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転生少女は愛されている  作者: 海雪
第3章 交流戦
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回収



 とある者達の眼前には、紅に染まる草原が広がっていた。男性二人に女性一人の組み合わせで、その内の二人は必死に何かを探している。



 此処は"禍時の小径"先程まで粉々になったスケルトンで埋め尽くされていたというのに、今はその面影もない。何故ならば、迷宮によって邪魔と判断された何らかの残骸等は、吸収されて魔力へと還元されるからだ。だからこそ、何処を見渡しても異物となる物は見つけられなかった。



 三人居る内の一人、肌に吸い付く様なピッタリとした黒スーツに身を包んだ、暗殺者らしき女性は溜め息を吐く。




「はぁー、変遷のせいで見つけられなかったわ。一体どうすれば良いのよ、代わりとなる物は無いし……」



「同上、まさかドラゴンゾンビが破壊されるなんて夢にも思わなかったぞ。アレは珍しい素材で作り上げた物、そう簡単に直せまい」




 女性の言葉に頷き頭を抱える男性、彼も同様に暗殺者らしい服装をしており、忍者をイメージしているのか、口元を隠し背中には二本の刀を差していた。二人は変遷が起こった後も必死になって、とある物を探しているがやはり見つからない。




「もしも壊れたと知ったら………」



「それ以上はダメだ! あの人が作製にどれだけ時間を掛けたのか分かっているのか⁉︎ ただのプラモデルじゃないんだぞ!」



「大事にしているプラモデルが壊れたら、反応は一緒でしょ?」



「………否定はしない」




 図星の為か顔を逸らして、意味もないのに見えない表情を隠す様にしている。その人が大事にしている物を壊されたら、先ずは怒ることが普通だろう。価値は人それぞれだが、壊された時の気持ちは共通なのだと彼の反応で分かる。



 その後も捜索を続けていくが中々進まない。彼女は残るもう一人、ピエロの仮面を着けたジョーカーと名乗る男に声を掛けようとしたところ、手元で何かを弄っているのが見えた。気になった彼女は背後から、恐る恐る近付き確認する。



 どうやら、彼は端末にメールを打ち込んでいるようだ。その内容を覗き見た彼女は表情を強張らせた。




『可愛い友達を紹介してくれて

 ありがとうお☆

 骨抜きにされちゃったよ

 

 P.S 近いうちに逢いに行きます』




 ガスッ!ガスッ!ガスッ!



「このやろー! こんな大変な時にキャバ嬢にメールなんか送りやがって!」



「同上、蹴られて反省すると良い! キャバクラ通いめ!」




 彼女は背後から、思いっきり蹴りをかまし転ばせる。仮面の男、ジョーカーを罵倒しながら二人で蹴り出した。日頃の鬱憤が溜まってしまっていたのか、休むこともなく痛めつけていく。



 数分の間蹴り続けていくが反応がない。既に気絶してしまった為に反応がないと思うが、それは違うとすぐに分かった。




「お二人共、そろそろ足蹴にするのをやめてくれると助かります」



「「ッ⁉︎」」




 突如背後から聞こえてきた声に驚き、瞬時に振り向く二人、そこに居たのは先程まで蹴られて罵倒されていた仮面の男、ジョーカーが何事もなく平然と立っていた。すぐに二人は視線を戻して自分達が蹴っていた存在を確認するが、その場所には誰も居ない。



 脳裏に疑問を浮かべ、どうやって自分達の背後に気付かれずに魔法を使い移動したのかを考えてみる二人、だがそれよりも気になったのは彼の状態………




「酷い目に遭いましたよ。いきなり背後から襲うのはやめてください。ところで………お二人共、どうかしましたか?」



「………何も無いわよ」



「同上、何も無い」




 とりあえず何も無いと誤魔化す。驚きこそあったがジョーカーは、二人が気付くことがないように魔法を発動させた。それは考えて見ればすぐに分かる。気になったのは彼の服装、清潔感溢れるビシッとしたビジネススーツが、いまはボロボロになっていた。明らかに攻撃を受けていたのは明白だったが、ジョーカーは何事も意に介さないような佇まいをしている。



 もしも無傷であれば、更なる罵倒を浴びせているところだ。追加で顔面に一撃をお見舞いして、二人の鬱憤を晴らす場面になっていただろう。しっかりと蹴られていた証拠がある為、二人はやる気を削がれてしまったみたいだ。




「それより、あなたはどうして『あの娘に手出しをするな』って言うのよ。あの時なら、確実に亡き者に出来ていたのに」



「同上、魔法を使い疲弊していたのだ。これで二つの仕事に失敗してしまった。チャンスを逃したのだぞ」



「えぇ、そこはちゃんと理解していますよ。ドラゴンゾンビの稼働実験に加えて、あの方による命令で"白髪の少女"彼女を抹殺することは………」



「ならば! どうしてあの時に止めたのだ!」



「幾つか疑問が………というより、手出しをしない方が良い理由があります」



「「理由?」」




 二人はお互いに顔を見合わせて、真剣な表情でジョーカーを見る。もしもくだらない理由だったらと思ったのか、自身の武器にそっと手を添えた。いつでも彼を抹殺できるように………




「貴方達が先程、彼女に向けて殺気を飛ばしていたでしょう? もし、気付いていたとしたら魔力を残しているのでは?」



「確かにね、けど何の反応もなかったわ。ちょっと拍子抜けでガッカリよ」



「同上、警戒するまでもない。上級らしき魔法を使い、魔力はだいぶ減っているはず」



「えぇ、そうですね。ですが私が気になったあのメイド、彼女の正体について分かりません」



「確かにそうね、あのメイドが生やしていた翼は何? 悪魔じゃないわよね………」




 ドラゴンゾンビと戦闘を行なっていた者達の中にいたメイド、彼女の正体が分からない。急に翼を広げて、空へと猛スピードで飛んでいくのを見て奇襲することを彼らはやめたのだ。正体不明の存在、ドラゴンゾンビの討伐、野を焦土へと変えた未知の武器、等の予想外の出来事に計画を大幅に変更せざるを得なかった。



 彼らが知る種族には、蝙蝠の翼を持っている種族は居ない。考えた末に出した結論は、悪魔ではないか?という答え、だが此処にいる三人は納得しなかった。




「あり得ないわね。悪魔を召喚するには魔典(グリモア)が必要不可欠、存在している魔典はほぼ全て魔法省が管理しているわよ」



「同上、もしそうだったとしたら魔法省から盗むか、新たに見つけるしか方法はない」



「そうね、考えても分からないなら忘れましょう。それより………早く見つけて帰るわよ」




 女性が放ったその言葉に疑問を浮かべて首を傾げるジョーカー、彼を残して二人は目当ての物を探し始める。その二人を黙って見ていたジョーカーは腕を組んで考えていた。一体何を探しているのだろうと思い、懐から何気なくある物を彼は取り出す。



 探し物はこれかと尋ねようとしたら………




「「お前が持ってんじゃねーか!!」」



「グホッ⁉︎」




 その後ジョーカーは二人から文句を言われ蹴られて、今後何かあったら早く言えと、制裁を食らい痛めつけられた。




 



 







 

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