しい。素材の良さを引き立たせてあるのか、一緒くたにされて調理されているより、別々に作られている感じを受ける。人参は甘く、鶏肉は柔らかい、さらに里芋は中まで味が染み込んでいるのだ。



 これほどに美味しい筑前煮は今まで食べたことがなかった。お気に入りとなったおかずを昼食になる度に交換している。



 それより先程から喋らずに、黙って食事をしている人物が居た。一人だけ蚊帳の外にいるシア先輩は、寂しい雰囲気を漂わせちびちびと菓子パンに齧り付いている。




「………シア先輩、食べます?」



「えっ?」




 重箱の蓋の上に、様々なおかずを置いてシア先輩に差し出す。差し出された本人は躊躇いながらも受け取った。全員が見守る中、恐る恐る箸を手に取り玉子焼きを口元に運ぶ。




「んっ⁉︎ 美味しいです!」



「それは良かったです。リヴィアも喜びますよ」





 






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